モノローグ/nurié
1. モノローグ
2. 透明に混ざる。
3. [ばいばい]
Vo.大角龍太朗を中心に結成されたnurié。
本作は、情報が解禁されるとともに、口コミで話題になった1stシングルです。
多様化が進み、"ジャンルがないのがV系というジャンル"と言われて久しいシーンではありますが、なんだかんだ流行によって傾向や偏りは出てきているのが実態でしょう。
そんな中、まったく流行には媚びない路線で、一気に市民権を奪ってしまうバンドがときたま発生する。
2019年下半期にそんなバンドが出てくるとしたら、第一候補は彼ら以外にいないのではなかろうか。
そう思わせるだけのインパクトが、MVが先行公開された「モノローグ」にはあったのですよね。
雑な表現ではあるが、とにかくお洒落。
ゼロ年代にシーンを席巻したオサレ系のそれではなく、そのままJ-POP市場で流れていてもおかしくない、あえてV系ナイズせずに送り込んだようなお洒落さが感じられる。
歌詞についても、世界観をどうのこうのといった趣向はなく、等身大のメッセージ性を重要視したもの。
率直に言えば、V系っぽさというものが感じられないのですよ。
だけど、そのうえでV系を志した者の感性だからなのか、シーンのリスナーにもしっかり響く。
これだけマーケティングが進み、V系っぽさのセオリーが確立されてしまっていると、マンネリによる飽和化が進み、逆に求めているものが手に入らなくなるというジレンマ。
本当にリスナーが求めていたのは、V系の心を持ったうえで、V系のセオリーをひっくり返してしまうバンドだったのではなかろうか。
彼らのインパクトを分析すると、外のシーンから来たとか、外のシーンに出ていこうとする音楽性ではなく、V系シーンの中にあったもので未開であり、新鮮なサウンドを作ってしまったところにあるのだと思うのです。
また、「透明に混ざる。」および「[ばいばい]」も物凄く刺さる。
10年前のボカロ曲を聴いて育った中高生が大人になって作ったような作風で、世代のリスナーには耳馴染みが良いというのもあるのだけれど、狙ってそうやっているというよりも、等身大の音楽を目指した結果、染みついていたサウンドが潜在化したイメージ。
やはりセオリー通りではなく、だけどすっと入ってくる親和性の高さを持っていました。
バンギャルをデフォルメしすぎたメンヘラ系楽曲が溢れる昨今、普通の人が抱えている悩みや葛藤、希望に願望、色々な想いをひっくるめて吐き出せる歌詞のセンスも、間違いなく強みとなりそう。
お洒落さに憧れる若者だけでなく、懐古主義に陥りがちな層ですら、ごそっと持っていってしまいそうな予感がするのだよな。
イチゼロ年代から、ニーゼロ年代に移ろうとしていく中での結成も、新時代の到来を象徴しているのかも。
1stシングルの段階で、ハードルが上がるに上がってしまった感はありますが、彼らに期待したくなる気持ちは十分にわかる。
バンド名のとおり、シーンを塗り替えてしまうほどの活躍を願わずにはいられない1枚です。