「春青 -shunsei-」「赩 -kaku-」 / H∧L | 安眠妨害水族館

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春青 -shunsei-/H∧L

 

1. 春青 -shunsei-

 

赩 -kaku-/H∧L

 

1. 赩 -kaku-

 

ex-マイナス人生オーケストラ、ひととなりのヴォーカリスト、H∧Lさんによるソロ・デジタルシングル。

 

ジャケットのアートワークは同じですが、ひとつのパッケージに2曲ではなく、1曲ずつの2パッケージという位置づけ。

シングル曲とカップリング曲という位置づけではなく、あくまでそれぞれが主役ということなのでしょう。

もっとも、ソロ活動の名義として、蒼井春や赫春というネーミングを用いてきたH∧Lさん。

本作における赤と青の対比にも、自身の総括的な意味合いを感じたくもなります。

 

「春青 -shunsei-」は、ピコピコサウンドにロボットボイスも多用し、原点回帰的な印象を受けるポップチューン。

ミディアムテンポではありますが、四つ打ちのリズムにより、軽快でダンサブルなイメージを与えています。

ただし、付きまとうのはノリの良さだけではなく、ぽっかりと穴が開いたような喪失感だったり、虚無感だったり。

終始、あえて感情を抑えたような、淡々とした歌い方に徹しているのも象徴的で、楽曲構成としてインパクトが大きいわけではないのだけれど、余韻が物凄いですね。

H∧Lさんらしい"負"の感情を、"静"の方向に突き詰めた1曲と言えるでしょうか。

 

一方で、それを"動"の方向に働きかけたのが「赩 -kaku-」。

感情の昂りが、攻撃性となって噴出されたイメージで、それに伴ってサウンドもアグレッシブになっています。

まさに激情。

"負"の感情が孤独に帰結する、という近しいところにあるテーマ性なのに、こうも極端な表現方法が、同一人物から放たれているというのが興味深いですよ。

もちろん、どちらにも共感できてしまう自分がいるので、どちらにも振れることが出来てしまうのが人間の本質、ということなのかもしれません。

フレーズのひとつひとつは、まさに待ちに待ったH∧Lさん節であり、バンドで演奏されても映えるだろうな。

彼の音楽性や世界観が好きなリスナーであれば、間違いなく心を撃ち抜かれるであろう2曲でした。

 

<過去のH∧L(蒼井春)に関するレビュー>

証明、終わり。