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土方√
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最後のチームは圧勝で薄桜学園の勝利に終わった。
全体の挨拶が終わればギャラリーから拍手が起こった。
私も最後は千鶴ちゃんのお手伝いをしながら、皆に労いの言葉をかける。
沖田くんに試合前に斎藤くんと何を話していたのか聞けば、
この学校には全体的に少し間や踏み込みに癖があって、それを確認していたらしい。
それをメンバーに伝え、沖田くんはチームを勝利に導いた。
私の問いかけに飄々と応える姿は、流石、主将だなと納得する。
「千亜さん、ご褒美なんだけどさ」
「ああ、アイスね!忘れてないよ!暑いしね~、私も食べたい!シャリシャリくんとかどう?」
「僕はアイスより千亜さ…」
「あ、沖田くんソフトクリームの方が良かった?今コンビニにもあるよね?
あ、道の駅が近くにあったからそこだと美味しいの食べれそうじゃない?
土方さんに寄ってもらえるよう頼んでくるね!」
「… … まぁ、いいか」
「総司、着替えに行くぞ」
「はいはい」
先に着替えが終わっていた土方さんの元に行って、道の駅に寄りたいことを伝える。
「道の駅に寄るのはいいが、何か用事でもあるのか?」
「沖田くんに勝ったらアイスって約束してたんですよね。
あと皆にいい試合を見せてもらったし、労いみたいなもんです」
私の言葉を聞いた土方さんは眉を下げた。
「俺が出す」
「え。いいですよ、私が言い出したことだし。私がしたいんです」
「千亜」
土方さんと会話してれば投げられた声に振り返る。
そこには少し不機嫌そうな千景とその傍らには天霧先生がこちらに向かってくる。
「あ、千景。お疲れ様~!天霧先生もお疲れ様でした!
今回はうちが勝たせてもらったけど、どっちが勝ってもおかしくない試合だったよね!
私も久々に試合が見れてこんな凄い試合を沢山見れるなんて思わなかった。ありがとね。
西之邦の部員たちちゃんと労ってあげてなさいよ?」
「…ああ」
「天霧先生も千景を宜しくお願いします。ああ、部員たちにも頭下げたい気分だよ」
天霧先生に頭を下げて、西之邦の部員たちの方にも視線を向ける。
「そんなことはしなくていい」
「そう?こんな顧問でスミマセンって」
「くだらん。まぁ、いい」
私を見下ろしたあと、私の隣にいる土方さんに視線を移した。
「…土方、次は全国で会えるのを楽しみにしてるぞ」
「こっちもいい収穫があった。世話になったな」
「土方、お前には渡さんからな」
「…お前に言われる筋合いはねぇ」
薄い笑みを浮かべていた二人がいつの間にか睨み合っている。
二人の雰囲気を制するように天霧先生が口を開いた。
「ではそろそろ失礼します。風間、行きますよ」
ふぅと一つ溜め息を吐いて、千景は私と視線を絡ませる。
「千亜、またな」
「元気でね」
少し口角を上げた涼しげな顔で踵を返す。
その背中を見ていると土方さんの声が降りてきた。
「あの風間もお前だと調子が狂うみたいだな。お前も畳み掛けるように喋ってたしな」
「そうです?千景は小さい頃からあんな感じですよ?
私は久々に試合見させてもらって気分が高揚してるのかも」
私が笑えば土方さんは「そうか」と短く応えて口元に笑みを浮かべた。
「土方さん、全員用意出来たぜ」
かけられた左之の声に土方さんは頷く。
「よし、じゃあ帰るぞ」
その言葉に私は笑顔で応えた。
白熱した試合の余韻がまだ残るような道場を私たちはあとにした。