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土方√
#1
<土方視点>
川に行っていた連中たちに罰として昼飯の準備の手伝いをするように言い、
総司には廊下を拭くように命令して、1人休憩室へと向かう。
ソファにドカリと身体を預け、ぼんやりと天井を見上げる。
一つ息を吐いて、煙草を取り出し火をつける。
思い切り吸い込んで、胸のうちで渦巻いてる想いを吐き出すかのように静かに長く煙を吐く。
あの時、部屋で書類を広げ、二学期が始まるまでにしなければいけないことや、
二学期以降の学校行事や研修日程について思案していた。
そうしていれば外から聞こえてきた賑やかな声。
『総司たちか』と思い、溜め息を吐く。
ペンを置き、窓から外の様子を覗おうと立ち上がった。
窓を開けた途端に耳に届いたのは高橋の悲鳴。
見れば総司が高橋を抱えて川の奥の方へと進んでいた。
舌打ちと同時に部屋を飛び出した。
総司のことだ、どうせ高橋を投げ込むつもりだ。
周りの連中が止めれるとは思わねぇ。
つっかけを履いて川に着いた頃には高橋はびしょ濡れで川の真ん中に突っ立っていた。
その姿は水に濡れただけだというのに妙にいやらしく、俺は胸の内で舌打ちした。
あの日の高橋がフラッシュバックする。
「何してんだ!!」
そう怒鳴り散らした俺は見ていた連中の恐怖に歪む顔を無視して、
川からあがってきた高橋の元へと足を進める。
「総司!てめぇ…!!」
笑う総司を後で覚えてろと睨みつけ、高橋の腕を引き寄せ抱き上げた。
こんな軽い身体だったのか。
高橋の軽さに内心驚いていると、高橋が軽く俺の胸を軽く叩く。
「ひっ!?土方さん!下ろして!!」
「てめぇは黙ってろ」
「は…はい…」
まだ雫が垂れる髪の間から俺を見上げる瞳が揺れている。
…そんな表情するんじゃねぇ。
邪念を払うように俺は一つ息を吐いて宿舎の中に入っていった。
落ちないようにかギュッと俺のシャツの胸元を握っている高橋。
『落とすわけねぇだろ』胸の内でその仕草に小さく笑い、
抱き上げる手に力を込め胸元に抱き寄せた。
連れて来たのは俺の部屋で。
本来なら高橋の部屋に連れて行くべきだろうが、
騒ぎを聞きつけた原田が高橋の元に来るかもしれねぇ。
女がいる身で高橋に魅かれ始めてる原田がこんな姿の高橋を放っておくはずがない。
ましてや元恋人同士だ。
だが…、何よりも俺がまだ高橋の傍にいて、世話をしてやりたかった。
高橋は入ってすぐの場所で呆気にとられるように突っ立って俺を見ていたが、
姿見を見てようやく自分の状況に気付いたらしい。
そんな姿をあのガキどもに見せるなんてな。
恥ずかしそうに胸元で腕を組むように隠す姿に口角があがる。
近づいてきた俺に顔を赤らめた表情を向ける高橋。
『…その表情はヤバイだろ』俺の表情を見られないように高橋にバスタオルを被せる。
勢いのまま、ガシガシと頭を拭いてやった。
「わっ!!」
「ったく。お前ってやつは…」
笑みを浮かべながら一つ息を吐く。
「あの!拭くぐらい自分で…っ」
「黙ってろ」
「はい…」
年が離れてるってのに、お前はどこまで俺を振り回すんだ。
ガキどもにまで嫉妬心が湧き上がったり。
お前の気遣いや笑顔で心が和いだり。
大した女だよ。
思わず口元に浮かんだ笑み。
自分の想いに気付かなかったわけじゃねぇ。
俺もこの想いに腹を据えた。