magic theatre / La'cryma Christi | 安眠妨害水族館

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magic theatre/La'cryma Christi

 

1. Magic Theatre
2. イスラエル
3. Cry Sour Grape
4. SCORPION GLASS
5. Blossom
6. Sweet Suicide
7. Subconscious Desire
8. GUM
9. Lime rain
10. ファシズム
11. 雪になって消えた二人
12. Dear Natural

 

ヴィジュアル系四天王の一角、La'cryma Christi。

2000年にリリースされたメジャー3rdアルバムです。

 

「未来航路」等のヒットにより、メジャーシーンでのブレイクを果たした彼ら。

その印象を引き摺る形で、ポップなイメージが定着しかけていた中で発表された本作は、ある種、メジャーシーンに反旗を翻す挑戦的な作品でした。

先行してリリースされていた3枚のシングル曲は収録せず。

シニカルなテイストを押し出したダークな作風に仕上がっており、リスナーをふるいにかけるアプローチをとっていたのです。

 

本作でのスタンスについては、一見可愛いジャケットのイラストが象徴的。

パッケージを開けてみると、こいつが人間をグロテスクに食い荒らしているのですよ。

表面的にはポップに見えても、実はダークで攻撃的。

まさに、「magic theatre」をキャラクター化した姿だな、と。

 

まずは、最初のタイトル曲「Magic Theatre」。
10分を超える壮大な仕上がりで、序盤からリスナーの選別をしているかのよう。

この世界観を受け入れられるか、受け入れられないかで、その後の楽曲の印象も違うでしょうね。

異国情緒たっぷりで、時事ネタも取り入れた彼らなりの王道曲「イスラエル」や、ポップ感を残しつつも、マイナーコードでダークな雰囲気も帯びている「Cry Sour Grape」と、収録曲はキラーチューンばかり。

緩急織り交ぜての楽曲構成はたまりません。

 

注目したいのは、アクセント的に収録された「GUM」。

なんとカントリーに挑戦しており、今までの暗さが嘘のような、ポップで明るい曲調。

歌詞の最後の1行で、全部台無しにしてしまうブラックユーモアも効いていて、妙に印象が残っています。

 

シングル曲では唯一収録されたのは、「Lime rain」。

良い意味で目立っておらず、ダークな空気に馴染んでいました。

「ファシズム」への繋ぎは、シングルからのお約束で、ここにきてポテンシャルを発揮してきたといったところでしょう。

Dr.LEVINさんが作曲したメロディアスチューン、「雪になって消えた二人」でほんのり歌モノ要素を強めると、クロージングは「Dear Natural」。
SEに語りを被せる彼らにとっては珍しいナンバーで、最後まで、天邪鬼は健在です。

 

声に好き嫌いがあるのは仕方ないですが、風化させるには勿体ないバンド。

技術の底上げがされてきたV系シーンではあるが、ここまで全員が安定して魅せるプレイができるバンドなんて、そうは出てこないでしょう。

音楽性も、洋楽のヒット作はもちろんのこと、クラシックだったり民族音楽だったり、様々なエッセンスを取り入れていて、独自の音楽に昇華。

セールス的には下降期に入ってしまうものの、ロックバンドの矜持やプライドが見えた名盤です。