ZEUS / La'cryma Christi | 安眠妨害水族館

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ZEUS/La'cryma Christi

 

1. AWAKEN

2. Lay Down

3. Hot Rod Circuit

4. DESERT

5. DANCING IN THE DARK

6. Under my skin

7. CANNONBALL

8. Don't tell me lies

9. DRONE

10. SAME OLD SHIT!

11. yesterdays

 

2005年にリリースされた、La'cryma Christiの6thアルバム。

Gt.KOJIさんが脱退し、4人編成になってからは初のフルレンスとなります。

 

本作より、作詞・作曲はすべてLa'cryma Christi名義に。

楽曲の制作方法が変わったのか、戦略的なシフトかは不明ですか、いずれにしても、彼らの音楽性の変遷を語るうえでは、大きな意味を持つ作品です。

 

というのも、本作は徹底してHR/HM路線を貫いているのですよ。

前作「DEEP SPACE SYNDICATE」でも、その兆候は見え始めていましたが、よりルーツに近い懐古主義的なロックサウンドへと進化しており、初期のプログレ志向や、中期のキャッチーさは影を潜めた形。

実に潔い割り切りっぷりに、彼らの作品の中でも、評価がまっぷたつに分かれるアルバムであると言えるでしょう。

 

導入の「AWAKEN」から、ベタなコール&レスポンスでテンションを高めると、リズムが切れ目なく引き継がれて「Lay Down」へ。

まるでライブのような演出で臨場感を再現しており、華やかな印象があったLa'cryma Christiが、すっかり硬派で重厚なイメージに塗り替えられてしまいます。

シングル曲らしい疾走感がある「Hot Rod Circuit」を続けたのは、衝撃的すぎたスタートへの緩衝材という役割もあったりして。

もっとも、この曲も終盤でVo.TAKAさんによるロックンロールシャウトが飛び出すので、La'cryma Christi=ハードロックバンドという刷り込みは続いているわけですが。

 

「DESERT」、「DANCING IN THE DARK」といった妖艶さを残すダークナンバーも、ヘヴィネスは意識されており、ギターのリフにはオマージュ要素も見られますね。

彼らの個性でもあった複雑なツインギターの絡みは失われてしまいましたが、ギターが1本になったことを減点対象にしてたまるか、というぐらいにHIROさんのギターが暴れまわっており、この変遷は、ある種、メンバーの脱退があったからこそ開かれた道だったのかもしれません。

「Don't tell me lies」でかつてないほど激しく突き抜けて、インストチューン「DRONE」では持ち前のテクニカルな演奏を存分に発揮。

世界観の制約が、良い意味で外れた感があり、これはこれで、彼らでないと完成させることができない音楽ではあるのだよな。

 

古くからのリスナーが求めていた音楽性とは異なっていたのは事実で、賛否両論あるのはやむなし。

一方で、シーンの中でこれほど高いクオリティのHR/HMアルバムは、なかなかお目にかかれないわけで、まだまだニーズは掘り下げることができるのではないかと。

その本格派っぷりに"V系として括るには惜しい"という評価も目にしますが、築いた地位に満足せず、常に変化を求めていた姿勢にこそ、ヴィジュアル系バンドの矜持があるのでは。

 

<過去のLa'cryma Christiに関するレビュー>

DEEP SPACE SYNDICATE

&・U
magic theatre

Without you
Lhasa
Sculpture of Time

Dwellers of a Sandcastle
Siam’s Eye