約3年に及ぶ大規模な改修工事を終えて、
ついに横浜美術館がリニューアルオープンを果たしました。
外観こそ大きな変化はありませんが、
グランドギャラリーに新たにエレベーターが取り付けられたり、
無料で楽しめる新たな展示室が誕生していたり、と、中身は変化しています。
何よりもっとも印象的な変化は、
館の内外のあちこちに、ピンク色があること。
これらのピンク色は、建物の石材の粒の色から採られているそうです。
個人的にはなんとなく、横浜美術館は「青」のイメージでした。
それだけに、正直なところまだ見慣れていませんが、
これから何度も通うことで、「ピンク」がしっくりくるようになるのでしょう。
そんなシン・横浜美術館のオープニングを飾るのは、
「3年ぶりに横浜美術館が帰ってきた」という意味が込められた展覧会。
その名も、“おかえり、ヨコハマ”です。
「おかえり」っていうのはこっちのセリフで、
横浜美術館的には「ただいま」じゃないの??
個人的にはそう思いましたが、そこはグッと飲み込みました。
と、それはさておきまして。
本展のキーワードは「ヨコハマ」。
全8章仕立てで横浜の歴史を辿る展覧会です。
それゆえ、本展は横浜で出土した土器や埴輪からスタート。
そして、横浜の歴史上で・・・いや、
日本の歴史上でも重要なトピックである、
ペリー来航や生麦事件に関する作品も紹介されています。
さらに、1859年に開港した横浜から、
世界へ輸出された工芸品も紹介されていました。
中でもとりわけ印象的だったのが、
初代宮川香山の《高浮彫牡丹ニ眠猫覚醒大香炉》です。
香炉の上で健気にポーズを取るネコちゃん。
その可愛らしさに惹かれて、ググっと近づいてみたところ。
顔はそこまで可愛くありませんでした。。。
化け猫というか、グレムリンというか。
目が合った瞬間、祟られそうな気がします。
さて本展では、歴史的資料や工芸品だけでなく、
もちろん横浜にまつわる美術品も数多く展示されています。
それらの中には、横浜で撮影された写真作品の数々や、
横浜の小学校での教師の経験のある片岡球子の絵画も。
さらには、36歳でこの世を去った夭折の画家、
松本竣介による《Y市の橋》シリーズも紹介されていました。
Y市とは、横浜市のこと。
横浜駅近くの月見橋を描いたシリーズなのですが、
実は、横浜美術館のコレクションには所蔵されていないそうで。
本展には、東京国立近代美術館や京都国立近代美術館、
岩手県立美術館や神奈川県立近代美術館、個人蔵のものが出展されています。
《Y市の橋》シリーズが横浜で勢ぞろいするのは、意外にも今回が初めてとのこと。
地味ながら(?)、本展の見どころの一つです。
また、3年ぶりの横浜美術館の復活ということで、
コレクションでも特に人気の作品たちが紹介されています。
大人の事情で画像は掲載できませんが、
ピカソやダリ、ミロの作品も展示されていましたよ。
なお、本展のメインビジュアルの一つにも選ばれている、
マグリットの《王様の美術館》はあえて低い位置に展示されていました。
今回リニューアルするにあたって、
『みなとが、ひらく』をミュージアムメッセージに、
どんな人でも温かく迎え入れたいという横浜美術館。
それゆえ、本展には「子どもの目でみるコーナー」を設けたそうです。
子ども向けの展覧会以外は、大人のためのモノ。
どこかで無意識にそう思っていた気がしますが、
このコーナーがその固定概念をいい意味で壊してくれました。
新生横浜美術館には期待しかありません!