科学者タロット解題〜5法王ダーウィン | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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5 法王 THE HIEROPHANT  CHARLES ROBERT DARWIN

 

 ダーウィンは進化論の提唱で、世界観を激変させた人。特にヨーロッパでは一神教との関係があって、大変な騒ぎをもたらしました。生物の世界の新しい法を作った、まさに進化論の法王。このカードにふさわしいんじゃないでしょうか。

 

【タロット解説】

 

◆法王は中世ヨーロッパでは宗教上の最高権威者で、タロットでは宗教的寛大さを象徴する存在。女教皇が「知性」、法王が「慈悲」で、この二つが理性と感情の対照をなしています。タロットのキリスト教的背景をもっとも強調しているカードです。その基本の意味が「慈悲・寛容」というのが占い師たちのおかれた立場を彷彿とさせます。異教徒にも寛容を示して欲しいとの願いかもしれません。

 

 大アルカナの#5は法王(The Hierophant)。古典タロットの1JJ版では法王がJupiter、女教皇がJunonとなっている。ローマ神話の主神とその后です。法王の足下には鷲が、女教皇の足下には孔雀がいますが、これは1JJ版だけのアイテムです。

 

 政治・武力の世界での王「皇帝(The Emperor)」、精神・宗教の世界での王「法王」という対比になっています。基本的なアイテムは八木アンテナのような形態の錫杖。十字架を三つ重ねたようにも見える形状には宗教的が意味があるのでしょうが、ひょっとすると後述するように、カバラなどのシンボルかもしれません。女教皇の書物(ユダヤの律書)と対を為すアイテムです。

 

 キリスト教は異教を滅ぼしながら拡大していった宗教なので、その支配への抵抗はキリスト教の衣を纏う形で行われています。例えばグノーシス派として知られるキリスト教異端派は、キリスト教から枝分かれしたものではなく、元来キリスト教とは異なる宗教、つまり異教です。滅ぼされる前にキリスト教へ帰依する形でグノーシス教の骨格を残すのに成功しています。

 

 おそらく他のカードと同様に、このもっともキリスト教的なカード「法王」にも、どこか異教のシンボルが隠されているはずです。

 

 そもそもタロットや星占いはキリスト教からは「異教の技」「悪魔の技」と見なされ、場合によっては弾圧を受けたのですから、それを避ける配慮は十分になされていると考えるべきでしょう。

 

 カードの#2~#5(女教皇、女帝、皇帝、法王)は、その配慮が端的に出た4枚だと思われます。なぜなら、それ以外の18枚はどこをどう見てもキリスト教的ではないからです。

 

 このカードが特にキリスト教的色彩が強く、いかにもローマ法王といった描かれかたをしているのも、おそらく異端狩りの目を逸らすためのもっとも重要なカードだったからに違いありません。

 

 そう考えると、これほど重要なカードだからこそ秘する「しるし」がどこかに描かれているような気がします。それがカード制作者の心意気というか、挑戦でしょうね。

 

 クラシック版の法王像には、他になにやら曰くありげなシンボルのついた珠が三つ描かれています。三つの青い宝玉の中には、それぞれ、小さな目玉、大きな目玉、目をつぶった顔のようなものが描かれているので、これがカバラの秘術に由来するものでしょうね。

 

【正位置】慈悲。

 他に、寛容、思いやり、宗教、冠婚葬祭、良い行い。

【逆位置】無慈悲。

 他に、行き過ぎた親切、援助のない状態、異端、無信仰、物欲。

 

 

【科学者あれこれ】

 

【ダーウィンとは】

 

◇イギリスのダーウィンはビーグル号の航海に同行してガラパゴス諸島などの生態を観察し、生物学史上画期的な進化論を提唱しました。慎重に時間をかけて大著として発表する予定だったのですが、ウォレスから自分の発想とほぼ同じ進化論の論文が送られてきたのに慌て、急いで進化論を発表しています。当然、中世から続くキリスト教の創造説に真っ向から対立することになり、議論は法廷まで持ち込まれました。ダーウィンの進化論はその後幾多の改良を受けて今日に繋がり、進化論は生物学世界の法となっています。(*)

 

【ダーウィンのエピソード】

 

◆ビーグル号の船長は気難しい性格で、人相学に詳しかった。自然研究のためにダーウィンが乗船するのを、断りかけた。あの、ずんぐりとした鼻。七年もの苦しい航海に耐える、強い意志を持つ人物とは思えないと。(アシモフの雑学コレクション)

◆ダーウィンは進化論の完成に十四年を費やした。宗教上、学問上の大論争になることを予期し、補強のための引用文献を多くしようと、出版のすすめを引きのばしていた。

 べつの生物学者ウォーレスは、アジアとオーストリアとの動物の差に着目したが、ボルネオで病気になり、ある仮説を思いつき、三日間でまとめ、ダーウィンに送った。非常によく似た説だった。

 ダーウィンは驚き、1858年に共同で論文を発表することにした。ダーウィンはその翌年、個人名で「種の起源」を本にし、有名になった。計画していたものの五分の一ほどの量で、彼はこの本を要約と呼ぶことにした。複雑な気分だったろう。(アシモフの雑学コレクション)

◆自然淘汰による進化論。ダーウィン、ウォーレス、どちらが先かは議論が残る。しかし、その説への重大なヒントは、ダーウィンの生まれる十一年前の1801年に出版された、イギリスのある聖職者の著作のなかにある。すなわち、マルサスの「人口論」。(アシモフの雑学コレクション)

◆ダーウィンの「種の起源」の初版は1250部。多すぎると心配されたが、一日で売り切れた。(アシモフの雑学コレクション)

◆ダーウィンは1871年に「人間の由来」という、人間の進化の先駆的な著書を出した。しかし、当時は原人など、人間以前の骨も化石も発見されていなかった。

 推測だけで書いたのだが、立証物はその後たくさん発掘された。(アシモフの雑学コレクション)

 

(*)ダーウィンとウォレスの関係や当時の進化論を取り巻く状況については、別記事「進化論にもの申す?」をご覧ください。また、ウォレスと当時流行していた心霊術との関係については、別記事「電子と幽霊1」をご覧ください。(下記リンク参照)

 

 

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