【内装がない!】
小銃の「負い紐(スリング)」に続いてせっせと鉄帽の「あご紐」のレプリカを作ったワシですが・・・それはもともと88式鉄帽の魅力にもはまっていたからで、とはいえ市場にはリアルな官品あご紐のレプリカが存在せず、そんなわけでワシがレプを量産するハメになったというわけです。
しかしそれでもまだ足りないレプリカがありました。
それは、鉄帽の内装(ハンモック)。
官品のハンモックはコレです。
(いずれも当初型)
今は88式鉄帽のレプリカはいろいろありますが、本当に官品仕様で再現されたレプリカが、まあないことはないのですが、あるとしても鉄帽とのセットでしかなく、単体で商品化されてはいませんでした。
(キャロッパチの内装。単品販売は無し)
なので買った帽体についていた内装に不満があったとしてもガマンするしかなく、帽体だけを買ったら内装が無くて困るしかありません。
ワシは通算20個以上の各種鉄帽レプを所有してきましたが、やはり内装にはちょくちょく困っていて、過去にオクで落札しておいた内装レプを移植したり、あとはL.E.Mの内装をつけたりしていました。
(L.E.Mの内装。安定感は良い)
でもどうせなら、官品っぽい内装がいい。
ああもう困るなあ!
*ひとまず試作をしてみるも…
そういうわけで、実は顎紐レプリカの量産を始める数年前に、すでに内装レプリカの試作をしていたのでした。
「あんなの30mm幅のアクリルテープとそれっぽい紐と面ファスナーあればイケるっしょ~」
などと軽く考えていたのですが、すぐに頓挫。
それは、その時はまだ仕様書を入手しておらず、そして官品のサンプルも持っていなかったから。
各種レプ帽体についてくるレプリカ内装は、当然ながら造りも素材も異なり、さらに帽体の大きさも厚みもマチマチなので、従って内装のサイズもまちまち。
つまり、サンプルにできるものがない!
どうにか自分の持っている帽体レプリカから採寸しても、結局どこかが破綻してしまい、ゴミみたいなものしかできませんでした。
*仕様書を入手するも…
それから数年。
ご存じの通りあご紐レプを作ることになり、ようやく仕様書を入手。
当初、熱意はあご紐レプにしか向きませんでしたが、当初版あご紐に続いて2型顎紐を、その次に空挺/V8顎紐を作ろうとした際、
「そうだ。内装も作ってみたら・・・?」
と思い至ります。
そこで、顎紐と同じポリエステルの原糸で、29mm幅×1.4mm厚のテープも同時に特注したのでした。
が、人生とは難しいもので、あご紐レプ製作やスリングレプの改良に忙しく、内装にはなかなか目が向きません。
それでも合間を縫って内装+当初型の汗取りバンドの試作をしたりしていましたが、汗取りバンドが素材選びに難航し、断念。
続いて2型用のクッションパッドの試作もしましたが、すぐにPX品のクッションパッドが販売されていることを知って熱意がしぼみ、試作だけで中止。
それならハンモックだけでも作るか・・・と試作を続けたものの、実はソレこそ困難な相手だったのでした。
なぜなら、内装は鉄帽の内側につけるものだから。
どういうことかと言うと、帽体そのものは、外側はそれなりに大きさが似ていますが、レプ製品によって厚みが異なるのです。
厚みが異なると、外側は同じ中号だとしても、内側の直径は違ってきます。
おまけに製品によって全体のサイズ自体ちょっと違うこともあるので、もし内装レプを作るとしても、どの製品にサイズを合わせればいいか分からない・・・という事態になるのでした。
それどころか、同じメーカーの同じ製品でも、個体によってネジ穴の位置がちょっとズレていることすらあります。
これが、「内装が単体販売されていない」大きな理由です。
「それならもう自分用と割り切って、手持ちの帽体のサイズに合わせてワンオフ製作にしようか」
と思ったものの、次はネジ穴の「穴あけ」で躓きます。
官品の内装に開けられたネジ穴は、たて5mm×よこ10mmの小判型の穴。
おまけに機械で穴あけと同時に熱処理がされていて、穴がほつれないようになっているのです。
これを試行錯誤したものの、どうあがいても真似できません。
ヒートカッター(はんだゴテみたいなやつ)で開けようとしても、融けた部分が変に固まってしまったり、熱を加えないとほつれまくったり。
それ以前に、内装の本体自体うまくつくることができず、ワシとしては割合簡単に諦めてしまったのでした。
*オファーで心動く
それから2年。
他のレプ製作や開発に追われ、内装のことはすっかり忘れていました。
そんな時、とあるお世話になっている方から、
「内装作れませんか?」
というオファーが。
普通は製作依頼は受けていないのですが(商売ではなく自分で作りたいものを作るだけだから)、お世話になっている方からの打診という他に、もうひとつ「ピキーン」と脳裏に閃くものが。
それは、たかだか2年ですが、その間に自分の技術が向上しているのを感じていたからです、
特に新しい技術を身に着けたわけではないのですが、新しいレプをいくつも作るだけでも、その経験が技量の向上を後押ししているのでしょう。
そんなわけで今ならうまくできるかもしれない・・・と、自分の技量を確認したくなり、内装の製作に改めて取り掛かったのでした。
【再始動】
*対象帽体の選定
ワシが作るのは官品レプリカです。
となると、基準は官品であり、それなら官品の仕様書に従えばいい。
逆にそう割り切ったら楽になりました。
それに官品サイズで作れば、ワシが愛してやまない「青森産・ヤフ個人パチ」の強度UPバージョン2にもだいたい合います。
その他のレプ帽体はこの際無視することにしました。
*部材
もし今回、イチからレプ製作するとしたら死ぬ思いをしたかと思いますが、すでに顎紐レプ用の資材を特注していたワシにとっては、他の特注品もなくて済んで助かりました。
もっとも、顎紐レプではなんども臨死体験をしたのですが…。
(テープ)
テープは29mm幅×1.4mm厚のポリエステル。
陸用の緑と海用の灰色を用意しました。
ちなみに内装テープの素材は、官品はポリエステルとナイロンの混紡(うなじ当ても同じ)でしたが、新たな素材にすると手間と出費がとんでもないことになるため、ポリエステルとしました。
官品の内装はあご紐とは異なる「三重平織り」という織り方なのですが、そこまですることもないだろう・・・と、顎紐と同じ「二重平織り」のままとしました。
今にして思えば、仕様を指定すれば対応してくれる業者さんだったのに、「どうせ被ってしまえば見えないから」とこだわらなかったのを後悔しています。
官品のテープは少しふっくら柔らかい感触で、また色あせすると顎紐とはちょっと違う感じになるのですが、まあ許容範囲でしょう。
※あとで調べてみると、テープの厚みは当初の仕様書では1.4mmでしたが、途中から1.5mmとなったようで、2型は2mm?と厚くなっているようです。本当かどうかは分かりませんが・・・
(面ファスナー)
面ファスナーは25mm幅、当初型の初期~中期版は長さ2.5cmとなっていたようですが、後期版から5cmになったようです。
(当初版の初期版の実物ハンモックの面ファスナーは短い)
2型は仕様書も実物も長さ5cmで、サイズは当初型も2型も共通。
なので5cmにしました。
(リング締め紐)
深さ調節の丸紐は、官品よりちょっと細身のポリエステル打ち紐。
とはいえ仕様書では「3mmを標準とする」となっているので、ロットや工場によって違うこともあり、今回使った奴でもそう違いはないです。
(ハトメ)
ハトメは、これまでさんざん作ってきたあごひもレプに使っていたのもの。
いろんなレプを製作するにあたって、同じ部材を使い回せるのは有難い話です。
(名札)
PX.JOSHIMAさんから頂いた白いもの。
ちなみに当初型は白ですが2型は薄緑です。
なので正確には、これは当初版の内装レプリカということになりそうです。
*いざ製作
もう2年も寝かせた素材を切り出し、仕様書通りに組んで縫っていくだけ・・・でしたが、どういう順序で縫製していけばいいのか確立するのに一苦労。
なぜかというと、ワンオフで1個だけ作るわけでなく、ワシの場合は量産するからで、量産に適した縫製方法を決めなければならないからです。
そして、いざワッカに組んでみるとなんか形がイビツ。
おまけに帽体に仮組しても変で、合いません。
でもそれは、ワシのマーキングが問題だということに気づきました。
縫製マーキングが1か所1mmズレると、最後は1cm以上ものズレになってしまうからです。
あとは平面と立体の違いによるズレだったりなんだり。
しかしそれは、仕様書をよ~くチェックして理解度を深め、あとはマーキングの方法を変えることでクリア。
問題は、当初から悩んでいた穴あけ。
穴の位置は、帽体のことは抜きにして、おおよそ仕様書通りにしました。
そうすれば、ちゃんとした帽体なら穴の位置がおおよそ合うはずだからです。
そして小判型の形状を諦め、丸にしました。
開け方は、上部顎紐のハトメ穴と同じ、切れ味最高の穴あけを使用。
完全に熱を入れると切り口がゴワゴワになってしまうので、軽く炙る程度にしました。
【それでこうなった】
いくつか試作品を作っては捨て、ようやく縫製方法も確立しサイズも合うことになたのがコレ。
青森産レプ・強度UPver2にもちゃんとつきました。
海自版も作りました。
ついでにサイズのハンコも作ってみました。
ちなみにこのハンモックは、鉄帽の大きさ(小・中・大・特大)に従って同じサイズのものが用意されるだけなので、アタマ周りのサイズ調整ができません。
その代わり、被った際の深さの調整ができます。
この「調整部」の位置が面ファスナーで変えられるようになっていて、それで「リング締め紐」を絞ったり緩めたりできるのですが、それによって被った際の深さを調整できるのです(調整してない人が多いみたいです)
さて。
これにPX品(通販で買えた)の2型用パッド(ココで売ってました)、あとワシ製2型顎紐レプリカと2型ナットレプリカを組みあわせ、共済覆い(ターナーさんがV8仕様に改造。ありがとうございます)を被せたのがコレ。
いやあ、いい!
全部レプなのに、見た目はもう官品です。
おまけに2型のクッションパッド式はアタマにピッタリというかちょっとキツめにフィットし、顎紐もサイズ調整するとぜんぜんズレない!
我ながら、いいモノを作りました・・・。
忘れていた記憶を呼び覚ましてくださった●●さん、ありがとうございました!
そして現役自体の嫌な(クサイ)記憶まで呼び覚ましてしまったお兄さん方、どうもスミマセン!
…え?汗取りバンド?
知らない子ですね・・・
※追記[実物の仕様の変遷](自分調べ)
(寸法)
・当初型、2型ともに同じ
(メス面ファスナー)
・当初型の初期版~中期版→2.5cm
・当初型の後期版~2型→5cm
(名札)
・当初型の初期版→白、裏側に貼り付け(見えない側)
・当初型の中期~後期版→白、表側に貼り付け
・2型→薄緑、表側に貼り付け
【装備自作量産記事】
※思えばレプ作りすぎでは・・・?