薄桜鬼・現パロ【Love the Spiral】(土方・原田)#22 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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設定無視、キャラ崩壊などご注意を。


それでもよろしければどうぞ。





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<原田視点>



雪村に風呂が空いたと伝えられ、風呂に行こうと廊下を歩いていれば
休憩室から聞こえてきた男女の声。


千亜と土方さんだ。


途端にざわめく胸に俺自身が驚いた。


立ち止まって立ち聞きしてしまいそうになるのを足を進める。


ちらりと休憩室を覗けば自販機の明かりの中、浮かび上がる二人。

髪が濡れたままの千亜とそれを見つめる土方さん。


部員に見せるものではなく、愛しむようなその視線に俺が戸惑った。




「土方さん、先風呂もらうぜ?」

無意識にかけていた声。


「…ああ」と応えた土方さんと視線が絡む。


土方さん、何考えてんだ…。


ビクリと身体を震わせた千亜は、俺に視線を向けた。




「左之…。お疲れ様」


「ああ、お疲れさん。…とっとと早く寝ろよ、明日だって早いんだからな」


「わかった。お風呂いってらっしゃい」


「…ああ」

口元に笑みを浮かべながらそう言われれば、立ち去るしかない俺の立場。

一つ、息を吐いて腑に落ちない思考を連れて風呂へと足を向けた。






熱めのシャワーを頭から浴びながら、今日あった出来事を思い出していく。

部員達には正直悪いが、千亜のことが脳内を埋め尽くしていた。



久々の再会。


俺の勝手な誤解を戸惑いながらも丁寧に説明しようとする千亜。


久々に見たふわりとした柔らかい笑顔にあの頃の気持ちが甦りそうになる。



そしてさっきの土方さんの表情。


二人を見た途端込み上げた…、嫉妬という感情。




「元彼なのにな」

言葉と共に浮かんだ薄い笑い。


しかも俺は今、君菊がいるってのにな。


もし土方さんが千亜に対して、好意以上のものを抱いてるとしたら
俺は邪魔する立場でもない。


ましてや千亜が…、土方さんに魅かれてるとしたら尚更だ。


でも俺は…。



…。


思考が混乱する。




「くそっ」

零れた言葉。


シャワーを止める。


前髪をかき上げながら深く息を吐いた。








部屋に戻ろうと廊下を歩いていれば女子トイレから千亜がドライヤー片手に出てきた。


「あ、左之…」


「おう…、どうしたドライヤーなんて持って」


「部屋に戻ったらもう千鶴ちゃん寝ちゃってて。
煩いの悪いなと思ったからここで髪乾かしてたの」


「そうか…」



不意に訪れた沈黙。


千亜と視線を絡めるもその視線は外された。



「行くか」


「うん」

俺が歩き出せばそれに続くように歩く千亜。


俺はこの時間が少しでも長くなるようにゆっくりと歩いた。



「疲れたろ」


「あー…、うん。疲れてないって言えば嘘になるかな」


「顔に出てるぜ?」


「え!やだ、ダメだよね」

慌てたように動揺する千亜を不思議に思って見返せば、視線が絡む。


「だって部員の子達が一番疲れてるのに私が疲れた顔してちゃダメでしょ」


「そう…だな。お前は笑ってる顔がよく似合うよ」

そう言って無意識に伸びた手を千亜の頭にポンと乗せると千亜は目を丸くした。


「どうした?」


「な、何でもない」

明らかに頬を染めた千亜を見て、胸の内に温かいものが広がった。


付き合ってる時も俺の言葉にいちいち可愛い反応してたな。


緩みそうになる口元を手で隠して誤魔化す。



「明日からが忙しいからね。頑張るよ」


「無理すんなよ」


「左之もね」

互いの言葉に笑顔で応える。


そうこうしていれば辿りついた俺の部屋。



「じゃあな」


「うん…。おやすみ」


「おやすみ」


部屋に入って扉を閉めれば、千亜の立ち去る足音が耳に届く。


電気をつけようと手を伸ばせば、
暗闇の中、テーブルに置いておいたケータイの光が点滅していた。


胸に走る小さな痛み。



俺は深く、長く、息を吐いた。