死にたい / ザアザア | 安眠妨害水族館

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死にたい/ザアザア


1. もうすぐ雨が降るから
2. 死にたい
3. 不感症
4. 拝啓、あなたへ
5. 闇

3ヶ月に1枚のペースで連続リリースを仕掛けたザアザア。
本作は、その3枚目となるミニアルバムです。

"闇"をコンセプトにした作品とのこと。
タイトルにしても、ジャケットにしても、インパクトがありますね。
表題曲をピークにするための演出が絶妙だった「コワイクライ」、バラエティに富んで個々の楽曲に力を持たせた「どしゃ降りの彼女」と続いて、この「死にたい」。
意図してかどうかは別として、前作、前々作のおいしいところどりになっているような印象を受けました。

スタートは、「もうすぐ雨が降るから」。
"ザアザア"というバンド名とシンクロするタイトルですが、淀んだ空気感と哀愁のあるメロディ。
激しさとメロディアスさのメリハリがあり、確かに、彼ららしい楽曲である。
サウンドメイクは比較的シンプルなのだが、展開が絶妙なので、物足りなさは感じません。
更に、そこから表題曲である「死にたい」へ続く。
重く激しく攻め立てるギターのリフと、"死にたい"という言葉の連呼で音の隙間を埋める圧倒的な絶望感。
アプローチの違いがお互いを引き立てており、この辺りの演出の上手さは、「コワイクライ」でも感じた彼らの強みなのだろうな。

加えて、「どしゃ降りの彼女」にも引けをとらない個の強さも見せていく。
「不感症」は、爽快に疾走する部分と、三拍子のリズムでドロドロと蠢く部分とのギャップにより、聴きやすさとマニアックさを両立。
結果として、彼らの"闇"に、どっぷりと引きずり込まれてしまいます。
単体でのインパクトであれば、「拝啓、あなたへ」も負けていない。
重低音の圧力は継続されるも、明るさすら感じる青春パンク的なサビのフレーズには驚きを隠せませんでしたよ。
ただし、歌詞の内容はある種のエグ味を持っていて、その落差によりぐっと興味が増すというか。
語りの部分での表現や、ラストの吐き捨てるような台詞にもドキっとさせられ、飛び道具ながら、これがあるのとないのではアルバムの雰囲気がガラっと変わっていただろうな、と。

最後に収録された「闇」は、本作のコンセプトを冠しているだけあって、集大成的なナンバーに仕上がっているのかな。
鍵盤の音も入って、とてもメロディアス。
ここまでの流れ的に、ずっしり重くて苦しさのある楽曲になるのだろうと思っていたら、良い意味で裏切られました。
スピード感を維持しながらも、光が見えそうなスケールの大きさを感じさせる佳曲である。

なんとなく、彼らの持ち味は、ギャップだったり、意外性だったり、捻くれた表現技法の巧みさにあるのではないか、と思いました。
こう来るだろう、と予想した方向に来ない。
なのに、ストレスが溜まるどころか、目から鱗。
ガツンと頭を殴られたような衝撃があるのですよ。

必ずしも難しいことをやっているわけではないだけに、センスが良いのだろうなぁ。
影響を受けていると公言しているMUCCっぽさも、ところどころに垣間見ることができる。
その点では、まだまだ個性を研ぎ澄ます余地があるということなのだが、このタイミングで着地が見えていてもつまらないわけで。
隙があることが、むしろ武器になる初期衝動。
見事、スタートダッシュを果たしたと言えるのでしょう。

<過去のザアザアに関するレビュー>
どしゃ降りの彼女
コワイクライ