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設定無視、キャラ崩壊などご注意を。
それでもよろしければどうぞ。
#1 #2 #3
「高橋…?」
「え…?」
その姿を見て、息を飲んだ。
どうして今日はこうも会ってしまうんだろう。
私は高校の時、剣道部のマネージャーをしていた。
その時、副顧問だった土方先生。
高校卒業以来に会う土方先生はあの頃より少し疲れた感はあるけど…、変わっていない。
…この人は私の、他人には知られたくない過去を知っている。
もう記憶の片隅に追いやっていたあの時の光景が頭の中でフラッシュバックする。
「まぁ!土方先生!ご無沙汰しています!」
「お久しぶりです。高橋帰ってきてたのか?」
「はい…」
「先生、聞いてください。この子ったらリストラされちゃいましてね」
母の言葉に一変にあの光景から引き戻される。
「お母さん!!止めてよ、そんな話!」
「いいじゃない。それで久しぶりに一度こっちに戻ってきたら?って言って帰ってきてるんですよ」
「そうでしたか。今のご時世、会社もいつ倒産するかもわかったもんじゃねぇな」
母の言葉に応えながら、私に言葉をかける。
土方先生はいつも射抜くように人を見る。
あの頃と変わらない…。
「そう…、ですね」
私は気まずさから視線を逸らした。
「高橋、お前今から暇か?」
「へ?」
「ええ、暇なんですよ、この子」
「お母さん!」
「ちょっとお借りしてもいいですか?」
「ええ、どうぞ。千亜、先に帰ってるわね。じゃあ宜しくお願いしますね」
「え…ええ?!」
二人のやりとりに首を忙しなく動かした。
母は笑顔で私に手を振って帰っていく。
「心配するな。俺が家まで送ってやるよ」
「ちょ、先生?」
「行くぞ、高橋」
「えー…」
何でこんな展開になってるんだろ…。
大きな溜め息を零して、離れていく背中を追いかけた。
隣に並べば、「元気だったか?」と頭の上から声がおりてきた。
「元気は元気ですよ。リストラされちゃいましたけどね」
「いつ帰って来たんだ?」
「昨日です。帰ってきていきなり甥っ子姪っ子たちを海に連れていきましたけど」
「元気だな」
「違いますよ、妹に仕事で行けなくなったからって頼まれたんですよ」
「帰省で疲れてんのに行ったのか。相変わらずお人よしだな」
会話をしていけばさっきまでの光景は薄れていって。
『そういえば先生と部活以外だとこんな風に他愛もない話もしたな』なんて思い出した。
呆れつつ私を笑う先生を見上げながら、その笑顔を懐かしく思う私は自然と笑みが零れた。
そうだ。先生は普通にしている。
きっとあの出来事も忘れているはず。
今更何年も前の一生徒の出来事なんて覚えているわけがない。
1人納得した私はそっとその記憶に蓋をした。
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お待たせしました。
土方先生のご登場ですw