17 星 THE STAR STEPHEN WILLIAM HAWKING
カードの17番目は「星」。「希望」を表すカードです。科学者はスティーブン・ホーキングしか思いつきませんでした。筋萎縮性側索硬化症に苦しみながら研究を続けるホーキングは、同じ難病に苦しむ人にとっても希望の星ですが、科学にいそしむ人間にとっては「知性に対する希望」の象徴でもあります。身体が動かなくなっても、脳の活動だけで研究を続けるホーキングの姿は、理論物理研究の「希望」の象徴でもあります。
車椅子の科学者としてのスタンスばかりが有名ですが、ホーキングの研究は「人間原理」に代表されるように刺激的なものです。それがまったく新しい科学の地平を切り開くのか、妄想に過ぎないのかわかるには、まだまだ時間がかかりそうです。
【タロット解説】
◆大アルカナの#17は星(THE STAR)。女性が壺から泉に水を注ぎこんでいる姿が基本形。女性のまわりには沢山の星が煌めいています。女性は豊穣の女神。オリエント的解釈では女神イシスです。
本来泉から水を汲み出す壺で、逆に泉に水を注いでいる図案が不思議です。重大な意味が隠されているのでしょうか。
注がれる水は「生命の水」で、豊かなインスピレーションを象徴しています。霊感的なカードとして考えられ出された図案でしょう。本来「インスピレーション」が第一義だったと思われます。
それがどうやって「希望」の意味に転じたのかは不明です。どの版を見ても「星」のカードは明るい色調が多く、カードの基本的な意味は「希望」ということで定着しています。
『タロット入門』によれば、ウェイト版を作ったアーサー・エドワード・ウェイトは「星と希望を結びつけるのは通俗的で間違った説」と主張しているそうです。
ウェイトはそれまでの古典的なタロットを研究し、意味づけをやりなおした研究者。その意見は無視できません。
とはいえ、現代のタロットで「希望」が第一義として定着している以上、ないがしろにはできません。
ウェイトのカード解説では、この女性は「永遠の若さと美」を象徴するのだと書かれています。自分の研究通り「希望」の意味を排除し、「インスピレーション」を第一義としました。
ところが、現在市販されているウェイト版では、「星」=「希望」として解説されています。どうやらウェイトの思惑とは別に、ウェイトのいう「俗説」が「正論」を凌駕し、ウェイト版すら支配してしまったようです。皮肉なことですね。
タロットカードも、結局は商品。売れなければ商売はなりたちませんから、タロットカードを利用する側の意見は取り入れないとまずいのでしょうね。
最初に述べたように、カードに描かれている女性は豊穣の女神で、当時流行の女神、イシスと解釈されています。イシスはもともと、エジプトの最高神です。
前にも述べましたが、当時はエジプト発のイシス信仰がヨーロッパ世界で流行になっており、キリスト教のマリア像にすら影響を与えたといわれているほどです。ギリシャでもデメーテル、ヘラと同一視され、航海の神として崇められています。
エジプトから輸入された最高神イシスは、各地域の土着女神を吸収しながら伝播し、ヨーロッパでは、あるときは月の女神、あるときは復活の神、またあるときは医薬の神と、「何でもあり」のスーパー女神となりました。ただ、イシスはもともとエジプトでは「穀物の神」でしたから、「豊穣の神」というのは本来のイメージでしょう。
ところで、カードに描かれている星の形は様々です。
比較的多いのは八芒星。ウェイト版もクラシック版もライダー版も八芒星になっています。
六芒星(ヘクサグラム)は魔方陣などに描かれる魔法の象徴だし、五芒星(ペンタクルズ)は多くの版の小アルカナでコイン(円の中に五芒星の図案が多い)を意味するのに使われています。五芒星には黒魔術的・悪魔的意味合いもあり、ウェイト版の悪魔の額には、五芒星が輝いています。
小アルカナ(現代のトランプのもとになったカード)のコイン(ペンタクルズ)は、星ではなく、コインの輝きを図案化したものです。一見、星に見えますが、星ではなく、コインや宝石のきらめき。トランプカードができる過程で、コイン(金貨)→ペンタクルズ(五芒星)→ダイヤ(宝石)と変遷したのでしょう。
星を描くとき、たいていの人が一筆書きをする五芒星は、古来様々なシンボルに使われてきました。もっとも簡単な図形でありながら、西洋・東洋を問わず、呪術に深く関わるシンボルです。
安倍晴明の象徴である五芒星は魔除けだし、北海道の要塞五稜郭も基本は五芒星です。
【正位置】希望
他に、順調、美しい自然、よい未來、インスピレーション。
【逆位置】絶望
他に、悲観的、強情、ノイローゼ、憂鬱、諦め。
【科学者あれこれ】
【ホーキングとは】
◇ホーキングはイギリスの物理学者。ブラックホールの特異点定理、量子宇宙論など、理論物理学の最先端で活躍しています。若い頃に筋萎縮性側索硬化症にかかり、現在は車椅子の生活。難解な宇宙論の著書は日本でベストセラーとなり「車椅子の天才科学者」として有名となりました。
【ホーキングのエピソード】
◆1942年1月8日、ガリレオの死のぴったり300年後に生まれた。父はオックスフォードで医学を学んで熱帯医学研究の道に進んだ。家には本があふれていた。また、父は無愛想であった。
スティーブンはごく普通の少年であり、学校の成績はクラスの中から上になることはなかった。体もひ弱だった。しかし、頭がいいといつも認められていた。何か興味をもつと100パーセントのめりこんでしまう性格。(「ホーキングの宇宙」ガイドブック)
◆今世紀の科学理論家の第一人者で、アインシュタインに並ぶ学者は、スティーブン・ホーキング。筋骨の病気にかかり、頭を支えるのがやっとで、言葉も親しい人にしか通じない。方程式も書けないので、アイディアを含めて、すべてが頭の中に記憶されている。専門はブラックホール現象。(アシモフの雑学コレクション)
◆ 1942年、オックスフォード生まれ。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学大学院で物理学と宇宙論を専攻。ブラックホールの特異点定理や蒸発理論などで、早くから理論物理学の第一人者として認められる。1974年に史上最年少の32歳でイギリス王立協会会員になる。1979年、ニュートンも就いたケンブリッジ大学ルーカス記念講座教授に選出され、今も在職中。筋萎縮性側索硬化症と闘いながら精力的に研究を続け、「現代でもっとも優れた科学者の一人」として世界中で高く評価されている。
車イスの科学者ホーキングの業績の1つは,量子効果によってブラックホールから粒子が放出できることを示したこと。「ホーキング放射」と呼ばれている。(世界の科学者100人)
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