黒澤明「天国と地獄」(1963) | It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

It’s not about the ski 遅れて来た天才スキーヤー???、時々駄洒落(笑)、毎日ビール!(爆)

スキー大好き、ゴルフ、読書、映画、演劇、音楽、絵画、旅行と他の遊びも大好き、元々仕事程々だったが、もっとスキーが真剣にやりたくて、会社辞めちまった爺の大冒険?


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ナショナル・シューズの権藤(三船敏郎)は、工員から叩き上げで重役までのしあがった男であり、京浜工業地帯を見下ろす高台に豪邸を構えている。

本来は職人気質であり、良い靴を作ることだけが生き甲斐の権藤だが、重役ともなると、否応なしにそれだけでは済まされない。

重役間の権力闘争に巻き込まれ、現状の持ち分に加えて、一気に株を買い増して、4割以上の株を持って経営の主導権を握る勝負に出た。

秘書の河西(三橋達也)に5千万円の小切手を渡し、すぐに大阪に飛べと命じた矢先に、不審な電話。何と権藤の息子(江木俊夫)を誘拐したので、3千万円出せ、さもなくば息子を殺すという脅迫電話だった!

しかし、犯人は間違って、権藤の息子ではなく、権藤の運転手 青木(佐田豊)の息子の純(島津雅彦)を誘拐していたのだ。

犯人はそれでも、権藤に、純の命と引き替えに3千万円を要求。自分の会社での地位と、運転手の息子の命の間で揺れ動く権藤だったが、青木の懇願や妻(香川京子)の説得もあり、地位を捨て、純の命を助ける為に3千万円を出す決意をする。

警察にも協力を依頼。いかにも敏腕で切れ者の警部 戸倉(仲代達矢)をはじめとする特別チームが権藤邸に張り付く。



黒澤明監督全盛期の犯罪映画の傑作を何十年ぶりかで再見した。

誘拐、犯人からの電話、警察の導入というサスペンスフルで畳み掛ける様な展開が、権藤邸という一種の密室で繰り広げられる前半から、犯人の身代金受け渡しの為に、特急こだまに乗れという指示により、映画の舞台は一気に、外の高速で疾走する列車となり、映画は俄然動き出す。

舞台劇の様な前半から、外的・動的な映画の後半のコントラストが映画に見事な緊張感と躍動感をもたらしている。

犯人の電話での新たなる指示により、走行中の特急こだま号から鞄に入れた現金を放り投げるまでの展開は手に汗握ること必至であり、映画史に残る名シーンと言われるのも頷ける。

終盤では、麻薬患者が登場し麻薬街も舞台となったり、さながらフィルム・ノワールという感じで、白黒の映像が異様な迫力を持って眼前に迫って来る。

権藤も、武骨で直情的ながら本当は人情家で魅力ある人間に描かれているが、一方で憎むべき犯人も、何故か不思議と魅力的で、まがまがしく暗いオーラを放っている。

犯人の絶叫で、最後映画が終るのも、誘拐という卑劣な犯罪を許さないと監督の意図なのだろうが、その意図を超えて、さながら知的で冷血な仮面の裏に隠れた犯人の人間像の様なものがかいま見え、強く印象に残る。



製作:田中友幸、菊島隆三
監督:黒澤明
脚本:小國英雄、菊島隆三、小坂榮二郎、黒澤明
撮影:中井朝一、斎藤孝雄
美術:村木与四郎
音楽:佐藤勝
助監督:森谷司郎
原作:エド・マクベイン「キングの身代金」より
キャスト:
権藤(ナショナル・シューズの製造担当重役):三船敏郎
戸倉警部:仲代達矢
河西(権藤の秘書):三橋達也
青木(権藤の運転手):佐田豊
権藤の妻:香川京子
田口部長刑事:石山健二郎
荒井刑事:木村功
中尾刑事:加藤武
ナショナル・シューズ宣伝担当重役 神谷:田崎潤
同デザイン担当重役 石丸:中村伸郎
同営業担当重役:伊藤雄之助
竹内銀次郎(インターン):山崎努
権藤の息子 純:江木俊夫
青木の息子 進一:島津雅彦
捜査本部長:志村喬
捜査第一課課長:藤田進
村田刑事:土屋嘉男
山本刑事:名古屋章
新聞記者:千秋実、北村和夫、大滝秀治
債権者:山茶花究、浜村純、西村晃
ナショナル・シューズの工員:東野栄治郎
病院の焼却炉係:藤原釜足
麻薬患者:菅井きん
麻薬街の男:常田富士男

上映時間:2時間23分
キネマ旬報ベスト10 (1963年):日本映画第2位
日本公開:1963年3月1日
鑑賞日:2016年6月3日
場所:池袋新文芸座