どしゃ降りの彼女 / ザアザア | 安眠妨害水族館

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どしゃ降りの彼女/ザアザア


1. どしゃ降りの彼女
2. 花占い
3. 君の心臓を食べてしまいたい
4. 夕焼け
5. ワタシ=エトセトラ

3ヶ月ごとのインターバルで、ミニアルバムを連続リリースしているザアザア。
本作は、その2枚目となる作品です。

リードトラックとなる表題曲によって、勢い良くスタート。
前作の「コワイクライ」では、雰囲気モノを最初に配置して、ピークまでの演出に重きを置いていたのですが、本作では、一気にぐわっと盛り上げる。
繊細さを意識したギターリフと、疾走系のビートに重なる歌謡メロディ。
彼らが強みとして押し出そうとしている音楽性を王道的なスタイルに落とし込み、かなりのキラーチューンに仕立て上げてきました。
これにより、"垢抜けた"という印象を強めることができたのでは。

続く「花占い」は、切ない歌モノ。
1曲目であれだけ勢いに乗っていただけに、この選曲には意表を突かれたのですが、これはこれで儚い歌メロが沁みるじゃないですか。
同じタイプの楽曲を固めなかったことで、1曲1曲の良さが引き立つ。
5曲という限られた収録曲数だからこそ、流れよりもインパクトを出すために振り切ったと捉えておきましょう。

インパクトという意味では、「君の心臓を食べてしまいたい」も強烈。
タイトルだけでもギョッとしますが、「好き」の連呼や、パンを左右に振っての絶叫など、ギミックも変態的ですね。
昭和歌謡に特化したノスタルジックな「夕焼け」も好み。
甘酸っぱい青春を、パンキッシュなサウンドで切なく歌い上げます。
ここまで、ひとつとして音楽性のタイプが被らないのですが、どれもが佳曲だから恐ろしい。

ラストの「ワタシ=エトセトラ」は、ジャジーな歌謡ロック。
お洒落な雰囲気もあれば、アングラな雰囲気もあり、そこが彼ららしくもありますな。
率直に言えば、4曲目、5曲目の流れは、ベタな昭和歌謡系バンドだったりするのだけれど、1曲目~3曲目で色々な幅を見せたことで、無難という印象に終わらないのが上手いなと。

アルバムとしてのまとまりには欠けるが、個の強さは前作以上。
傑作と呼べる一枚に仕上がりましたよ。
個人的には、重低音で密度を濃くする現代的なサウンドメイクではなく、クリーントーンのフレーズを活かした懐かしいアンサンブルをしているのも好印象でした。

次作でこの衝撃度を維持できれば、それはもう"本物"と言ってしまって差し支えないはず。
発売予定の3rdミニアルバムへの期待値のハードルが高くなった感はありますけれど、急上昇中のバンドの勢いとは凄いもので、ザアザアならそれが可能であるような気もしてきますね。

<過去のザアザアに関するレビュー>
コワイクライ