装備自作その13(89式小銃官品3点スリングレプリカ「極(きわみ)」) | ちょんまげインプの部屋

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これであなたも立派な変態。
今後ともどうぞよろしくっす。

(以前、ちょんまげのついたインプレッサに乗っていたのでこんなタイトルです)

もう何年も前に完成させ、結構な数を量産した陸上自衛隊の黒い官品3点スリングレプリカ(当時の記事はこちら)。

(2014年、当初版の試作品。今にして思えばよく完成・量産にこぎつけたものだ)

 

実物は、おそらく2005年あたりから納入される89式小銃に付属するようになったとか。

思えばそれから15年も経っていて、時代の流れはもうすでに「3点スリングなんて古臭い」という風潮です。

それでも陸自の訓練画像などを見ると、いまだにしっかりとこの黒い3点スリングが使われていて、まあおそらく現職の隊員さんからは評判は良くはないんだとは思いますが、それでも世界で唯一のレプ量産者としてはなんだか嬉しくなります。

 

 

で、わしは2014年から黒い3点を作ってきたわけですが、2018年にはそれまでの部材も底をつきかけ、注入した資金もどうにか回収できる見込みが立ったわけですが、実はそれで満足したわけではありませんでした。

最たるものは、前後のフック金具。

当初版はアルミ製のぶっといものでしたが、前部負い紐環につけるとちょっとキツく、そしてつけると被筒が外しにくく、またカチャカチャ音もちょっと違うのが気に入りませんでした。

そして少しでも似ているものをと探して二次ロットに採用したものが、亜鉛ダイカスト製の小さいもの。

(左が初期ロットアルミ、右が二次ロット亜鉛ダイカスト)

しかし亜鉛ダイカストはアルミよりは強度はあるものの、それでも鉄に比べれば圧倒的に強度が足りず、実銃訓練で使ってくださった現職さん、激しくサバゲでお使いになる方から2件ほど

「フックが割れた」

という報告をいただきました。

皆さんが大切にしているエアガンはもちろん本職さんの相棒である実銃を、フック金具のせいで壊すわけにはいきません。

フック金具はやはり鉄じゃなきゃダメだ!

そして形状も似せなきゃダメだ!

・・・とモンモンとしていた中、とあるお世話になっている方から

「うちの付き合いのある工場で作れるよ」

とご提案いただき、ついにフック金具もレプリカ製造となったのでした。

(記事はこちら。もちろんスンナリとはいきませんでしたが)

まあ実際には鋳鉄でなくステンレス製になったのですが、2018年の終盤から作り出した3点スリングレプは、このフック金具をつけての製作となったのでした。

 

とまあ、フック金具は大量に余ってしまった(大量でないと作ってくれないから)ものの、他の部材は概ね使いきり、物語はここで終わるはずでした。

しかし、わしが製作終了するとちらほら出てくるのです。

転売やさんが。

いや、わしは転売じたいは構わないのです。

わしだって以前に購入した装備などをオクに出すことも多いですし。

ですが、転売だけの目的でいくつも買っていって、まあそれも構わないのですが、低額で出品して結果的に競り合って高額になるならまだしも、最初から25,000円から!とかいう出品をされると、さすがに

「ヒトが苦労して作ったモノで商売しやがって」

という気持ちにもなります。

そしてそれが結構売れるんですよね、買う人がいるので・・・

それに「もう3点はないんですか???」という質問も毎度のようにいただくばかりで、これはまた3点を作って出回らせないとなあ・・・と、追加製作を決めたのでした。

資金?

ええ、ヨメさん銀行からの融資です・・・。

元本返済の他、家事育児という利息がついてます・・・。

 

 

【意外な難関1・ナイロン】

さて。

そうと決まったら、使い果たした肝心のナイロンを再度特注しなければいけません。

こんなことなら前回の特注のさいに多めに依頼しておけばよかったとは思うものの、それは結果論。

こういうものは出来上がってみてからでないと分からないため、大量に発注したはいいが結果はゴミが大量に!ということにもなりかねないのです。

でも今度は前回のところにまた依頼すれば大丈夫よね~フンフンフ~ン♪とタカをくくっていたらそれが㌧でもない!

前にお願いした業者さんに「また頼んます!」と言うと、

「すみません、前に対応した者は昨年定年退職しまして、その担当者が割と勝手にやっていたようですし、それに今年から体制を変えて小ロットの製造が難しくなったのです」

と・・・!!!

おたくんとこのHPの「小ロットからOK」っていう文句はウソかあ~!

しかしここで引き下がるともう後がありません(今なら他にもアテがあるのですが、この時はココしかありませんでした)。

何とかお願いしますと頭を下げまくり、それでもいやちょっと無理ですと断られ、いやウチももう他の部材に大金投入しているので引き下がれませんと迷惑な居直りをし(すみませんでした)、そのまま数週間経過したところで、「ちょうど製造ラインがちょっと空くので特別に…」ということで、どうにか滑り込みセーフ!

もっとも企業さんもラインを長期間空けておけないことから、即全額入金!前回よりも単価はUP!何かあった時には即返答!という条件でした。

※で、この際だからとついでにタン色のナイロンも少量依頼したのでした(タン版の記事はこちら)。

書くとこれだけですけど、ここにこぎつけるまでにどれだけ苦労したか・・・皆さんには分かるまい!

個人が企業に依頼する時の肩身の狭さは・・・!

ン十万円がゴミになるかどうかの不安と緊張は・・・!

 

ちなみにうちのレプリカを展示しておくと、触った現職さんが口々に

「実物のナイロンはもっと柔らかいね」

「実物はもっと硬いよ」

とおっしゃいます。

以前はニコニコしつつ内心は(どっちやねん)と思っていましたが、今は私の中ではすでに結論が出ています。

官品でも新品かそうでないか、あるいはどれだけ使われているか、によってナイロンの硬さがぜんぜん違います。

一般に新品に近い方が固く、だんだん柔らかくなっていきますが、しみ込んだ油や水、その他にも紫外線の当たり具合でもけっこう固さが違ってくるのです。

なので実際は「これより官品は柔らかいことも硬いこともある!」です。

ちなみに実物には難燃性などもあるのかもしれず、そういう意味ではうちのレプリカはあくまでレプリカでしかないのですね。

 

 

【意外な難関2・フック金具】

「フック金具はステンレスのが余ってたんでしょ?」

と思われた方、正解

しかし、ステンレスフックは錆びないのはいいものの、やはり質感がちょっと官品と違うのです。

それは表面処理のせいでもあり、実はステンレスってメッキを選ぶようで(メッキ屋さんにも得手不得手はあるようですが)、うちが依頼したところは下地に銅色を乗せないと指定する色味に近づかないのでした。

下地に銅色がのると、擦れた時に見えるのが銅色(もっと削れれば銀色になりますが、なかなかそこまで削れない)で、そこがなんかちょっと…。

やはり削れた時に銀色になってくれなきゃ。

しかしそれが可能なのが、鋳鉄なのでした(繰り返しますが、メッキやさんによるのかも)。

そしてステンレス版ではピンのカシメの方法が官品と違く、そこも不満な点。

そこで、鋳鉄にしてメッキも変え、さらにピンのカシメも官品に近づけよう・・・ということで、前回お願いした工場にフック本体の製造を依頼し、またその工場ではうまくメッキができないため、一度ワシの所に納品してもらい、そこから良いメッキをしてくれるところを探して依頼を・・・という、手間と金の余計にかかることをすることになったのでした。

そして完成したのがこちら。

(上がステンレス版、下が鉄版)

どこが違うの?と思われるかもしれませんが、型が同じなので形は変わりませんが、色味と質感が違うのです。

そして、鋳鉄版は何もせず屋外に放置しておくと錆びます。

定期的にオイルで拭うとよいでしょう。

 

 

【まさかの“自在スライド”】

本当は、ここで話が終わるところでした。

が、とある業者さんから「何か特注するものがあればウチでいかがです?」と打診が。

そうは言ってもこれは無理っしょ・・・と試しに自在スライドの鋳造を依頼してみると、なんとOKと!

実は自在スライドも、自分の中では満足していなかったのです。

前作は鉄板プレスなうえ(寸法だけ合わせた)、表面処理(パーカーライジング)がちょっと色味が明るすぎたのでした。

なのでコイツも新たに依頼し・・・けっこう長い期間のやりとりの末、ドドーン!

何の目的か分からない側面のヘアライン加工もバッチリ。

ちょっと側面の色味が赤っぽくなってしまいましたが、これは仕方ありません。

気になる方は金属用のラッカーをスプレーしてみてくだされ。

これ、すごくないっすか?

すごい!と心底思ってくれた方、一緒に飲みましょう!

でもこういうのって、いざ作ってしまうと「あるのが当たり前」になってしまい、ぜんぜん有難がられないんですよね・・・。

 

 

【地味な工夫】

スリングの後端は、このように斜めにカットされています。

(↓当初版レプ)

実はこれ、自分ではいくら工夫してもうまくいかずに悩んでいた部分だったのでした。

実物は当然、魔法かなにかでうまくヒートカットしてるんでしょうけど、自分でヒートカッター(ホットナイフ)を買って試してもどうにもうまくいきません。

それで仕方なく、いったんハサミで切断し、それを熱したフライパンに押し付けて断面を溶かすという方法を採ったのでした(フライパンは当然、1個ダメにしてコレ専用にしました)。

しかしこれは相当に熱く、遮熱グローブをしていても長時間の作業はできないこと(何度も指をやけどした)、有毒な臭気がすごいことから家族にも不評で、何年も悩みつつ作業していたのです。

おまけにこの方法だと断面が固くなりすぎ、使用により曲げの力が加わると断面が割れてヒビが入ってしまうこともありました。

それを改善すべく、改めてよくよくホットナイフを選んで試して、ようやく納得できるレベルになったのでした。

画像ではうまく表現できませんが・・・。

思えば数年前、最初に買ったホットナイフはパワーが弱すぎたのでした。

かといって強くしすぎてもダメで、コツはいっぺんに切ろうとせず、何回かに分けて切ること。

いっぺんに切れるほどの熱量を加えると、溶けてぐにゃぐにゃになったまま固まってしまうし、弱すぎると一向に切れません。

で、うまく切ると、ちゃんと断面は固まってくれるのに、ゴムのような弾力が生まれ、割れにくくなるのです。

そして官品の断面と比べると同じ質感!

地味だけどよくやったわし!

 

 

【実は改良型が出たらしい】

そんなわけでようやく部品も揃うことが確定し、いよいよ新たに量産か?と思っていたところで、現職さんから意外な情報が。

それは、「部隊に改良型の3点スリングが出回るようになった」というもので、まさか自分が改良版を作ろうとした時に何か改変!?また部品の特注必要!?・・・と内心焦っていたら、結果はこういうことでした。

伸長バックルの前の縫製部分を、縫製でなくコキ止めにしただけ。

内心ほっとしつつがっくり。

だってカッコワルイんだもん。

でも、冬期の屋外ではこのバックルのツメの割れが多発し、しかも割れるとナイロンを切って再縫製(糸をほどいて同じ位置で再縫製するとナイロンが千切れやすくなる)する必要があり、かなり手間がかかります。

その点これならバックルのメス側だけ替えればよく、理にかなってはいます。

しかも今はバックル単体、部品だけで発注できるようになったそうで、これからはこの「改」が主流になってくるのでしょうか・・・?

なんかイヤだなあ。

 

 

というわけで完成した、陸上自衛隊官品3点スリングレプリカ―極(きわみ)―、自分で言うのもナンですが、最高なレプリカになりました!

これ以上の進化はない!(・・・と思いたい)

 

 

 

 

【装備自作量産記事】

※思えばレプ作りすぎでは・・・?

・89負い紐

・旧式無線機負い紐

・89三点スリング

・9mm機関けん銃負い紐

・64負い紐

・ミニミ負い紐

・00式防護マスクケース改

・20式スリング

・89負い紐「フック金具」

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・海自アーマー肩パッド、警棒ホルスター

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・2型顎紐装面エクステ

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・グリースガン負い紐

・89式3点スリング最終ver.

・88式鉄帽ハンモック

・V8覆い用オモリ