装備自作(その10)陸上自衛隊20式小銃官品負い紐レプリカ? | ちょんまげインプの部屋

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いらっしゃいませ、変態(いろんな意味で)の部屋へ。
これであなたも立派な変態。
今後ともどうぞよろしくっす。

(以前、ちょんまげのついたインプレッサに乗っていたのでこんなタイトルです)

(2018年6月にUPした記事を大幅に加筆修正しました)
 

 

一体どんな仕様になるのか、新造かライセンス生産か、そしていつ出るのか…と界隈では噂でもちきりの、89式の後継となる陸自の新小銃。
※豊和製が絶対に優れているというわけでもないと思いますが、小銃は国産であるべきだとは思いますし、うれしいです。
図面を見ると、見た目はSCARのような、そしていろいろ後付けできそうな今風の小銃のように見えますが、かといってそんなに先進的にも見えないところがまた個人的に好き。

10年前に登場したと言われても「そうか」と思えてしまいます。
しかしワシとしては、小銃本体より気になるものが一つ。
はい、負い紐です。
一体どんな仕様になるのか、楽しみやら不安やら。

・・・が、実は特許情報に、こんな仕様書が出てました。

しかしこれだけでは構造がサッパリわかりません。

ただ、金具類の形状から、従来の89の3点スリングと同じ素材を使用しているということくらいは理解できました。

 

もともとはこんな解説図がありまして・・・

これだけ見ると、QDアダプターフックや89と同じ伸長バックルを使う、不思議なスリングです。

これだけではどんなスリングなのか分かりません。

しかし最近ツイッターで回っている図面は、構造が分かりやすいもので参考になります。

これを見て、「ははん、これなら自分でも作れそうだな」と、試しに手持ちの部材で作ってみることに。
以前は上からの図面だけでしたが、新たな図面で、左右をつなげているカン金具1個以外は、89官品3点スリングの素材をそのまま流用していることが確定となりました。
というわけで、瞬時に完成。

取り回しさえ理解してしまえば、実に簡単。
官品3点スリングよりはるかに製法も構造も簡単です。
25mm幅の黒ナイロンも、贅沢に2つも使用している自在スライドも、珍しく民生部品であるYKKのプラバックルも、そして両端のフック金具も、全て3点スリング用で入手していて余ったもの。
唯一、前後を連結しているカン金具のみ、新たに市販品を購入しました。

長さは、図面からおおよそこのくらいだろうと推定しています。

さて。
SCARは持ってないので、とりあえず89につけてみました。
ホーワ案の新小銃も、89同様に銃身と銃床に負い紐環があるので、使用感は同じようなものでしょう。

でもこれだけ見ても、ただの負い紐でしかありません。
そんなわけないよなあと、自分なりにいろいろ考えてみます。

…ようやくわかりました。
もっとも意味不明だった、このループ。

仕様書には「長さ調整具」とありますが、ほとんど「はあ?あほなの?」と思ってしまうシロモノ。
しかしこれは、もともとこのように短くして体にかけておき、


射撃の際には

この部分を引いて、スリングを伸ばして構えられるようにするもののようです。
この謎のループは、ペタンコでも伸長できます。

というか、あんな丸いワッカのままだと、ブラブラして非常に邪魔。
図解のために、仕組みを分かりやすく丸く表示したのでしょうか?

では、真ん中のカン金具よりも後方はどうなのかと言うと、単に身体にかける際のスリングの長さを予め調節するだけのもの。
当然ですが防弾チョッキ着用の際には長めに、そうでない場合は短めにという具合です。

自在スライドなんて妙ちくりんなものでなく、単なるコキ金具でも用は足りますが、官品3点スリング用のコキ金具は徐々にずれてしまうので、横方向にテンションがかかっていると絶対に緩まないこの自在スライドがいいのかもしれません。
また、フック金具の直前には開放用バックルもあるので、まんいち緊急に銃を手放さなければならない時など、片手でつまんでリリースできます。
ただ、このリリースバックルは、銃身側のフック金具の直後にもってきたほうが使い勝手が良さそうにも思えます。
ですが「うっかりつまんでしまって外れた」となる可能性もあるので、銃身側を避けたのでしょう。
そしてもちろん、2点式なので肩にかけたり背中に回したりもできるため、陸自の運用としては悪くないです。

ただ、「伸長式でエマージェンシーリリースバックル付きのツーポイントスリング」といえば聞こえがいいのですが、正直いって、なんかなあ。
いろいろ工夫され、3点スリングよりも分かりやすくなってはいるものの、それなら何もコイツでなくてもいいわけで・・・
というわけで、実際にコイツが採用されるという確証もなく、ワシのレプ製作もそのままお蔵入りとなったのでした。


(※2021年8月に追加)
【まさかのほぼ正解!?】

昨年(2020年)に正式採用&お披露目となった20式小銃。
※本来なら17式となるはずだったもののいろいろ問題が生じて改修に時間がかかり、20式となった…という話も聞きます。
お披露目の時にはバイポッド内蔵フォアグリップやスコープ、擲弾発射器や専用銃剣などが一緒に展示されていましたが、わし的に足りないものがひとつ。
はい、負い紐です。
なんで披露してくれないんだよ~!
一番最初にレプリカ量産してやろうと思ってるのに~!

そう、20式小銃のスリングレプリカ計画は、もう2年もストップしているのです。

なぜかと言うと、一向に追加情報が得られなかったから。
しかし2021年も明け、いよいよ今年から20式が部隊配備かあと思っている中で、とうとう複数の“中の人”から重要な情報が。
なんと、新小銃に付属するスリングは、あの図面の通りだったというのです。
まさかそんなことが…とは思ったものの、新たにGETした資料で合点がいきました。
わしが「なんでこんな…?」と思っていた意味不明の前部ループは、実はハンドルだったのです。


そうと分かれば話は簡単。
ここがハンドルなら伸長・緊縮も指一本で瞬時に可能。


これで、経常的には短くして小銃を身体にかけておき、構える(射撃)時にハンドルを引いてスリングを伸ばせばいいだけ、という造りであることが理解できました。
俄然、製作意欲が湧いてきます。
というわけで、瞬時に完成したのがコレ。


各部の縫製は、おそらくこんな感じだろうという想像です。
また官品は長さ2000mm~1160mm、重さ0.2kgとなっていますが、その長さに合わせてしまうと長すぎ、体格が小さい隊員さんが防弾チョッキなしで使用するとかなり余ってしまうため、あえて最大長を20cm(最短時10cm)短くしてみました(それに仕様通りの長さだと0.3kgくらいに重くなってしまう)。
使用したのはウチの3点スリングレプに使用したものをそのまま使っていますが、2018年の試作品に比べると前後フック金具と自在スライドがリアル版になっています。
これら金具のリアル化が進んでいたことも、制作意欲の向上につながったとも言えます。
前部後部を連結する金具だけ、ふつうの市販品ですが…。
ちなみに頻繁にナイロンを伸び縮みさせて使うもののため、擦れてナイロンが毛羽立ちやすい
まあこれは仕方ないのかもしれません。



【使いかた】
実際に陸自がこのスリングを20式でどのように運用しようというのか、それは情報がないため正確なところは不明です。
が、オリジナルスリングを開発する身としては、どう使えばこのスリングが生きてくるのか、考えなければなりません。

※豊和さんとこのHPから画像拝借

(赤丸が負い紐環、青丸が後付け市販スイベル)
当然ながら20式はまだエアソフトガンが出ておらず(早く出してねマルイさん~次世代がいいな!)、SCARも持ってないので89式で代用せざるをえませんが・・・

*組み方
普段は短く、射撃時に長くする性格からして、まずはなにより先に短くしておく必要があると思います。
前部側は何も言わずに最短に。
で、後部側は使用する装備(防弾チョッキの有無や体格)に応じ、なるべく身体にフィットするように事前に長さを調整しておきます。


なお20式では、後部側のフックは銃床後端のスイベルでも、根元のスイベルでも、好きなほうを選べます。

前側のフックは、スイベルがレールシステムで好きな場所にかけられるようになっていますが、とりあえずは89で試すので「一番前につけた」ということで。

*普通に肩にかける
いわゆる吊れ銃でしょうか、普通のツーポイントスリングなので特に言うこともありません。


*右肩にかける
警戒時や歩行時などにいいと思います。

サイドリリースバックルは、左手ですぐに開放できます。


この姿勢だとスリングがキツくて射撃姿勢が取れないのですが、左手の人差し指などでハンドルを引っ張ると、スリングが伸びるので構えられます。


逆に伸びた状態で左手の親指でハンドルを前方に押しだすと、スリングが縮まります。


*左肩にかける
長時間警戒をする時などによさそう。


これも右肩同様、左手でハンドルを引けばスリングが伸び、構えられるようになります。


*背中に回す
銃を身体の前に持ってきている時に、銃をクルッと背中に回すことができます。

 

 

*ワンポイント

銃床根元の負い紐環を使えば、ワンポイント使用もできます。

ただ20式は負い紐環が小さくて2つのフックはかけられないので、フッ

 

3年前には「なんじゃこりゃ」としか思っていませんでしたが、改めて実物準拠で作り直してみると、造りも扱いもシンプルでなかなかいいスリングだなと思えるようになりました。

しかしいろいろいじって思ったのですが、これマグプルのスリングと使い方はほとんど同じなんじゃないかと・・・

※これの安いレプがありますが、何人もの方がフック割れで銃を落としてるので、レプはやめたほうがよさそう。

しかもマグプルのほうはワンポイントにもできるので・・・

でもこのタイプのフック金具は、20式に(89式にも)かけるのはちょっと難しいんじゃないかな。

 

 

【簡素なぶん難点もある】
ただ、そうはいっても難点もあります。
*スイッチがしづらい(ワンポイント使用ができない)
89式用3点スリングの場合、銃床根元にストックアタッチメントをつけて伸長バックルを外せば、疑似ワンポイントとなって左側に構え直すことができました。
しかしコイツは、スリングをかけたままではスイッチができません。
まあ右射ちしかしないからと言われればそれまでですが・・・
なのでわざわざ前部フックを外して、前述のようにワンポイント使用するしかなさそうです。

*ナイロンが早期にケバケバになる

前部は何度も伸縮させて使うので、そのぶんナイロンが擦れ、それだけケバ立ちが出やすくなりますが、思いのほかすぐケバケバになってしまいました。

意外なのは、ツマミで前後させる部分は大丈夫で、真ん中の前後接続部分の内側のヨレとケバが早く出てしまいました(30分間ずっと伸縮させ続けた結果)

*後部自在スライドがズレやすい

後部の長さを合わせたと思っていても、使用中にひょんなことから僅かに長くなってしまうことがありました。
*部品が旧態依然
造りとして特段目新しいわけでもないうえに、金具は30年前に考案されたものを使っています。
前後のフック金具はまだいいにしても、自在スライドなんていう金具をまだ使うのか…。
同じ機能を持つプラパーツはいくらでもありそうだし、そのほうが入手しやすいようにも思えます。
ひょっとすると、自衛隊ではプラパーツの信頼性が低いのかもしれません。
それに従来のものと同じ金具を使うことで開発コストと時間を短縮し、そして補給もしやすくしているのかもしれませんね。
また、自分で縫製してて思ったのですが、自在スライドは金具の両端が切り欠きになっているため、そうでないトリグライドと違って、「縫ってから装着」ができるのです。
ここに切り欠きがないと、まず紐を通してから縫わなければならず、それだけ手間がかかります。
また金具破損の際にも縫製をほどく必要がありません。
そう考えると、この旧来の金具というのもあながち間違いではないのかもしれません。


【使ってみて…意外にイケる!】
さて、おうちでは実際の使い勝手は見えてこないので、実際にサバゲで使ってみました。

89に着けてサバゲで何度も使ってみたのですが、89用の官品3点スリングよりも簡単な構造のせいで、使い勝手はいいです。

セイフティから陣地まで、そして戦死してから退場するまでは短くして身体の前に銃をかけておき、ゲーム中で会敵してからツマミをしゅっと引いてすぐ射撃に移ることができました。

またミーティングの時には背中にくるっと銃を回して背負えますし、戦闘中にどうしても左射ちがしたい時には前のフックを後部スイベルにつけかえてワンポイント使用もできました。

実際には移動が多く、しかも左射ちをする機会のそう多くない本職さんにとっては、89式の3点スリングよりよっぽどいいと思われるのではないでしょうか?
そんな中、ホーワさんの仕様での難点が一つ見つかりました。

負い紐の後部のココの出っ張りなのですが、負い紐をくるっと背中に回す時にこの出っ張り部が装具(吊りバンドなど)に引っかかるのです。

しかしこれは一度負い紐の前後を外し、後部の表裏を裏返しにして組めば解決。


きっと20式小銃が配備された暁には、とりあえず部隊ではこんな改良がおこなわれることでしょう!(笑)

 

・・・などとツラツラ書き連ねたものの、ひょっとしたら実際に配備される20式にはまったく別の負い紐が付属してくるのかもしれず、そうなったら目も当てられません。
それに89式も途中でODビニロンから黒ナイロンに進化したように、もしこれが採用されていたとしても、現場の批判を受けてすぐに代替わりするかもしれません。
そうだとしても、その時代の新小銃の負い紐をレプリカで再現量産することができるのは光栄な話です(それっぽい部品を使って再現するのは簡単なことです。ワシはしたいのは量産なのです)
さあ、実際にはどんな姿で我々に姿を現してくれるのでしょうか・・・

 

 

(2022.3.20追記)

【いよいよ答え合わせ】

2022年になって以降、ぽちぽちとミリフォトで20式小銃が出てくるようになりました。

(水機団公開の画像)

予想通りまずは水陸機動団に配備され、そのあと他の部隊にも徐々に配備が進んでいるようです。

そこで「ウンウン、答え合わせは正解だったか」とほくそ笑むところで、なんか違和感が。

当然ながら負い紐を気にする人はいないので、負い紐の全貌が見えるような写真はないのですが、いろいろな部分部分の写真を検証すると、次のようなことが分りました。

①前部フック金具の向きが逆になってる。

②後部の解放バックル部分がなくなり、フック金具を紐にじかに取り付けるように簡略化された。

(画像はNHKから)

※後部フックの向きも当初図面とは逆向きのようです。

実際に20式小銃も、いろいろあって正式採用が3年ズレ込み、使用するパーツも当初予定から変わったからでしょう。

前部負い紐環がレールマウントに装着するマグプルのものになった関係で、フックをかける向きを従前から変更したのでしょうね。

フック金具は「下からすくい上げる」向きのほうが外れにくくていいのですが、マグプルのスイベルは「上からつかむ」向きのほうがいいということでしょうか。

そして後部は「いらんわこんなの」となったのでしょう。

あのYKKバックルはちょっとテンションが弱いので、ちょっと触っただけでも外れかねないとは思っていましたが、それが原因かどうかは分かりません。

とはいえレプ製作者としては、あの部分がなくなるだけで手間が省けるので助かります。

 

・・・というわけで、瞬時に改修。

前部はフックの向きを逆にし、またハンドル部の縫製が少し変わりました。

後部は開放部分がなくなり、スリングにフックが直付け(向きは逆)に。

あとは長さが推測なので、その答え合わせができればオシマイです!

 

 

(2022.5.2追記)

なんと、まだどこもトイガンで製品化していない20式を、3Dプリンタで作り上げてしまった変態さんが登場したのです。

で、そのお方がVショーでワシのブースにもお越しになりました。

となると当然、こうしなければいけません。

なんと光栄な・・・

そしてこの画像だけ見ればもうホンモノ!!!!!!

ありがとうございました!

 

ちなみにVショーで展示をしていて思ったのは、89の3点スリングだといろいろ説明しないとなかなか理解が進まないことが多かったのですが、この20式は一目見て「ああ、こうか」と自己完結する人がけっこういました。

3点スリングは配備直後はどう使っていいのかわからず、妙ちくりんな取り回しをする隊員さんも多かったそうですが、20式はそんなこともなくスンナリ受け入れられそうです。

というかコレ、サバゲでも使いやすくて今は89ではコレばかり使っています。

シンプルで分かりやすい、というのはミリタリー装備としては最優先されるべきなのではないかと実感した次第です。

この20式スリング、89式小銃にも最適なのではないかと思います!

 

 

(2022.5.5追記)

実は上記Vショーの際、水機の訓練の取材に行かれたキャロットの神崎代表様から

「実物スリングの幅、ちょっと広いように思えるんですよね」

と重大なお話が。

ちょうど買ったばかりのアームズマガジンに、20式を構えた隊員さんを横から大写しした写真があり、そこから画像解析を試みます。

すると、結果は28~30mmと出ました。

89のスリングの幅は25mmなので、数mm広がったということになります。

しかし当初図面はどう見ても25mm幅のはずで、さらに試作20式小銃に付属していた(らしい)スリングも当初図面の通りだったことから、これは推測ですが、おそらく試験小銃を使った隊員さんたちが改善要望を出したのでしょう。

というわけで、当面は現在の部材のままレプ製作をせざるを得ませんが、時期を見て完全レプを作るしかなくなってきました。

あ~も~!

とりあえずは、マルイさんあたりから20式のトイガンが出る辺りに合わせて…と思うところですが、もしかするとその時には別のスリングに更新されているかもしれず、悩みは尽きません。

とはいえ、このスリングは意外と便利で簡単なことは確実ですから、このままでもOK。

むしろいろいろ装具をつける現職さんとしては、25mm幅のほうがよいのでは?とも思う次第です(負け惜しみ)

 

 

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