ラブラドール / nurié | 安眠妨害水族館

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ラブラドール/nurié

 

1. ラブラドール

 

配信収益音源化計画の第二弾となるnuriéのデジタルシングル。

 

音楽性としては新境地となり得る、メロウなロックンロール。

透明感のあるギターのアルペジオが、揺らぐ水面をイメージさせて、いかにも夏っぽいですね。

木陰から海を見ているような暑さと涼しさが同居して、なんとなくセンチメンタルになる、あの感覚。

言葉を詰め込むアプローチが多かった彼らにとって、余韻を活かしたメロディラインも新鮮でした。

 

Vo.大角龍太朗さんが描く歌詞世界も、そんな感性を刺激します。

過去を回想しながら、過去を美化するわけでも、現在を否定するわけでもなく、淡々と今の心境を紡いでいく。

死別した愛犬に対してのメッセージを曲にした、といった体裁ですが、恋人や友人に置き換えることもできそうで、案外、どのような境遇にいても共感できる感傷に仕上がっているのかと。

日常は既に帰ってきていて、心の傷は時間が癒してくれた。

だけど、ふと思い返したタイミングで、とてつもない喪失感に襲われる。

詳細な描写がなくとも、行間を読めばストーリーを想像する余地があって、聴けば聴くほどグッとくるのですよ。

 

最後の一文も、なんともnuriéらしいです。

唐突感のある終わらせ方なのだけれど、柄にもなくセンチになったので、無理やり思考を終了させたと解釈すると、主人公の人間味が一層浮き彫りになるといいますか。

大角さんの掠れ気味のハスキーボイスも相まって、ぶっきらぼうな文体を"若さ"の表現として成立させてしまったのは、もはや発明でしょう。

サブスクリプションでも聴くことが出来るので、夏のプレイリストに放り込んでも良さそうな1曲。

 

<過去のnuriéに関するレビュー>

今宵、未来の為に歌おう。

人として人で在る様に

生き継ぎ

モノローグ