前の記事で記したヘッポコカンフーとはこれ。
前作である「片腕ドラゴン」を観ていないのにこの「カルト作」としても有名な続編を先に観てしまった!(笑)
片腕カンフー対空とぶギロチン (1975)
獨臂拳王大戦血滴子 ONE-ARMED BOXER VS. FLYING GUILLOTINE
監督・脚本:ジミー・ウォング 製作:ウォン・チューホン 撮影:チュー・ヤウ・ム 武術指導:ラウ・カーリョン、ラウ・カーウィン
出演:ジミー・ウォング、カム・カン、ドリス・ロン、ルン・クン・イー、シャム・チム・ポー、ロー・カー・ウィン
この監督主演のジミー・ウォング、ご覧の通りまったく華も無いし、元は水泳選手だったんでカンフーの心得は皆無。ただ、日本の時代劇、特に座頭市に影響を受けたハンディキャップを持つ主人公という設定で「片腕必殺剣(未公開・獨臂刀)」(1967)という片腕の剣士を演じた作品が大ヒットし、アジアでは「天皇巨星」と呼ばれたブルース・リー以前の大スターだったのだ。
カンフーはダメでもアイデアマンではあったジミーは、これまでの刀で戦う武侠片から、初の功夫で闘う拳打片を考え監督・主演作「吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー」(1970)を作り大ヒットする。
言わば「カンフー映画」の始祖でもあるのだが、当時アメリカでこれを観たブルース・リーが「なんだあの上がらない足は!!俺の方がうまく作れる!本物のカンフーを見せてやる!」と憤慨して香港に戻り、カンフー映画に出るきっかけになったというのは、好き者には有名な話だったりするのだ。
香港に凱旋したブルース・リー主演作がヒットする中、ジミー・ウォングは私生活の問題で香港を追われ、台湾の裏社会とも通じてしまったりするのだが、かつての自分の当たり役「片腕剣士」をカンフーに置き換えた「片腕ドラゴン(獨臂拳王)」(1971)を発表する。
「面白ければ何でもあり」感覚でこの「片腕ドラゴン」はヒットし、日本でもカンフー映画としては「燃えよドラゴン」の次に日本公開された初の香港映画だったりもするのだ。
で、続編のこれ。もうね、タイトル通りの映画ですな。前作を観てないけどトンデモ具合は増してる模様だ(笑)。
ジミー・ウォング扮する主人公は、前作で片腕となった設定だが、今は武術道場を開いている。全然強そうに見えない事実はこの際目を瞑って観なくてはならない(笑)。
彼は鍛錬を積んだので、気を操って壁を歩いて登り、挙句の果てに天井は歩くわ、空っぽの竹籠に飛び乗ってその縁をひょいひょいと歩いて見せるなど達人ぶりを弟子に見せつけるのである(笑)。
そしてライバル道場の開く武闘大会に招待されるが、目立つのは嫌だと観戦に徹するジミーだが
「無刀流」を名乗る日本人が、卑怯にも隠した刀で相手を仕留めるのを観て「なにが「無刀流」だ!」と怒ると思いきや「参考にしよう」などとのたまうのだ(笑)
そんな彼を、前作で彼が仕留めた悪人の師匠である盲目の僧、封神が「片腕は弟子の仇!」と、つけ狙っている。この老僧こそタイトルにある「空飛ぶギロチン」の使い手なのだ!
この空飛ぶギロチン、見ると聞くとは大違いで、ビューンと帽子のようなものを飛ばして相手の頭に被せ、内側のノコギリ状の刃で首をもぎとっちゃうという乱暴な凶器(笑)。
でもって目が見えない封神は食堂で片腕ドラゴンを名乗る偽者から、武術大会出場中の「片腕蛇拳」の使い手など片腕の男を片っぱしから襲っちゃう。人違いで殺したとわかっても「失敗したか・・・まあよい、片腕は皆殺しだ!」とか言っちゃうから恐ろしい(笑)。
・・・って、主人公含めどんだけ片腕男(といっても皆お腹や背中が隠した腕で膨らんでいる)が集まる町なんだ(笑)。
まあこの武術大会、三節根VS長槍術、快刀術VS無刀流、弁髪術VS蒙古相撲、地堂腿VS鉄布、鷹爪拳VS猿拳、ジャワ(ただの出身地じゃん)VS天縄、台風拳(旋風双匕首)VSヨガ、虎鶴拳VSムエタイ、そして片腕蛇拳VS蟷螂拳と、メモする俺も俺だが(笑)まあ集めも集めたりの各流派。誰ひとり強そうに見えない奇人変人大集合的大会なのだ。
こいつらをご丁寧に呼び出して、ドンドコ太鼓を鳴らして始まりの合図、そして勝負がついて、倒れた奴を運び出しすまで、一戦一戦全部見せてくれるのだ。凄く丁寧というか・・・ある意味拷問である(笑)
勝ち残った奴らの第2回戦が始まるかと思いきや、前述の通り突如現れた封神が片腕蛇拳を襲い、主催者まで殺しちゃって1回戦でおしまいとなるので、観ているこちらはホっとするのである(笑)
主催者である道場主の娘を紳士的に助けるジミーだが、彼女を勝手に「俺の弟子にしてやろう」と攫おうとする無刀流の日本人を隠した刀で倒すが(笑)、さらにムエタイとヨガ拳法の使い手が何故か封神に協力して挑んでくる。
で、この戦いがまた凄くて・・・ヨガ拳法の使い手は手が伸びるのよ。ビヨーンって。
頭が膿んできそうだが、大真面目です。これ、ストリートファイター2のダルシムの元ネタだったのね(笑)。
またムエタイの使い手は必ず闘う前にワイクーを舞うのよ。その間、相手はずーっと待っているのだ。大会の時はともかく、道場破りに来る時でさえ(笑)。舞う方も舞う方だがぼんやり待つ方もどうかしてる(笑)。
ムエタイを倒す方法がこれまた極悪(笑)。小屋におびき寄せて小屋の中に敷いた鉄板に火を放つのだ。ムエタイは裸足だから熱くて窓から逃げようとすると、主人公の弟子が槍で突いて外に出さないという、途方もなく卑怯な戦法(笑)。
ムエタイ、足の裏が焼けて立っていられずそのまま鉄板の上で絶命、観ているこちらも「おお、これが武術大会の時に参考にした卑怯な手口か!」と悶絶してしまうのだった(笑)。
封神との決戦も、ギロチン封じで竹をたてたところで待つ。まあ、このくらいは許そう。それが失敗すると、鳥屋に誘いこんで封神の聴覚を狂わせギロチン封じを狙う。まあこれも作戦だよな。しかし隠れたジミーを探す封神が耳をすませながら周りを見回すと、文字通り首が360度回転するのよ・・・エクソシストのリーガン以上に。達人恐るべし(笑)
さらに事前に手斧を発射する装置を仕込んだ棺桶屋に封神を誘いこみ、何個もドスドスぶち込むなんぞかなり卑怯なことこの上ない作戦なのだ(笑)。
ラストも絶対角度が違うのに、最後のワンパンチで、封神を天井から突き抜けさせ、棺桶にホールイン・ワンさせるのだ(笑)。ちなみにこのラストでジェンマの「南からきた用心棒」を想い出した人がいたら抱きしめたいぞ。
前述の通りジミー・ウォングは全くカンフーできないんで、アクションのキレは凄まじく悪い。おまけに片手を隠してるから動き辛そうなんだよね(笑)。
昔「スカイ・ハイ(The Man From Hong Kong)」っていうミル・マスカラスの入場テーマだったジグゾーの曲が主題歌の彼主演の映画を劇場で観たが、ブルース・リーに比べてルックスも動きも酷い彼のアクションにはガッカリし、その後まったく追いかけなかったことを想い出したのであった。
ちなみに映画より黒社会で名を上げたジミーさんだけど、映画にも出ている様子。現在の姿はこれ。恐~。そういう世界に身を置いてる目になっちゃってますな(笑)
というわけで彼のヘッポコカンフー、キル・ビルのGOGO夕張の鉄球の元ネタにもなっている空飛ぶギロチン、何より奇々怪々な登場人物に加えて、歪とも言える映画の構成そのものも含め、若き彼のサービス精神あふれるこの作品、酒飲ながらヘラヘラ観るのにはもってこいの怪作なのであります。
もちろんその奇々怪々ぶりは一見の価値あり!人によっては観て損は無いと思いますぞ。
テレビで放映したら迷わず録画するが、行きつけの中古屋で4800円でDVDを売っていたのは買わなくて正解であったかなあ・・・とさすがの自分も思うのであった(笑)。
では、その一端を予告編2種でご堪能あれ!