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それでもよろしければどうぞ。
#1
<原田視点>
海開きもしたということもあって、俺は彼女の君菊と泳ぎに来ていた。
地元っていうこともあり、生徒たちがいると色々冷やかされて面倒だと渋ったが、
君菊がどうしてもと言い、仕方なく地元の海水浴場に来ていた。
パラソルを立てて、君菊は身体を休めるようにうつ伏せになっている。
その身体のラインを目で追いながら、世間一般から見てもいい女だよなと思う。
生徒から告られることも少なからずある俺。
海に来たのは君菊としても女子生徒たちに牽制の意味もあるんだろうなと
彼女の心理裏を考えながらも、
海には入らずに上体を緩く起こしてぼんやりと眺めていた。
海風が頬を撫でていく。
この海に来たのは…高校の時以来か…。
そん時の彼女だった千亜と来たんだっか…。
無理やり新八も来てたな。
懐かしく思えば自然と零れる笑み。
あの頃は新八も教師になるなんざ思ってもなかったな。
…千亜は元気なのか?
××県で働いてるのは知ってるが、それ以外の風の噂すら入ってこねぇな。
俺の高校生活の半分以上は千亜と一緒にいたと言っても過言じゃねぇ。
千亜が××県の大学へと進み、俺は地元の大学に行った。
最初はまだ頻繁に連絡していたが、大学生活にお互い忙しくなり。
大学での最初の夏休み。
帰省していた千亜に呼び出され「やっぱり距離が辛い」という千亜の言葉を受け入れ、
俺達は別れた。
互いにはまだ好き合っていたはずだ。
ただその距離を埋めようと俺はあがくことはしなかった。
今思えば…あがいてりゃよかったと思う。
後悔は後から付いてくるもんだ。
そんなことを思っていれば千亜によく似た人物が視界に入る。
「?!」
上体をがばっと起こし、海からの光の反射で目を細める。
…千亜…。
その姿を認めれば目は釘付けになる。
距離はあるが見間違うこともない彼女がそこにいた。
勝手に胸がドクドクと音を立て始める。
帰ってきてんのか…?
「…は?」
思わず漏れた声。
子供…と一緒?
結婚…、したのか?
でもあんなガキ…ぃや、いてもおかしくはない歳…か。
楽しそうに子供達に手を引かれて、海からあがってくる千亜。
脳内が真っ白になるのを感じながらもその様にずっと目を奪われていた。
濡れた白のTシャツ。透けて見える黒のビキニが…妙にエロい。
なんつーか、高校の時より身体が…
「左之助?」
隣からかけられた声に身体がビクッと震えちまった。
まだうつ伏せ状態の君菊が下から俺を見上げる。
「どうかした?」
「ぃや、…生徒に似たやつがいてよ。そいつかと思って見てた」
「女子?」
「…なんだよ、気になんのか?」
「そんなんじゃないわよ」
焦る心をどうにか抑えながら淡々と君菊と話をしていく。
視線を戻せば、もう千亜の姿はなかった。
その後も君菊にばれないように視線で千亜を探すも見当たらない。
自分の行動を振り返り、思わず込み上げた苦笑い。
今更千亜とどうこうしたいわけじゃねえ。
千亜に旦那やガキがいるなら、俺だって…君菊がいる。
ただ、純粋に千亜と…。
そこまで考えて、はたと思いなおす。
…俺は千亜に何を求めてるんだ?
『久しぶりだな、元気か?』
そう言いたいだけだと…納得させる。
一つ、小さく息を吐いた。