フルコースは逆さから / LIPHLICH | 安眠妨害水族館

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フルコースは逆さから(Type A)/LIPHLICH

¥4,200
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1. 街へ出よう(Instrumental)
2. 飽聴のデリカテッセン
3. ヘンピッグ
4. 慰めにBET
5. VESSEL-Album Ver.- 
6. 大計画
7. マズロウマンション
8. 月を食べたらおやすみよ-Album Ver.-
9. Fiddle-De-Dee
10. ミズルミナス-Album Ver.-
11. ジョン&ジェーン・ドゥ
12. MANIC PIXIE
13. 主人の楽園
14.

LIPHLICHの2ndフルアルバム。
初回盤は、2013.8.2に恵比寿LIQUID ROOMで行われたワンマン公演、「LAST IDIOT」から10曲を収録したDVDが付属。
通常盤は、CDのみで収録曲は変わらず。
その他、11月には、Vo.久我新悟さんによる書き下ろし小説付きの通販限定盤がリリースとなるようです。

「フルコースは逆さから」をトータルコンセプトに据えた本作。
歌詞カードについても、最後の曲から順に記載されているなど、こだわりがうかがえる。
導入SEである「街へ出よう」にも、食器がかちゃかちゃと鳴る音が使われていたり、物語を完結させるシークレットトラックがエンドロール的に収録されていたり、そういったギミックに注目してみるのも、面白さといったところか。

さて、内容については、新メンバー加入後のLIPHLICHの集大成。
モノクロムービーのようなレトロさを纏っていた楽曲たちに、心なしか、色味が出てきたような。
廃盤となった「VESSEL」、「ミズルミナス」、会場限定で販売された幻のシングル「月を食べたらおやすみよ」は、Gt.新井崇之さん加入前の作品ということもあり、ニューバージョンに再構築。
この辺りを聴きくらべると、特に顕著ではないかと。
新井さんの、ギターに感情が込めて放つようなプレイスタイルにより、華やかさがプラスされた印象を持ちました。

じっとりと湿度を持った久我さんのストーリーテリングは相変わらず。
どこか古めかしくて、どこか異国的。
少し垢抜けた部分はあっても、そんなLIPHLICHとしての世界観を失わないのは、さすがの一言です。

その中で、アルバムのバランスを意識してか、マンネリに陥らないように幅を広げる目的か、多くのチャレンジも見られる。
「ヘンピッグ」のように、バンドサウンドで畳み掛けるハードチューンで、序盤の勢いを作り出したり、ドロっとした暗さがある「大計画」、エレクトロなサウンドに驚かされた「Fiddle-De-Dee」など、彼ららしさの殻を破ろうとする試行錯誤には、確かな可能性を感じずにはいられない。
たとえば、「Fiddle-De-Dee」には、英詞だと思ったら日本語詞だった、という遊び心があって、アクセントに終わらないよう、どこかで耳に残る工夫が施されているのです。

一方で、1st「SOMETHING WICKED COMES HERE」の頃にあったアングラ感は抜けたかなぁ。
ある程度、V系シーンに馴染ませるようなあざとさを身につけた分、衝撃度は薄まった気がします。
もっとも、知名度が上がってきたタイミングでのフルアルバム。
コアなファンには、食い足りなさは残るかもしれませんが、入り口として手に取るリスナーも多いことを考えれば、彼らの濃厚な世界観をそのまま曝け出すより、効果的だろうとは思うけれど。

総じて、コンセプチュアルにまとめられた様式美。
お手軽に楽しめるファーストフードでは満足できないという舌が肥えたリスナーは、LIPHLICHというフルコースなんていかがでしょうか。

<過去のLIPHLICHに関するレビュー>
マズロウマンション
MANIC PIXIE
SOMETHING WICKED COMES HERE AGAINST YOU
LOST ICON’S PRICE
Pink Parade Picture
月を食べたらおやすみよ
Ms.Luminous
SOMETHING WICKED COMES HERE