15 悪魔 THE DEVIL THOMAS ALVA EDISON
「誘惑」を意味する「悪魔」のカードには、発明王トマス・アルバ・エジソン。もっと年老いてからのエジソンの絵の方がよかったかなとも思いましたが、いっしょに科学者タロットを企画したスギさんが、この絵をいたくお気に入りで、ぜひこっちでといわれました。曰く「エジソンの悪さが出ていていい!」・・・納得。子供向けの伝記では、努力して発明王になった偉人という描かれ方が多いのですが、一筋縄ではいかないのがエジソン。重要な発明は他の研究者の発明を買って発展させています。純粋な発明家というより、発明プロデューサー的な起業家といえるでしょうか。
【タロット解説】
◆大アルカナの#15は「悪魔(THE DEVIL)」。山羊の頭に角、尾、先のとがった耳、割れた蹄、コウモリの翼、女の腕と胸というのが基本形。
悪魔といっても、下っ端ではなく、堕天使ルシフェルすなわちサタンです。
大学時代、キリスト教を研究している友人がいて、彼からいろいろな知識を教えてもらいました。中でも印象深かったのが悪魔の話で「悪魔は悪いことをする存在ではなくて、人間に悪いことをさせる存在」だとということ。なるほどなあと感心しました。
タロットでもこのカードの基本的な意味は「誘惑」であり、「悪行」ではないので、彼の「悪魔」の解釈は正しかったのでしょう。
悪魔が男女を鎖で繋ぎ止める図柄もあります。この男女は堕落したアダムとイブだといわれています。
・・・堕落したイブということなら、アダムの最初の妻リリスということになりますが、タロットでは、特にそういう意味づけはないようです。キリスト教のさまざまな伝説を丁寧になぞって作られたものではないことがうかがえます。
キリスト教徒から見ると異教徒は悪魔の輩。異教の神はサタンとなります。そのように描いた図も残っているそうです。異教徒から見れば迷惑千万な話ですが。
ちなみに、悪魔の概念はキリスト教の成立当初からあったのではなく、最初に堕天使という概念があって、後年になってそこから派生しただといわれます。
仏教でもブッダが悟りを開こうというときにじゃまに来たのは悪魔ということになっていますから、東西を問わず、賢者を誘惑するのは悪魔の役割なのでしょう。
【正位置】誘惑
他に、堕落、黒魔術、呪い、悪い行いにふける。
【逆】誘惑に打ち勝つ
他に、立ち直る、更正する、酒やタバコなどの悪習をやめる。
【科学者あれこれ】
【エジソンとは】
◇エジソンを科学者の仲間入りさせていいものかどうかは異論があると思います。彼の科学者としての論文は唯一「エジソン効果」(金属を加熱すると電子が飛び出してくる現象)に関するものだけで、あとは実業家としてさまざまな装置を作ったわけですから。
アメリカの発明王エジソンは千件以上の発明を行ったといわれますが、完全なオリジナルは少なく、代表作の白熱電球をはじめ、他人の研究を改良したものがほとんどです。精力的な発明家である一方、対立する交流発電を退けるために犬猫の感電死実験を重ね、死刑用の電気椅子を交流で作って採用させるなど、汚い手段を平気で使う企業家でもありました。晩年には神を冒涜する発言をしたということで、大変なバッシングを受けました。
【エジソンのエピソード】(さすがエジソン。たくさんあります)
◆「6歳のときに近所の小屋に火をつけて燃やした」(続々天才の世界)
◆「隣の家の納屋に入って巣をこしらえてガチョウとニワトリの卵をいくつかだいてうずくまった」(続々天才の世界)
◆「小学校の牧師に「あの子は頭が腐っている」といわれ、小学校を中退。母親によって教育された。(続々天才の世界)
◆エジソンは学校での成績があまりにひどく、教師をしたことのある母親は退学させ、自分で教育した。もと落ちこぼれには、ほかにニュートン、パスツール、アインシュタインなどもいる。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンは耳が遠かったため、発明した蓄音機の、音楽や娯楽への利用は考えつかなかった。業務用の口述、教育用、盲人のためのもの、歴史的な記録、発生の練習用に適当とした。
映画も発明したが「それを楽しむには、館内は静かで音のないほうがいいだろう」と1926年の新聞に、発言がのっている。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンは、自分の説が正しいと思うのが習慣になり、電気は直流がいいとの主張を代えたがらなかった。交流の普及を妨害するため、ニューヨーク州の、処刑用に開発された電気椅子に交流を使うよう働きかけた。それは効果を示し、エジソンは交流は危険と主張した。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンは若い頃から耳が遠かった。親しくなった女性にモールス信号を教え、それで愛を伝え、彼女もそれで応じた。結婚してからも、夫婦はモールス信号で声のない会話をした。観劇のときは、夫人がエジソンのひざの上に手を当ててせりふを知らせた。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンは「売れない発明は意味がない」と考えていた。(原典不詳)
◆他人の発明を次々に買って自分の発明として発表した。(原典不詳)
◆自分の会社で雇う技術者を面接するとき、電球を見せて容積を求めさせた。志望者が複雑な計算をして算出したのをみて、電球の一部を割り、水をいれて容積を量った。(原典不詳)
◆エジソンは若い頃から耳が遠かった。そこで、親しくなった女性に、モールス信号を教えた。上達したのをみて、それで愛を伝え、彼女もそれで応じた。結婚してからも、夫妻はモールス信号で声のない会話をした。観劇の時は、夫人がエジソンのひざに手を当て、せりふを知らせた。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンの発明で、科学理論関係のものはひとつしかない。電気は真空中をも流れるという「エジソン効果」である。特許は取ったが、利用法がなく、そのままになった。現在から見ると、エレクトロニクス産業の出発点だったのだが。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンが白熱電球を発明する以前に、アメリカの多くの待ちには、電気照明の設備があった。アーク灯にによるもので、十九世紀の初めにデービー卿によって発明された。明るいがまぶしく、エジソンの電球の方が魅力的でやわらかだった。1885年ごろには、ほとんどが白熱式に切り換わった。(アシモフの雑学コレクション)
◆電球はエジソンによって1879年に発明され、真空球内の炭素フィラメントが光を出したと知られている。しかし、同じ頃、イギリスの発明家スワンも同じものを作っていた。炭素フィラメントの使用は、二十年も早い。ただ、真空が不完全で役に立たなかったのだ。二人は1883年、共同でイギリスに会社を作った。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンは1878年、電球を発明し、実用化させたいと公言した。三十一歳の若さだったが、すでに多くの発明をしていた。そのため、ニューヨークとロンドンの、ガス燈の会社の下部が暴落した。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンが金を儲けたのは、発明した新式の相場受信機を、ウォール街のある社長に売り込みに行ったときが最初。五千ドルの値を付けたかったが、二十三歳で、こんなことになれていない。言い値でけっこうと申し出たら、四万ドルもらえた。このとき、安売りは損との貴重な教訓を得た。(アシモフの雑学コレクション)
◆エジソンは「発明工場」と呼ぶ研究所を作った。最初は十日に一つの発明が目標だった。しかし、四年間で三百の特許を取った。五日に一件となる。取った特許の合計は、千三百に近い。なかでのお気に入りは、蓄音機。(アシモフの雑学コレクション)
※エジソンとアインシュタイン、二人に関わるエピソードは「エジソンとアインシュタイン1・2」をご覧ください。
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