1.S.E.A
2.Siam's Eye
3.White Period
幻の名盤と言われた、ラクリマクリスティのインディーズ時代のシングル。
今では、同じく幻であったミニアルバム、「Warm Snow」と2枚組でリマスタリング再発されているので、手に入りやすくなっているのでしょうか。
本作は、4thプレスまで存在しています。
そのプレスの数で、当時の人気ぶりがうかがい知れますね。
写真は、3rdプレス、4thプレス共通のもの。
3rdプレス以降は、ボーカルがリレコーディングされている他、「White Period」が追加収録されています。
初期のラクリマは、ポップな部分はあるのですが、キャッチーな方向に進むのではなく、マニアックに捻くれていくのが魅力でした。
メロディの一部分を取り除いて聴いてみるとポップなのですが、繋げて聴いてみると、転調・変拍子が多用されていて、すんなり聴けない引っかかりがある。
その引っかかりが不協和音的に重なって、独特な世界観に変わっていくんです。
聴きやすいけど、聴きにくい。聴きにくいけど、聴きやすい。
「S.E.A」は、ダークな雰囲気を持ちつつ、サビではメロディアスになる不思議なナンバー。
メロディアスはメロディアスなんですが、高揚感がありそうで、暗く沈んでいくイメージもある。
まさに、崖の上から暗い海を見下ろしているようです。
サビの中でテンポチェンジがあるなど、1曲目からこんなにマニアックに行くか、というほどのマニアックさはさすが。
ギターもベースも主張するところがあって、楽器隊のスキルもアピールできるあたり、本当にレベルが高い。
表題曲、「Siam's Eye」は、メジャーコードでの進行ながら、明るくなりきらず、暗くもなく、ただただ音に漂う異国情緒溢れるナンバー。
この異国の宗教的な気だるい楽曲も、ラクリマの持ち味ですね。
SEと繋がって1曲になっているような長いイントロも、1曲の中で世界観を完結させるためのアイディア。
CDのタイトルになっているわりにはシングル向けという感じではなく、スルメ系ですね。
ヒット作「未来航路」のカップリングで再録されていますが、こちらの方が捉えどころのない気持ち悪さが出ていて好み。
そして、初期の代表曲「White Period」。
ピアノの美しいフレーズが高揚感を煽り、ストレートで疾走感のあるイントロは爽快。
この出だし部分と、サビのヴィジュアル系王道のメロディアスさは、嫌でもテンションがあがります。
全部が全部、ストレートでないところは、初期のラクリマらしいですね。
少しスケールアウトしていくような形で入る歌い出しや、間奏明けのメロの変拍子など、意外なところでマニアックさをしっかり出しているのがニクいです。
最後の最後は、今まで我慢していたものを爆発させるように、気持ちよく展開して盛り上がっていく。
ラストの余韻を残す歌い尻は、TAKAさんのしっかり伸びるハイトーンボイスだからこそ。
これを聴かずして、ラクリマを語れないと言っていいほどの名曲です。
とにかくクオリティが高く、どこをとって聴いても格好良い。
クラシカルな様式美だと思ったら、ポップな歌謡曲にいつの間にか変化しているような独特な構成は、簡単に真似はできない個性がありました。
メジャーになってからの彼らしか知らないと、意外なほどダークでマニアックに聴こえるかもしれませんが、これぞラクリマの真髄。
時代を作っただけのことはある、説得力のある一枚です。
<過去のLa’cryma Christiに関するレビュー>