科学者タロット解題〜4皇帝アリストテレス | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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4 皇帝 THE EMPEROR  ARISTOTELES

 

 権威を意味するカード「皇帝」には、中世での自然哲学の権威アリストテレスを配しました。本人が権力的だったとか、そういう意味合いではありません。アリストテレスが教会の指示を得たというより、当時の一般的な知識人がアリストテレスに頼ったというべきでしょうね。

 

【タロット解説】

 

 大アルカナの#4は皇帝(The Emperor)。盾と王笏を持つ姿が基本形で、剣は持ちません。古典的なタロット・ブザンゾン版(1JJ)では王の持つ盾は無地ですが、ウェイト版では鷲の絵が描かれています。

 

 ミュラー社のタロットクラシック(1751年のクロード・ブルーデルによる木版デッキの原板を元に複製したもの)では女帝(The Empress)が鷲の盾を持っていて、皇帝の盾にはグリフォンらしき怪物が描かれています。

 

 マルセイユ版やクラシック版では王の足は十字に組まれており、何か象徴的な意味がありそうです。「タロット入門」(木星王)では「直角三角形の体、十字に組んだ足」は「錬金術者のかまどをあらわしているという説もある」と書かれているのだが、はたしてどうでしょうか。

 

 同書によればこのカードはカバラの秘法を身につけた王を描いたものだそうです。でも、カードの図柄を見る限りでは、その説には簡単には頷けません。

 

 1JJ版やウェイト版では王の足は十字に組まれておらず、アイテムとして象徴的なのは盾と王笏だけです。盾は武力、王笏は政治力の支配をそれぞれ象徴しているのでしょう。

 

 王笏は閻魔大王の持つ笏と同じで、ある種の決裁を下すのに用いるものです。閻魔大王の場合は亡者の行き先を決裁するのだから、そこにある種の魔法力を認めることができます。先ほどのカバラの秘法というのも、無理矢理結びつけることはできそうです。(まあ、こじつけはどんなものにもできますから)

 

 魔法の話はこのカードの解釈には入れない方がすっきりします。すなわち、政治力による支配というキーワード、もしくは父親の権力を象徴するカードと考えるとよいでしょう。

 

 皇帝というのはローマ帝国では世俗の最高権力者なので、カードの意味もそのまま「権力」や「支配」となります。女帝の象徴する「女性・母性」に対して、皇帝 は「男性・父性」を象徴すると考えればよいでしょう。前述したように、皇帝は剣を持たず、盾と王笏を持っています。王笏は政治的問題の決済をつける道具であり、皇帝の政治権力の象徴です。

 

【正位置】権力

 他に、支配、統率力、男らしさ、行動力、財産・経済力、一家の主人・リーダー。

【逆位置】無力

 他に、支配しきれない、未熟、見かけ倒し、次男三男、婿養子。

 

 

【科学者あれこれ】

 

【アリストテレスとは】

 アリストテレスはギリシャ時代の哲学者・自然科学者で、古代・中世を通じ、彼の理論が科学認識の柱となりました。

 彼の理論は中世キリスト教世界に受け入れられましたが、実際にはその教義と相反する面もあります。もともと中世を通じてずっとアリストテレスが信奉されていたわけではなく、ギリシャ・ローマ→アラビア→ヨーロッパと、アラビア世界を経由して、ギリシャのさまざまな科学知識が中世ヨーロッパに逆輸入され、その中でアリストテレスの著作が知の象徴として権威を持つようになりました。

 ガリレオ・ガリレイやニュートンによる近代物理学は、当時の自然科学界の権力者、アリストテレス説との戦いによって成立したといえます。特にガリレオ、ケプラーたちの世代は熾烈な戦いになりました。

 ガリレオはアリストテレス流の自然理解がいかに間違っているかを論理的に解き明かすという論法で、『天文対話』を書いています。

 なお、アリストテレスは膨大な著書を残していますが、そのほとんどは今でいう人文科学系の著書で、自然科学系の著書はごくわずかです。

 

【アリストテレスのエピソード】

 スギさんと集めたエピソード集です。原典不詳のものもありますが、わかったら追加訂正します。

 

◆プラトンの弟子の、古代ギリシャ最大の哲学者の一人アリストテレスは、本来は生物学者だった。しかし、物理学や天文学の分野の先駆者あつかいをされた。近代になって、生物分類法を確立したリンネ、進化論のダーウィン、比較解剖学の創始者キュビエなどの生物学者は、アリストテレスの書からインスピレーションを得て、ユニークな業績をあげた。(アシモフの雑学コレクション)

◆およそ紀元前340年、アリストテレスは、イルカは卵で子を作らず、母胎とへその緒で繋がっているのを知り、哺乳類の一種と考えた。生物学者たちも、それに賛成した。二十四世紀たってからだが。(アシモフの雑学コレクション)

◆アリストテレス以後、中世までの人々はすべて、知性は心臓に宿ると信じていた。(アシモフの雑学コレクション)

◆デモクリトスをはじめ、脳が知的活動の中心と考えた人は何人かいた。しかし、アリストテレスの反対で、長い中断に入る。アタマは血液をひやす部分との説が、主流となった。(アシモフの雑学コレクション)

◆古代ギリシャの哲学者・科学者。あらゆる学問を組織化した大学者。紀元前384年にギリシャのイオニア系植民地に生まれる。学問の中心アテネでプラトンがアカデメイアという学校を作っていて、そこで17歳から37歳までのあいだ学んだ。学びかたはすさまじく、「読書家」とのあだなをつけられた。プラトンも彼には「ブレーキをかけるための手綱がいる」といっている。プラトンの死後、アレクサンダー大王の家庭教師になる。(原典不詳)

 

 

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