疫病は冷たく嘲笑う / 病葉~わくらば~ | 安眠妨害水族館

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疫病は冷たく嘲笑う/病葉~わくらば~

 

1. 独白する病

2. 白晝ノ夢

3. 茜

4. 断絶

5. エフェドリンな鬼ごっこ

6. 病床、然ニ非ズ「焼香」

 

 

関西を拠点に、2020年9月に始動した病葉~わくらば~。

本作は、初音源として限定100枚でリリースされた1stミニアルバムです。


活動休止となった即ち性。のヴォーカリスト、翼さんを中心に結成。

病気や虫のために変色した葉を意味するバンド名は、シーンにおいて異色の存在で在りたい理念と、"コロナ渦"の最中に結成されたという皮肉を込めているとのこと。

密室系、地下室系を連想させるアーティスト写真ともマッチしていて、なかなかに興味を引くバンド名ではないでしょうか。

 

音楽性としては、ドロリとした閉鎖的な世界観を、激しく重苦しいサウンドにて表現。

強いて言うのであれば、ムックのブレイクにより、レトロな哀愁メロディとラウドなサウンドを融合させたバンドが増殖した、ゼロ年代中盤~終盤の空気感が濃く存在していますね。

もっとも、彼らの場合は、最先端としてそれをやっていたリアルタイム世代とは異なり、懐古主義的な意味合いを認識。

独自の解釈を加えることを前提にしているので、時代を無視したアプローチが飛び出してくるのが、病葉~わくらば~の武器であると言えるでしょう。

 

たとえば、スタートの1曲となる「独白する病」は、平坦なメロディによりおどろおどろしい空気が充満しているのですが、終盤でスイッチが入ると、切れ味の鋭い煽り曲に変貌。
ひとつひとつは使い古されたとも言える手法であるにも関わらず、この組み合わせを持ってくるか、という驚きがあり、新鮮な気さえしてくるのですよ。
続く「白晝ノ夢」についても、メロディラインそのものは、黒夢の「中絶」のオマージュ要素を強くしており、それがかえって面白い。

ゼロ年代の懐古主義からのブラッシュアップを図るのに、現代的な流行と融合させたバンドは数多くあれ、更に時代を逆行した定番ナンバーを持ち込んでくるのだから、ふてぶてしいというか、図太いというか、狙いどころに大物っぷりを感じるのです。

 

MVが制作された「茜」から「エフェドリンな鬼ごっこ」までの3曲は、彼らにとってのコアな部分になるのかな。

それぞれタイプは異なるのですが、内向的な性格と、渦巻く激しさという相反する表現を本質に置くスタンスはブレることがなく、中毒性を高めている。

ドロドロした地下室系の救われなさと、触れるものみな傷つける攻撃性が混在するため、多少は支離滅裂になっても致し方なし。

そこら辺は甘く見るか、とすら思っていたのに、なかなかどうして、流れまで良いのだもの。

 

ラストの『病床、然ニ非ズ「焼香」』は、ワンフレーズを大真面目にひたすら繰り返していると、コミカルな要素も付加されてインパクトが物凄いことになる。

それを地で行く実験性の強いハードチューンでした。

サウンド的には緩急をつけながら、その姿勢は最後まで攻め気を貫き通した病葉~わくらば~。

新人バンドが生まれにくい環境であった2020年、期待を一身に背負って登場したハイブリッドバンドと呼べるのかも。

音質やアレンジの細部については改善の余地があるも、そこは伸びしろとして捉えておきたい1枚です。