愛「 」/ザアザア
1. ビー玉
2. オレンジの空
3. クローゼットの奥の奥の奥の奥
4. 夜の性
5. ハッピーウェディング
6. あなたはきっと浮気してる
ザアザアの通算6枚目となるミニアルバム。
DVDが付属するA TYPEと、「あなたはきっと浮気してる」が追加収録されたB TYPEの2種類同時でのリリースとなりました。
本作のテーマは"愛"。
前作「みんながうた」から、2作続けてのコンセプト作品となります。
もっとも、もともと"雨"をモチーフにした作品を制作してきた彼ら。
マンネリを避けつつ、納得感のある形で幅を広げる点で、コンセプチュアルなテーマを設けるのは正解と言えるでしょう。
従来よりメロディの良さを武器としている彼らですが、本作の特徴は、歌心をより強めているところにあります。
リードトラックとして、「クローゼットの奥の奥の奥の奥」と「ハッピーウェディング」の2曲が据えられているのですが、どちらもバラード寄りのミディアムナンバー。
バラエティ性を増やすよりも、歌モノに特化するアプローチをとっており、本作はこれで勝負する、という意図が明確ですね。
特に、「クローゼットの奥の奥の奥の奥」については、Vo.一葵さんの感情の込め方も相まって、切なさが炸裂。
ラストシーンで、呟くようなトーンになる演出もたまりませんでした。
スタートを切る「ビー玉」も、なかなかの佳曲。
導入として、ほどよい疾走感と、哀愁のあるメロディにより、とっつきやすさを生み出しています。
なんなら、これをリードトラック、またはシングルとして切っても問題ないレベルのキャッチーさもあって、出し惜しみのない充実っぷりをアピール。
続く「オレンジの空」も歯切れのよいロックチューンで、バラードが多い=守りに入っているという印象を掻き消すのに、効果的に機能しているのですよ。
ちなみに、収録曲が発表された段階では、A TYPEのラストは「ハッピーウェディング」、B TYPEでは、その後に「あなたはきっと浮気してる」と並ぶので、ハッピーエンドで終わるパターンと、結局その後にオチが待つバッドエンドパターン、皮肉が効いた構成だな、と予想していたのですが、それもまたブラフ。
「ハッピーウェディング」は、タイトルとは裏腹、自分との交際を反故にして、別の女と結婚する元カレに対する恨み節という裏切り方をしていて、"祝い"と"呪い"は紙一重である、まさに背筋が凍るナンバー。
そう考えると、「あなたはきっと浮気してる」は、その前日譚、あるいは結婚した女目線で、結婚前の駆け引きとも捉えられるようになるので、奥深さが増してきます。
ボーナストラックとして、本作では控えめだった激しさをもたらしているのも、リスナーとしては嬉しい限り。
ギミックよりも、曲の良さで真っ向勝負。
バンド運営における収益源が、音源<ライブになってから、ライブ映えが作曲における重要ファクターだったわけですが、ライブができない時代だからこそ、原点回帰の揺り戻しは出てくるのかもしれない。
愚直にも"良い曲"にこだわっているバンドには、しっかりスポットライトが当たると良いな、と思わされる1枚です。
<過去のザアザアに関するレビュー>