10 運命の輪 THE WHEEL OF FORTUNE ALFRED NOBEL
カード「運命の輪」には、ダイナマイトの発明者にしてノーベル賞の設立者でもあるアルフレッド・ノーベルを配しました。安全のために開発したダイナマイトが戦争に使われるとは思いもよらなかったノーベル。遺志により設立されたノーベル賞は、じつに多くの人々の「運命」を翻弄しています。まさに運命の輪は巡る・・・
【タロット解説】
◆大アルカナの#10は運命の輪(The Wheel of Fortune)。なぜかウェイト版では「the」が抜けています。運命を定める回転輪が描かれているのが基本形。
基本形は木製の輪にさまざまなキャラクターが乗り、回転に翻弄される様を表したものとなります。
クラシック版では輪に乗っているのはスフィンクスの他、人面獣身のキメラや怪魚。
1JJ版では一般市民と思しき人びとが乗り、それを目隠しをした女神が回しています。
ウェイト版では輪に乗るのは人間ではなく、エジプトの神アヌビス、セト、スフィンクス。輪の周りを天子、鷲、有翼の雄牛、有翼の獅子が取り囲んでいます。これらは前出の「タロット入門」によると四元素(地水火風)を象徴しているというのですが・・・
ウェイト版のスフィンクスは明らかにクラシック版のスフィンクスを模しています。ウェイト版は新しい解釈で謎めいた図案になっていますが、この「運命の輪」については、クラシック版の図案が突出しています。カードから受ける印象がまるで違う。新しい解釈でと意気込んだわりに、過去の力作に届かない映画のリメイクみたいなものでしょうか。
運命を輪の回転になぞらえる発想は俊逸だが、その文化的背景は不明です。
運命の輪は、おそらくはギリシャ神話の「運命の3姉妹」モイライの影響を受けているのではないでしょうか。3姉妹は運命の糸を紡ぐ役割。紬車(つむぎぐるま)が登場したのはギリシャ神話の時代よりもっと後ですが、「運命の糸を紡ぐ」という行為が、後の世で紡ぎ車すなわち運命の輪となった可能性は高いと思います。
【正位置】幸運
他に、運命的な出来事、発展。
【逆位置】不運
他に、失敗、惰性、逃れられない宿命。
【科学者あれこれ】
【ノーベルとは】
◇スウェーデンの化学者ノーベルはニトログリセリンより安全な爆薬ダイナマイトを作り、巨万の富を得た。武器製造業も営んでいたノーベルは、現在の抑止論によく似た考え方で、ダイナマイトを双方が持つことで無用な戦争が減ると公言したが、結局世間からは「死の商人」と呼ばれた。その汚名返上でノーベル賞を設立し、ダイナマイトで儲けた金をその資金とした。
【ノーベルのエピソード】
◆ノーベルのニトログリセリン工場で1864年に彼の弟が死んだ。スウェーデン政府は再建を許可しなかった。ダイナマイトを発明した彼は、破壊マニアの学者とされ、悪評さんざんだった。死後、遺書によってノーベル賞が制定され、やっとその名が高まった。(アシモフの雑学コレクション)
◆ニトログリセリンの研究をはじめ、これを安全性の高いダイナマイトに転換する方法を発見。雷管による点火法を完成させた。爆薬の製造による莫大な資産は遺言状によってノーベル基金に。
1833年にストックホルムに生まれた。父は発明の才能をもっており、ロシアのペテルブルクに火薬工場をつくった。クリミア戦争で大量の注文を受けた。ロシアが負けたのでスエーデンにもどる。
アメリカとフランスに留学したときに、パリで知り合った少女に死なれ、悲しみと過労のため健康を害した。ドイツの温泉で休養して健康を回復したが、一生独身でくらした。
ノーベルの兄も才能をもっており、共同してカスピ海沿岸に油田を開発し、大規模な製油所を作った。世界で最初のパイプラインやタンカーをつくったのも彼ら。
晩年は平和運動に関心を寄せた。平和運動者のズットナー夫人を秘書として雇った。最初は、「自分はそのうちに戦争が不可能になるように強力な爆薬をつくってみせる」といっていたが、ズットナーの平和会議に出席して以来その考えを改めた。(世界の科学者100人)
◆綿火薬より強力なニトログリセリンは、1847年にイタリアの化学者ソブレーロがはじめて作った。一滴を熱しただけで、すさまじい爆発。こんなのが戦争に使われたらと、ふるえあがり、研究をそこで打ち切った。ただし、ノーベルをはじめ、ほかの化学者はそう考えなかった。(アシモフの雑学コレクション)
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