Dwellers of a Sandcastle / La’cryma Christi | 安眠妨害水族館

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Dwellers of a Sandcastle/La’cryma Christi

¥2,160
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1. Warm Snow
2. Forest
3. A.S.I.A
4. カリブで生まれた月
5. Poison Rain

La’cryma Christiが1996年に発表したミニアルバム。
1997年に正式にメジャーデビューする彼らですが、本作もメジャー流通でのリリースでした。

1stミニアルバム「Warm Snow」を、発売から2ヵ月で完売させた彼ら。
本作は、その楽曲をリレコーディングを行ったうえで発売されたもの。
単純に2nd Press盤をリリースすることもできただろうに、2ndミニアルバムとして作り直してしまうとは、面白いことをしていたものですな。

ブレイク期の彼らしか知らなければ、コア層の評価と自分が知っている音楽性にギャップが出てしまいかねないLa’cryma Christi。
この「Dwellers of a Sandcastle」は、前者のど真ん中にある作品と言えるでしょう。

プログレを意識した楽曲構成に、複雑に絡み合うツインギターを駆使したアンサンブル。
それでいて、聴きにくさを払拭するポップな要素もしっかり織り込んで。
仕上げとしてVo.TAKAさんのハイトーンボイスが重なれば、異国情緒漂うラクリマ節の出来上がり。
卓越したテクニックによって成り立つこの世界観は、シーンに大きな影響を与えた一方、真似したくても真似できない孤高の存在として語られる理由でもありました。

「Warm Snow」は、異国の物語のようで、少しダークさも含んだミディアムナンバー。
ポップなのだけれど、手放しにポップとは言えないマニアックさがある。
メロディラインはファンタジックで、元はこれが表題曲となっていたのも納得です。
続く「Forest」は、シングルカットされるだけあってサビのキャッチーさは群を抜いている。
必ずしもストレートに進行せず、間奏ではプログレ要素もしっかり加えてくるのが彼ららしいですな。

「A.S.I.A」と「カリブで生まれた月」は、どちらも6分を越える長めのナンバー。
1曲単体でガツンとインパクトを与えるタイプの楽曲ではないものの、異国情緒漂うサウンドに、プログレ的な展開という本作の個性を確固たるものにしているのが、このゾーンだったりするわけで。
アダルティーな雰囲気がある「A.S.I.A」は、夜の翳り、寂しさをイメージさせる。
ファルセットを多用したメロディラインも相まって浮遊感のある「カリブで生まれた月」は、同じ夜でも月の明るさを想起させるという対比がある気がするのですが、狙っているものなのだろうか。

ラストの「Poison Rain」は、ダークさも纏う疾走チューンで、彼らのサウンドをV系の王道に落とし込んだもの。
もっとも、ギター主導でストーリーを語るかのような間奏や、細やかなフレーズで余韻を残すアウトロなど、ひとつひとつのパーツには妥協がなく、それでも十分に個性化はできていますよね。
これが見事にツボだったという同士は、きっと少なくないはず。

インディーズ時代に、この段階まで到達してしまっていたのだから恐ろしい。
音楽性としては玄人好みの面はあるものの、演奏力も楽曲の構成力も完璧。
V系の歴史を語るうえで外せない1枚であることは間違いありません。

なお、本作は2010年に紙ジャケット仕様のデジタルリマスター盤もリリースされています。
オリジナル盤なら中古市場で安価で入手できますが、音質などにもこだわりたいリスナーであれば、こちらを探してみてもいいのでは。

<過去のLa’cryma Christiに関するレビュー>
&・U
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Sculpture of Time
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