後の空挺顎紐に比較すればまだ容易ではあったものの、単体で考えれば相当に苦労した、88式鉄帽「2型あご紐」レプリカ。
まあ開発も大変なら、製作も大変なのですが…。
88式鉄帽はその名の通り1988年に登場したもので、四半世紀ほど経過した2014年に、若干の改良(軽量化等)が施された2型に進化しました。
同時に顎紐も、当初版に付属していたモノと比べて格段に安定性が増し、これで私物顎紐に頼らず官品で十分じゃん!というデキになった…のはいいのですが、それでも難点はありました。
それは、面長の人が被ると、バックルのない右側の調整幅を使い切ってしまい、本来水平になるあご部分が斜めになってしまうという点。
↓の画像にある通り、バックルのない側の「調整幅が短いせい」です。
ピッタリサイズの人ならいいのですが、そうでない人だとどうしても調整幅を越えてしまい、結果として顎紐が斜めになってしまうのです。
で、2020年頃から支給されだしたのが、改良型のあご紐。
パーツを変更し、紐が同じ全長でも、調整幅を左右とも増加させ、面長隊員への適合性をUPさせたのでした。
これを勝手に「あごひも2型改」と命名してしまいます。
じゃあコレを作ろう!となるのは自然な話で・・・
えっ?
自然じゃない?
いやあ自然自然!
(構造は割と簡単)
・・・さて。
この解説画像から察するに、「連結調整環」さえ新しくすれば対処可能です。
で、元々の2型顎紐は全てYKK製の樹脂部品を使っているので、コレもそうだろうと踏むと、形状からすぐヒット。
ただ、この画像だけでは細部がよく見えないので、おそらくこうだろうな…と取り回しを想定して試作してツイッターで中の人(←何の中かは不明)にご意見を求めると、「然り」と。
(上が当初版、下が「改」の試作品)
2型当初版では2つのパーツで長さ調節をしていたものが、改では1つになりました。
その僅かな全長の短縮の分だけ、微々たるものですが調整幅が増えたという計算です。
また紐がブラブラしないように、ゴムバンドでとめられているのも改の特徴。
…というわけで仕組みは解明されたものの、問題なのが紐の寸法。
2型当初版あご紐はいちおう仕様書が公開されていますが、それでも図面だけでは不明な点も多く、実は仕様書には細かい寸法が掲載されておらずよく分からないのです。
そこで2型当初版あご紐レプでは、製作頒布をしつつ地味に製法や微細なサイズの改変を重ねていたのでした。
それが2型改は仕様書すらないので、最初からレプを作って試して…の繰り返しになります。
そのうえサイズ展開もしなければならないので、かなりの苦労(手間)が。
ただ、自分に合う中号を作っておおよそのサイズが分かれば、そこから2型当初版の仕様を元に寸法をプラマイして小・大・特大と展開できます。
で、そのように作って試し作って試し・・・とするうち、部隊にもようやく2型改が出回ってきたようで、複数の中の人(←何の中かは不明)にも答え合わせをしていただくことができ、寸法はおおよそ合格となりました。
(ナットも新規特注)
2型顎紐は、鉄帽+ハンモックに取り付けの際に鉄帽ネジ+丸ナット+ワッシャが使われています。
当初は、初期型あご紐用の短いナット(長さ5mm)レプを転用していたのですが…
普通のレプ帽体は良くても、官品くらいの厚みのある帽体だと、短いナットではネジがはまりません。
とはいえ官品の2型顎紐は長さが10mmあり、それを特注するとなると相当な出費となります。
おまけにテッパチレプの大御所・MDNコーポレーションさんがMDN-88の2型レプリカをリニューアルする際に、このネジも再現するという噂もあったので、それならこの2型ナットの特注はやめとくか~・・・と思っていたら。
あり?
MDNさんのリニューアル2型用のナット、短い5mmの奴じゃん!
そう、MDNさんの2型レプリカ帽体は5mmのナットで十分なのでした。
これは、ワシが10mmのナットを作るしかない!・・・ということで、こうなりました。
すごくない?
ねえ、すごくない?
これで、厚みのある帽体でもきっちりネジがはまるようになりました。
※薄い帽体だとネジが止まりきらないので、短いナットのほうがいいでしょう。
※ネジサイズはM4、現行JIS規格です。
※ワッシャは市販の官同サイズ。
2型顎紐の当初版レプをリリースした時、当然この専用ナット特注の構想はありましたが、資金が足りず…。
レプを購入してくださった方々から「帽体厚くてナットの長さが足りん」と言われ続け、ずっと申し訳ないと思ってきましたが、これでようやく肩の荷が下りました。
ど~もスンマセン。
(ポリエステル紐も刷新)
話はそれだけでは終わりません。
それまで使っていたポリエステル・18mm幅のテープ。
これもまた苦労と相当な出費をして官品同一の仕様で特注したのですが、官品新品に比べるとちょっと色味が明るいのが個人的な悩みでした。
まあどうせすぐ色あせしてこんな色になるし、それに官品との区別もつけなきゃいけないしね~と思っていたのですが、別途製作していた空挺(V8)顎紐の20mm幅ヒモの色味を改良することになり、ついでにこの18mm幅ヒモも特注し直したのでした。
どっちがどっちか、分かりますよね?
まあ並べなければ気づかない程度のものですし、官品新品はもっと濃いのですが、それでも個人的には「まあまあ」満足。
ぱっと見では、これこそ官品と区別のつかないシロモノになりました。
…が、もともとこの「改」に使用する分も見込んでいた当初版の特注テープが、この新たな特注によってまるまる余剰となってしまいます。
それももったいないので、画像のような目立たない位置のヒモだけ、前作のものを使いました。
本当はうなじ当ても改良しようと考えはしたのですが、2型顎紐はただでさえ工程がものすごく手間がかかるので、ここは前作から変えず、簡略化を旨としました(なので消臭効果もありません)。
ちなみに「うなじ当て」は、実物はテープではなくナイロンの布地です。
それを袋状にメッシュ素材と縫い合わせ中に消臭フォームを入れているのですが、その手間を省くために38mm幅のナイロンテープで代用しています。
色味はもともと売られていたもののまんまですが、たまたま近い色味で助かりました。
こんなのクッションの役目が果たせればいいのです!
(ゴムバンドは要改修)
心残りなのがゴムバンド。
いろいろ試したものの、どうにも官品同様のものが見つからず、仕方なく空挺顎紐で使ったものをそのまま使用。
いいゴムが見つかったら替えることとします・・・。
※官品2型改のゴムはもっと黄緑色っぽいものです。
(というわけで、完成)
こう書くといとも簡単に完成したように見えますが、他のレプ製作の合間を縫って試作を続けたので、ここまで来るのに相当な時間がかかっています。
最初に2型改の試作品に手を付けてからここまで、実に1年10ケ月もの時間がかかりました。
ワシが2型当初版あごひもレプをリリースしたのが2021年の7月、その直後に「改」の情報を入手し、その年の9月にはすでに2型改の試作第一号が完成しています。
それからいくつか試作品を作って中の人(←何の中かは不明)にも試しまくってもらっていましたが、既述の新規特注や素材変更のもろもろもがあり、えらく時間がかかってしまったのでした。
そもそもこの2型顎紐は製作に手間がかかり、試作品を作るのにもそれなりに気合を入れる必要があります。
出そうと思えば試作第一号の状態で量産できたのですが、なんかこう変なプライドと探求心が邪魔をしてしまい…(笑)
でも妥協しなかったおかげで、最高のレプリカを仕上げることができたと思います。
ちなみに、もともとピッタリサイズのお顔の方には2型当初版も改もあまり変わりませんし、サイズを合わせてしまえば被り心地は同一。
色味も並べて比較しないと気づきませんが、それでも2型当初版レプと並べて比べると、改は「イイね!」となると思います。
もっとも、長く使ううちにどのみち色あせして同じような色になりますけどね!
(装着の方法)
鉄帽への2型顎紐の装着方法は次の通り。
まずはハンモックの真正面と真後ろのネジをとめておきます(このハンモックは2型専用ではないです)
うなじ当てを↓のように、後部ヒモの直角に折れ曲がってる部分(窪みの部分)に通します。
個人的にはどちらでもいいと思いますが、うなじ当てテープの端末は、↑の向きが正しいんだそうです(つまり、鉄帽を被った際に端末が左側に来る)。
ハンモックの残った穴4か所に、「上部顎紐」を、ハトメ穴を通してネジ止めします。
とめる順番は、
・帽体→→
・上部顎紐→→
・ハンモック→→
・ワッシャ→→
・丸ナット(止めネジ)
です。
何故か分かりませんが、ハンモックの上に上部顎紐をつける(ワッシャのすぐ下に上部顎紐がくる)のはNGなんだとか。
で、このようになります。
あくまでハンモック取り付け用の穴・ネジを使い、他の余ってる穴は使いません。
で、被る際はヒモはユルユルにしておき、被ってバックルを締めてから、上下・前後のヒモを締めて合わせます。
V8顎紐もなかなかの安定性でしたが、この2型はぴっちり合わせると相当に安定しています。
これがあれば、個人的な趣味は別にして、もう社外品の顎紐を使う必要もないでしょう。
こうなると、次の18式鉄帽(?)の顎紐がどんな風なのか気になりますね!
【装備自作量産記事】
※思えばレプ作りすぎでは・・・?