今年に入って、ようやくかなりの苦心をして完成させた「88式鉄帽・初期型あご紐レプリカ」。
(↓陸自/空自ver.)
(↓海自ver.)
(たけのこうちさんのクチビルGETだぜ!)
この顎紐に使われているポリエステルのテープは、市場にはまず出回っていない18mm幅という特殊なサイズ。
まあサイズだけでなく色味や織りも自衛隊の仕様書の通りの特注なので市販されていないのですが、特注というのは少量だととんでもなく高くつくため、どうしても多めに発注する必要があります。
多めというのは、50m1ロールとして、2ロールとか3ロールではなく、その10倍くらい。
しかしもともとごく一部の熱狂的な自衛隊マニア層しか需要のない顎紐なんてたいした量は必要ではなく、いきおい紐は余りまくることになります。
となると、この紐を何かに活用できないか?という所に行き着くわけですが、その回答は一つ。
それが、88式鉄帽2型の4点式顎紐。
(ウィキペディアから画像拝借)
1988年に採用された88式鉄帽は、2014年になって2型への更新が始まりました。
それまでより帽体が若干軽量化されたのは外観では見分けがつかないのですが、大きく変わったのが顎紐。
それまでの2点(プラス、うなじ当て)式で脱着こそ楽だったものの安定性に難のあった顎紐が、4点式の安定性の高いものになりました。
余談ですが、鉄帽が2型に更新された後も空挺用はなぜか従来のままでしたが、2022年から2型顎紐と同程度のものに更新されるそうです。
また2型顎紐も全部隊になかなか行き渡たらず、そのため当初型の帽体のまま顎紐・内装に付け替える「1.5型」への更新が進んでいます。
つまり、顎紐だけ見て「2型か」と判断するのは正しくないわけで・・・(^^;
*各社のレプリカ
さて、2型顎紐のレプはすでに存在しています。
先鞭をつけたのは、88式鉄帽レプリカで知られるMDNコーポレーション。
こちらが日本で初めて2型テッパチレプを量産して販売しましたが、そこにつけられた顎紐が2型「風」でした。
なぜ2型「風」かというと、実物採寸をしたものの、実物ソックリにしてしまうとそこはPXにも卸す品を販売している企業の悲しさで、某〇省などからお叱りがきてしまうのです。
なので、実物を参考にかなりデフォルメして簡略化し、値段も下げて製作したそうなのでした。
で、それを丸パクリしたのが、おそらく近年は安さでかなりのシェアを占めているであろうシェンケル製のレプリカ。
(↓コレ)
個人的にはフチの形状がイマイチなので却下ですが・・・。
実物を参考にしたうえでデフォルメしたモノと、それをただコピーしたモノでは、似たような見た目でも重みが全く異なります。
・・・というわけで、「官品そっくりレプリカ」と言えるレプリカはいまだ存在しません。
しかしもっとも困難な(だと思っていた)ポリエステル紐は、すでに手元にあります。
それなら簡単じゃん!と思って試作検討を始めたのが昨年秋のことだったのですが、世の中はそんなに甘くなかったのでした・・・(゚Д゚;)
*ワシのレプリカ(各パーツ)
2型顎紐(※ハンモックは除く)を構成するパーツは、特殊な18mm幅ポリエステル紐を特注したワシにとっては、入手はそれほど困難ではありません。
ナイロンテープ+ハトメはすでに製作した初期型顎紐レプのものが使えますし、20mm幅のプラカンやプラアジャスターはYKK製の市販品。
面ファスナーも入手できます。
なあんだ・・・と思ったところで最初にして最大の難関が。
それは、特殊なサイドリリースバックル。
単なる小さいバックルじゃんと思いきや、オプスコアの顎紐のような仕組みの、かなり変テコリンな形状なのです。
(販売ページから画像拝借)
というか某●省もおそらくオプスコアの顎紐の構造をそのままパク・・・いやオマージュして設計したのでしょう。
しかし他の樹脂部品が全部YKK製品なんだし、じっくり探せば同じバックルが見つかるしょ・・・と思って探し始めて数か月、一向にヒットしません。
思い余って中の人に刻印を読んでもらって品番などを調べてもらい、とある代理店を通してメーカー様に卸してもらえないか打診してもらったところ、
「このバックルは特定顧客アイテムのため不可」
との有難い回答。
こんにゃろー!(゚Д゚;)
ああそうかい分ったよ!(゚Д゚;)
というわけで、最初に考えたのがオプスコアの顎紐のバックルを入手すること。
しかしそれすら全く見つからない。
そのうえオプスコアの顎紐は15~16mm幅っぽく、もし入手したとしても自衛隊仕様の18mm幅の紐だと入らない。
仕方なく、他の小さ目な市販のバックルで代用を試みました。
遠目からだとソックリに見えなくもないのですが、それでも官品に比べるとサイズがかなり大きく、そのせいで試作してもかなり左右の長さがズレてしまいます。
なのでもっと小さいバックルを探して試作してみたのですが・・・、
それでもやはりまだ大きく、これで作るとどうしても左右の長さが合いません。
それに、他のパーツが官品同様のものを使ってるのに、ココだけ違うというのが納得できません(←あほ)
というわけで、いろいろなツテを当たりまくり、かなりの時間と費用も割いてどうにか入手したのがコレ。
いやあ官品にものすごい酷似してますね。
もちろん官品などではありません。
官品と並べてみると細かい部分の形状が異なっていますが、使用感などは同一。
実物は意外なほど外す時の力が軽く済むのですが、MDNやシェンケルなどの代替バックルはここが固く、それが実物同様の軽さなのはちょっと感動モノ。
材質も官品と同じポリアセタール。
しかしこのバックル、他には使いようもない気がするんですけど、こんなの作ってる人がいるんですね~(笑)
高くついたけど仕方ない。
普通のバックル(↓)はこんな感じにしかならないのですが、
コイツ(↓)はバックルの裏に紐を通す穴が2か所あり、紐をこのように縫い付けられるのです。
ふう・・・手ごわい敵だった!
*構造や寸法
と、部品はどうにかなりました。
しかし、ここで次の試練が待っていたのでした。
それは、各部の紐の寸法。
「仕様書があるんでしょ?」
とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
しかしワシが入手した88式の2型の仕様書は、細かい寸法がわざとなのかどうか、あちこち省略されているのです。
こんなの、絶対に現物サンプルを参考にしなきゃ複製できない。
しかしそこはトライ&エラーを繰り返し、中の方々にも助言を求め、そして難解な仕様書を独自解釈で解読し、どうにか10個めくらいの試作品で例のバックルも入手出来て寸法がOKとなりました。
(↓代用バックルで作った最初の試作品)
まあこれでも概ねいいものの、なんかやはりバックルが違うと違和感ありまくり。
しかしソックリバックルが入手できるまでの間に、他の部分の製法を確立していきました。
かなり苦労し困惑したのがこの部分。
ここが実に複雑に重なり合っていて、おまけにサイズ合わせがかなりシビア・・・。
(製作を続けるうち、サイズ合わせが楽な方法を確立しました)
ちなみに意外な伏兵が「うなじ当て」。
ここはナイロン生地にクッションが袋状に縫い付けられているのですが、ワシは布地が苦手なうえにけっこう手間がかかる。
なのでナイロンテープにメッシュ生地を縫い付けるという簡易手法で妥協。
その他細かい部分がいろいろあり、それぞれ苦労しました。
例えばミシンの「押さえ」をコレ専用に買い足したりと・・・
*それら苦労の結晶…
というわけで、部品の調達と並行して製作法の確立と製作の手間という難題を克服し、完成したのがこちら!
※同時に海バージョンも。
当然、自分でも被ってみましたが、バックルが変わっただけなのに左右のズレが少なくなり(官品も左右がズレてる)、長さ調節をすると被り心地がいい!
おまけにズレにくく、これは例えばファスガンの時などにヘルメットにセンサーを取り付けてもグラグラしません。
ちなみにこの2型、「そもそも左右で長さが違う」せいで、装着すると左右でズレが生じやすい。
なんでこんな設計にしたのか謎です。
(追記)
内装は、MDNのものをお持ちの方はソレを、シェンケルのものをお持ちの方はソレを流用すればいいですが、初期型鉄帽の内装でもこの2型顎紐レプを取り付けることはできます。
まずはハンモックの6か所の取り付け穴のうち、先に前と後ろの2か所のネジをつけておきます。
あご紐のハトメ穴を、ハンモックと鉄帽の間に挟むようにして、
あとはワッシャをかませて丸ナットで締めればOK。
ちなみに2型顎紐の丸ナットは、初期型顎紐のソレと同じような形をしていますが、実は長さが違います(初期型顎紐の全長=5mm、2型顎紐の全長=10mm)
とはいえ形状は同じようなものなので、コレで代用可能。
またワッシャも官品同一サイズの市販品があるので、それで対処可能です。
※帽体が厚いレプでしかもネジが短い場合、この当初型ナットレプだとネジがはまりません。
その場合は長めのネジ(M4)を用意しましょう。
【装備自作量産記事】
※思えばレプ作りすぎでは・・・?