ケレン気関車 弐 / LIPHLICH | 安眠妨害水族館

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ケレン気関車 弐/LIPHLICH

 

1. STRAY STAR

2. 傀儡モーション

3. マジシャンエイボン

4. サタンの戦慄

 

 

堰を切ったように、リリース攻勢を強めているLIPHLICH。

本作は、配信限定でリリースされた「ケレン気関車」シリーズの続編です。

 

Ba.竹田和彦さん加入後、初のリリースとなったデジタルシングル「ケレン気関車」。

これが発表された段階では復活作という話題性のほうが高く、まさか中長期的な伏線になっていたとは、誰も想像しなかったでしょう。

プロローグシングルとして、出発の前日譚を描いた「三千世界」を立て続けにリリースすると、今度はストーリーの舞台設定をより具体的に認識するための朗読劇、「操舵手だった者の手記 ~ケレン10号~」をYouTubeで公開。

気付いた頃には、「ケレン気関車」の世界観にどっぷりと浸りきっていました。

 

本作の舞台となるのは、楽獄"エデン"、煉獄"モダン"、地獄"サタン"という3つの星。

トータルコンセプトとしてケレン気関車での宇宙の旅を描く中で、立ち寄る星々での物語をそれぞれの作品で表現していくといったところでしょうか。

エデンは故郷の昔の姿、モダンは故郷の現在の姿、サタンは故郷の近い将来の姿に似ているという設定があることで、より考察が滾ります。

 

「STRAY STAR」は、そんなテーマを総括的になぞった楽曲。

3つの星には、それぞれ"アイ"が当てはめられており、これからの冒険へのワクワク感を高めます。

早口で歌詞を詰め込みつつ、シアトリカルな演出を散りばめるのはLIPHLICHの王道。

一方で、メロディの乗せ方やコーラスの重ね方は従来以上に難解で、実のところ、かなりチャレンジもしていますね。

不協和音も多いのに、聴きやすさを感じさせる仕上がりなのだから恐ろしい。

 

「傀儡モーション」は、"AI"の星、エデンでのお話。

何事もシステマティックに処理され、イレギュラーは排除されるという世界。

その近未来的、かつ機械的な世界観を、デジタルサウンドを前面に押し出した無機質な音像で表現しているのかな。

メロディラインだけであれば、フレーズのインパクト重視のベタさもあるのですが、彼らには異色な電子的なスタイルが、新鮮味を与えていました。

 

その次に訪れる"愛"の星、モダンを切り取ったのは「マジシャンエイボン」。

コミカルというか、ヘンテコというか、異質なノリの良さが特徴的。

掛け合いを意識して、アッパーに攻めていくのだけれど、どこかで脳内のスイッチが切り替わって、呪術的にも聴こえてくるから面白い。

素直に弾けているだけでなく、やはり不協和音が混ざってくるので、少し裏があるような含みを感じてしまうのですよ。

ロカビリー調の間奏で、ギターとベースが主張し合う場面も、何気に聴きどころ。

 

ラストの「サタンの戦慄」は、"I"の星、サタンでの物語。

激しくソリッドさがあるハードチューンなのだけれど、ミスマッチな和風の旋律がクロスオーバーしてくるので、雅やかさも受け取ることが出来ます。

「マジシャンエイボン」とは、また違ったライブ映えをしていて、LIPHLICHとしても一皮むけたイメージ。

ストーリー仕立ての中に、このような楽曲をしれっと紛れ込ませることができるのも、紛うことなき彼らの強みなのです。

 

もっとも近未来的なエデンが、故郷の過去の姿に似ているというのが奥深い。

地球とは逆の進化体系となっているのか、あるいは、進化しすぎた地球もいずれ、「マジシャンエイボン」による混乱の後、地獄へと姿を変えてしまうのか。

ストーリー展開が気になるところで、間髪入れずにミニアルバムのリリース発表を持ってくるスピード感はさすがの一言。

まだまだ続く、「ケレン気関車」での宇宙の旅。

次は、どんな星に降り立つのでしょうか。

 

<過去のLIPHLICHに関するレビュー>

三千世界

ケレン気関車

CLUB FLEURET

発明

幻想曲
DOUBLE FEATURE
蛇であれ 尾を喰らえ
7 Die Deo
SKAM LIFE
SEX PUPPET ROCK'N'DOLL
カルトなでしこ
萬の夜に鳴くしゃれこうべ
GRATEFUL NONSENSE
HURRAH HURRAY
フルコースは逆さから
マズロウマンション
MANIC PIXIE
SOMETHING WICKED COMES HERE AGAINST YOU
LOST ICON’S PRICE
Pink Parade Picture
月を食べたらおやすみよ
Ms.Luminous
6 Degrees of Separation
SOMETHING WICKED COMES HERE