イラスト：並行世界の機械人形化少女・加賀美アッコ１９

加賀美アッコは赤塚不二夫先生原作のアニメ『ひみつのアッコちゃん』に登場する女の子で、鏡の国の女王様からもらった「テクマクマヤコン」という呪文を唱えれば何にでも変身できる魔法のコンパクトを持っています。これは、コンパクトの力でロボットに変身したアッコが元の人間の姿に戻れなくなってしまうという設定のアナザーストーリーです。

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「おい、今度の日曜日に２人で一緒にバレエ見に行かないか？」
授業が終わって帰り支度をしているアッコのところにやって来た大将は、手にしたチケットらしき２枚の紙をひらひらさせながらこう言いました。
「…………大将、今、何て言ったの？何だか良く聞こえなかったんだけれど…もう１度言ってくれる？」
「まだ若いのに耳が遠いのかよ。この間俺の父ちゃんがお得意先からバレエのチケットを貰ってきて、２人分俺にくれたんだよ。俺たち結局ソフトボール大会以来デートらしいデートしてないし、この機会に一緒に行くのもいいかなと思って…」
「事情の説明を受けてやっと現実味が増してきたけれど、最初に聞いた時には耳を疑ったわよ。念のため聞くけれど、ボールじゃない方のバレエよね？」
「ボールじゃない方に決まってるだろ。アッコだってこの間自分がバレエの練習に行く時は見に行ってもいいって言ってたじゃんか」
「まあ、あれはわたしのレオタード姿が見たいならと思って言っただけで、大将がバレエに興味があると思って誘いをかけたわけじゃないわよ…まあ、チケットがあるっていうんなら一緒に観に行ってもいいけれど…演目は何なの？」
「白鳥の湖だ」
「あら、驚いた。定番中の定番じゃない…それならどっちかというと大将とじゃなくモコと２人で観に行きたいわね…大将、ものは相談なんだけれど、ここはおとなしくチケットを２枚とも私に譲って、大将には今度見返りにたこ焼きかなんか奢るってことでどうかしら。悪い話じゃないでしょ？」
「悪い話以外のなんなんだよ。俺がせっかくアッコのために手に入れたチケットなんだぜ。２人で一緒に行きたいにきまってるじゃんか」
「まあ、それはそうか…じゃあ一緒に行きましょうか…それはそうとそれって本当にオーソドックスな演目なんでしょうね？『白鳥の湖』に見せかけて『白島の湖』だったりしない？赤塚不二夫先生のギャグなんかによくあるじゃない」
「ちゃんとした白鳥の湖だよ。チケットを見ろよ。ほら、『メカ白鳥の湖』ってちゃんと書いてあるだろ」

「なるほど…じゃないわよ。何よ。その題名の上に付いてるメカっていうのは？」
「今度新しくできたばかりの新機軸のバレエ団の作品発表会らしいからな。なんでもオデット姫が魔法で白鳥になるんじゃなく、白鳥型ロボットに改造されるとか、そういうちょっとした改変個所があるらしいぜ」
「…………それ、ちょっとした改変って言わないわよ。原作ぶち壊しじゃないの」
「まあ、どっちみち白鳥に改造される話なんだから、魔法でもテクノロジーでもそんなに変わりないんじゃないの？」
「これだから男子は…」

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「あら、アッコちゃん。こっちの教室で出会うのは久しぶりね」

アッコがバレエ教室の更衣室で着替えをしていると、すでに練習用のレオタードに着替え終わっている２０代後半ぐらいの若い女性が声をかけてきました。アッコたちの学校の音楽教師をしている森山先生です。この森山ダンススクールは森山先生のお母さんが経営している教室なのです。

「こんにちは、森山先生。今日は先生が指導してくださるんですか？」

「まあね。でもただ働きよ。親子だからって甘えるんじゃないわよ…と言いたくはなるけれど、親の反対を押し切って音楽教師になった身としてはそんなに強くも出れないのよね。あんまり実家との折り合いが悪いと結婚のときとかにいろいろ差し支えるしね」

「えっ、森山先生、誰かと近く結婚する予定があるんですか？」

「ものの例えよ。まあ結婚する気がないわけじゃないけれど、まわりに特にいい人もいないしね」

「いるじゃないですか。ほら、佐藤先生とか、例えば佐藤先生とか、それから佐藤先生とか…」

「固有名詞が１つしか出てきてないわよ。まあ佐藤先生は悪い人じゃないけれど、そういう対象としては考えていないなあ…」

「そうですか？でも男の人の良さってちゃんとおつきあいしてみないとわからないと思うんですよね。外からいくら眺めていても、わかるのは表面的なことだけじゃないかしら。１度思い切ってつきあってみないと…」

「いやにませたこと言うじゃないの…そういえばアッコちゃん、最近赤塚くんとおつきあいしているそうじゃない？なんでも一緒にバレエを観に行く約束もしているとか…羨ましいわ。やっぱり小学生といえども今まさに恋のまっただ中にいる女の子の言葉はあなどれないわね」

「…………あのー、先生…私が大将とバレエ観に行く話どこで耳にしました？まだモコちゃんにも話してないのに…一体どこから…」

「最近『バレエ教室の更衣室は噂話の宝庫だわさ！』とか言いながらここに入りびたっているチカちゃんが言いふらしてまわってたわよ。この教室の生徒で知らない子はいないんじゃないかしら…」

「またチカちゃんか…一体どこで立ち聞きしてたのかしら…いや大将の口から漏れた可能性もあるか…」

「でも一緒にバレエが観に行けるボーイフレンドがいるなんていいじゃない。私の若い頃は…いや、今も十分過ぎるほど若いか…私の学生時代はそういうのを一緒に観にいける男友達はいなかったから…」

「あのー、大将にボーイフレンドなんて高級な単語を使わないでくれます…あんな奴にフレンドなんて言葉はもったいない…ボーイで十分…いや、ボーイも分不相応か…単なるボぐらいで…」

「何よ。その謎のカタカナ一文字は…何でもその発表会はあの尾出戸姫子さんが主役で出てくるそうじゃない。それを聞いて私もちょっぴり興味がわいちゃったわ。自分でチケット買って観に行こうかちょっと迷ってるのよ」

「えっ、森山先生、主役の人を知ってるんですか？」

「昔バレエ教室でご一緒していた事があったけれど、将来を嘱望された才能溢れる優秀な方だったのよ。交通事故で再起不能になったと噂に聞いていたのだけれど、立派に復活されていたのね。医学の進歩って偉大よね…」

『ひみつのアッコちゃん（Wikipedia）』

【今回描いた絵】（仮仕上げ）

【最近描いた絵】

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【ＡＩ絵】ビル街の機械化少女