Lhasa / La’cryma Christi | 安眠妨害水族館

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Lhasa/La’cryma Christi
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1. 未来航路(Album Mix)
2. 月の瞼
3. With-you(Album Mix)
4. SHY
5. Lhasa
6. Green
7. PSYCHO STALKER
8. Frozen Spring
9. 鳥になる日
10. Zambara

「未来航路」で大ブレイクしたラクリマクリスティのメジャー2ndアルバム。
前半5曲は「yours」、後半5曲は「ours」と題しており、それぞれがコンセプトアルバムのような構成になっています。

「yours」は、シングル「未来航路」、「With-you」や、表題曲である「Lhasa」など、とっつきやすくポップでキャッチーな楽曲を中心に収録。
ブレイクした彼らの一般的なイメージと、大きく違わない音楽性で固めてきました。

所謂、メジャーに進出して、ポップになったラクリマの象徴的な内容ではあるのだけれど、「月の瞼」は、それでも十分に名曲と言えるかなと個人的には。
ほどよい疾走感が、とてつもなく爽快。
ハイトーンが活きる「With-you」も、ポップ期のラクリマの中では良曲だと思いますし、これはこれで、悪くはないでしょう。

Dr.LEVINさん以外のメンバーが万遍なく作曲しており、バリエーションの面からもチャレンジしてきたという印象。
Ba.SHUSEさんのみ、「月の瞼」、「SHY」の2曲を手がけているのですが、「SHY」については、LEVINさんが作詞を担当しており、そういう意味では、メンバーが1曲ずつアイディアを持ち寄って完成させたと言っても過言ではないですね。
ややダークさを帯びた「Lhasa」で、「ours」へと繋げていくのも、締め方としてはベストではないかと。

一転して、「ours」サイドは、とてもマニアック。
ダークな雰囲気を強め、どっぷりと世界観を詰め込んできた。
技術的にも、かなり練りこまれており、J-POPの範疇に意図的にとどめたのであろう「yours」とは対照的に、複雑な展開を見せていきます。

相変わらずの異国感と、社会派な歌詞、一筋縄では行かないプログレ的な楽曲構成・・・
この辺りは、3rdアルバム「magic theatre」で、より深みへと探求していくことになるのだけれど、5曲だけでも、十分魅力を伝えることはできている。

「Zambara」が、とにかくインパクト絶大ですな。
J-POPの既成概念を打ち崩すような展開に加え、Vo.TAKAさんの限界を超えたハイトーンボイス、幻想的なメロディに、壮大な演奏。
すべてが規格外で、この1曲でアルバム作品と呼んでも納得できるくらいの充実感がある楽曲に仕上がっています。

2枚組のミニアルバムにしても良かったのではないかというほどに、前半と後半でギャップがあるため、アルバム全体で評価を受けていないのがもったいないところ。
コア層には、前半のキャッチー路線は物足りないし、ライト層には、後半のマニアックさは求められていないという両立の難しさがありました。
どちらもクオリティは高いし、ラクリマらしいのだけれども。

一枚の中で、バンドに対しての賛否両論を内包しているという観点からも、興味深い作品。
セールス的にも、ピーク期の作品となったこともあり、ラクリマを語るには欠かせないアイテムであることは、間違いありません。

<過去のLa’cryma Christiに関するレビュー>
magic theatre
Sculpture of Time
Siam’s Eye