安眠妨害水族館的 2020年下半期CD大賞 | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

2020年は、なんていうか、様々なものが激変しましたよね。

だってまさか、"有観客ライブ"なんて言葉が生まれるとは思うはずないじゃないですか。

ライブと言ったらお客さんがいて当然、それがいつの間にか当然ではなくなっているなんて、想像できるはずがない。

振り返ってみると、自粛期間も相まって、改めて音楽との向き合い方について考える時間が増えた1年だったなと。

 
さて、下半期も安眠妨害水族館的CD大賞を発表していくわけですが、レギュレーションは以下のとおり。

① 2020年7月~12月に発売された作品であること
② 誰でも購入できた作品であること(通販限定、配信限定は対象。会場限定や条件付で購入権が手に入るような作品は対象外)
③ V系シーンをメインフィールドとして活動しているアーティストの作品であること

 

これ、2021年は現状に即して運用を考え直さないといけないかな。

会場限定盤が、後から通販でも購入できるようになる、みたいなケースも増えてきたし、クラウドファンディングのリターンなど、判断が難しい作品も出てきている。

上半期と平仄を揃えるために、一応はこれを採用するけれど、運用については、ある程度柔軟にしようと思います。

 

 

 

第10位

 

愛「 」/ザアザア

 

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"愛"をテーマにした、ザアザアのコンセプトミニアルバム。

近年の音楽フェス至上主義的なムーブメントによって、"いかにライブで盛り上がれるか"を主題にした楽曲作りがバンドの生命線になっていたわけですが、彼らはキャリアを重ねていくにつれて、純粋な"曲の良さ"を求める方向に舵を切ってきた感がありました。

結果として、それが新しい生活様式にフィットした形。

本来であれば時代と逆行するはずだった歌モノ志向が、コロナ禍においては武器となる。

信念を貫き続けていれば報われることもあるのだな、と感慨深くなったものです。

 

 

 

 

第9位

 

ハキュナマタタ/-真天地開闢集団-ジグザグ

 

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飛ぶ鳥落とす勢いの-真天地開闢集団-ジグザグのミニアルバム。

少しおふざけ感のあるタイトルとは裏腹、シリアスな楽曲が増えた印象もあるのだが、しっかりとメリハリをつけて遊ぶところは遊んでいるところが彼ららしい。

規模が大きくなったことで、バンギャ受けのネタは難しくなったのかもしれないけれど、むしろ、そこから転じてここまで格好良いバンドとして仕上げてくるのもズルいというか、なんというか、ポテンシャルが高いのですよね。

相応にバランスを考慮しなくてはいけないフルアルバムより、やりたいことを120%の熱量でパッケージするミニアルバムのほうが、ジグザグのスタンスにはハマっていたのかな。

 

 

 

 

第8位

 

ABRACADABRA/BUCK-TICK

 

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BUCK-TICKにとって22枚目のフルアルバム。

アナログ盤にカセットテープ、ハイレゾ配信に至るまで様々な形態でのリリースとなり、ファンの年齢層の幅広さを感じずにはいられません。

現代の病理に深く切り込みつつ、コロナ後の世界を意識して制作された「ユリイカ」で繰り広げられているのは、壮大な生命賛歌。

夢想的な現実逃避を掲げるバンドは数多くあれ、人間として歴史を刻んだ彼らが歌う、生きるために"逃げてもいい"というメッセージこそ、非現実どころか、はっきりと実態を持った現実であると言えるのだろう。

相対的な好みとしては、前作、前々作の重厚な世界観に軍配が上がるが、2020年を代表する1枚であることに異論はないはず。

 

 

 

 

第7位

 

ヒトリランド/ハイダンシークドロシー

 

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ライブが満足に開催できない世の中、2020年は新バンド結成の報が極めて少なかったのだが、彼らはそんな2020年デビュー組。

結成直後の勢いのまま、フルアルバムまでリリースしてしまいました。

実験台モルモットのヴォーカリストとして圧倒的な歌唱力を見せていた谷琢磨が、V系シーンに本格参戦。

演奏陣も、ex-犬神サアカス團のGt.情次2号、Ba.ジン、ex-KraのDr.靖乃と実力派を揃えており、演奏難易度の高い楽曲ばかりがパッケージされているにも関わらず、さらりと聴かせてしまうのがニクいですよね。

既に新人バンドと称しては失礼なほどの完成度。

必ずしも聴きやすい音楽性ではないのかもしれませんが、ダークメルヘンの不思議な世界に迷い込むにはおススメの1枚です。

 

 

 

 

第6位

 

ケレン気関車 弐/LIPHLICH

 

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「ケレン気関車」から続く一連の展開は、久しぶりにLIPHLICHの真骨頂を見たと言ったところ。

ライブに頼らなくても、シアトリカルにコンセプトを表現できるバンドは、現在のシーンでは彼らぐらいではなかろうか。

"次はどんな展開が待ち受けているのだろう"という連載モノの冒険小説のようなワクワク感に包まれており、楽曲を耳にする前からその世界観に入り込んでしまうのですよ。

もちろん、楽曲のクオリティが高いのは言うまでもなく、確立されたLIPHLICH節を存分に発揮しつつ、わざと道を外れたり、再び王道に戻ったり、のバランスが絶妙。

外伝となるミニアルバムの発売が遅れに遅れているのは気がかりですが、早く続きを楽しませてほしいものです。

 

 

 

 

第5位

 

The laughing man/アルルカン

 

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実に4年ぶりのフルレンスとなった、アルルカンの3rdアルバム。

彼らも例に漏れずライブが出来なくなったことによるフラストレーションが溜まっていたのでしょう。

ただし、ある程度は外に向ける必要があった熱量を、改めて作品作りに集中させたことが奏功。

シアトリカルな演出と生々しいドキュメンタリー性が交錯する、実にアルルカンらしい作品が生み出されました。

表向きは経験を積んで、洗練されたスマートさがある一方で、内から沸々と込み上げる感情が隠し切れずに零れだすさまは、共鳴として胸を打つ。

素直にアルバムとしての完成度が高い作品であったかと。

 

 

 

 

第4位

 

Mist forest with time stopped/emonchhichi

 

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ex-rouge~et~noirのGt.一真によるソロワークス。

現役当時に未音源化のままでいた楽曲を再構築したとのことで、古き良きの空気を漂わせているのですが、同時に、新曲「Stargazer」が過去と現在を繋いでいて、2020年に放つ意義も感じさせるのです。

とにかく、曲が良い、メロディが良い、現役時代のバージョンも聴いてみたい。

また、V系シーンの外で活動しているわたぬきのVo&Gt.岡崎氏をサポートに迎えているのもポイント。

彼が演奏のみならず、編曲にもがっつり参加していることにより、歌い癖にしても、アレンジ上のギミックにしても、視野を広く保てたことが、オルタナロックとのクロスオーバーがひとつのメインストリームとなっている現代シーンで通用するサウンドに昇華できた要因のひとつなのでしょう。

 

 

 

 

第3位

 

 配信収益音源化計画-第一章-/nurié

 

 

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合わせ技一本で第3位とさせていただいたのは、nuriéの配信収益音源化計画シリーズ。

これがCDでリリースされていたら、1枚ずつ、4作品としてカウントするべきなのだろうけれど、デジタルリリースという形態であれば、パッケージ作品を4回に分けて発表するなんてことも可能になるのだな、という気付きがあったのですよね。

実際、1曲1曲の熱量が高く、4曲のうちからひとつを選べとか、順位をつけろというのも難しい。

トップ10のうち、いくつかをnuriéで埋めてしまうのであれば、まとめたほうがたくさんの音源を紹介できるという意図もあり、ご理解いただきたいところ。

暑苦しいぐらいの等身大のメッセージ、畳みかけるように押し寄せるメロディ、スタイリッシュなギターロックサウンド。

それぞれアプローチは変えつつも、いよいよnuriéのスタイルを確立したと言える作品群でした。

 

 

 

 

第2位

 

[METEMPSYCHOSIS.] /DEXCORE

 

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メンバーチェンジを経て発表されたDEXCOREの1stフルアルバム。

デスコア、メタルコアをベースとした激ロックシーンの主流をなぞりつつ、大きくバラエティ性を広げるアプローチにもチャレンジ。

良い意味で、本格派志向のラウドバンドというイメージを覆してくれましたね。

ベストアルバム的な要素もある大ボリュームのアルバムを、ダレることなくあっという間に聴かせ切る衝動性。

抑圧されてフラストレーションが溜まっている昨今の状況下、"動"のベクトルでの活力を与えてくれる貴重な作品です。

内容がそれぞれ異なる4種類の販売形態も、ニーズに合わせて選択肢を増やしているようで、時代に即していたと言えるのかも。

 

 

 

 

第1位

 

ブルーフィルム -Revival-/cali≠gari

 

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Vo.石井秀仁の加入とともに、「ブルーフィルム」がリリースされたのは2000年のこと。

人間であれば成人式を迎える2020年、現在のcali≠gariが完全にリメイクしたのが、この「ブルーフィルム -Revival-」でした。

オリジナルへの思い入れも深かっただけに、リメイク盤には違和感があって然り。

そんな風に考えていたのですが、完全に杞憂でした。

当時の想いを汲み取りつつ、足りなかった部分を適切に補完して、正統進化を遂げている。

リメイク盤を1位にするのは邪道だと言われようが、これ以外には考えられないのですよね。

新曲やカヴァー曲も収録され、フルアルバムサイズに増強されたのも嬉しい限りで、当時からのファンならずとも必聴の作品。

 

 

 

トップ10だけを見ると、常連的な顔ぶれの中に、いくつか新顔も食い込んできていて、バランスの良いラインナップになった気はします。

ただし、昨年までと比べて、どれを選ぶか悩まなかったというか、悩む余地がなかったというか。

これは、ヴィジュアル系のレベルが下がったということではなく、そもそもリリースされたCDが異常に少なかったのですよね。

コロナの影響で、ある程度規模の大きいバンドは制作に集中できた一方で、資金力のない若手バンドは、デジタルシングルの単発リリースというのが方法論になりつつあり、なんとも競技が変わってしまった感が。

これは、もう別枠で楽曲単位の評価体系を構築したほうが良いかもしれないな、なんて。

 

デジタルシングルについては、団長×広末慧の「ヨル」や、H∧Lのソロワークス「春青 -shunsei-」および「 赩 -kaku- 」が良かったな。

H∧Lさんについては、姫宮梨太郎名義で「日暮れ/夜明け」も発表していて、活動の幅が広がった感がありますね。

 

次点としては、lynch.のVo.葉月によるソロアルバム、「葬艶-FUNERAL-」と、 GOTCHAROCKAの「POLYCHROME」を推したい。

前者は、カヴァー曲だけでなくオリジナルも入れてきたところに、サイドプロジェクトで終わらせないという意気込みを感じたし、 後者も、流行に流されることなく、過去の栄光に縋ることもなく、正統派のポップロックを貫く姿勢に感銘を受けた。

こういうご時世だからか、本気で音楽をやっているのが伝わると、ついつい応援したくなってしまうのだよな。

伸びしろがありそうなのは、 IOLITE -アイオライト- の「Dear Stars.」と、 病葉~わくらば~の「疫病は冷たく嘲笑う」でしょうか。

どちらも流行の中心にいるタイプの音楽性ではないのかもしれませんが、だからこそ夢を見たくなる何かを持っている。

2021年での更なる飛躍に期待しています。

 

最後に、下半期を騒がせた作品として忘れてはいけないのは、「鹿鳴館伝説(DISC1234)」。

根強い90年代ヴィジュアル系へのニーズを発掘。

こういった企画から温故知新的にレジェンドと若手との融合が進めば、シーンが再び活性化するなんてことも夢ではないのかもしれません。