先日まで東京都現代美術館にて、
大規模な高橋龍太郎コレクション展が開催されていましたが。
現在、天王洲にあるWHAT MUSEUMでは、
もう一人の(?)高橋さんによるコレクション展、
“T2 Collection「Collecting? Connecting?」展”が開催されています。
本展が初公開となるというT2 Collection(ティーツーコレクション)。
その現代美術コレクションを約6年かけて収集してきたのが、
株式会社ブレインパッドの共同創業者で、コレクターの高橋隆史さんです。
そんな高橋さんにとっての初の肖像画が、こちら↓
今注目のペインター・江上越さんが、
高橋さんと対話をする中で得た印象から描いたもので、
「雪の中の紳士」と「空から大地を俯瞰する鷹」のイメージが込められているとか。
何はともあれ、ただものではないことが、ひしひしと伝わってくるようです。
高橋さん曰く、コレクションを形成するつもりはなかったそうですが、
一目で引き込まれた作品や、作家との出逢いの中で気に入った作品を1点、
また1点と求めていくうちに、いつしかコレクターと呼ばれるようになってしまったのだとか。
なお、その記念すべき第1号となった作品は、
フランスの画家ベルナール・フリズの《Mora》だったそうです。
この作品以外にも、抽象的な絵画は数点紹介されていましたが。
高橋さんがとりわけ共鳴するのが、
コンセプチュアルなアート作品だそうで、
コレクションの多くは、それらの作品が占めています。
それこそが、T2 Collectionの最大の特徴と言えましょう。
今回紹介されていたT2 Collectionの作品の中で、
個人的に印象に残っているのは、やんツーさんによる作品。
僕らの世代には涙が出るほど懐かしいミニ四駆を使った作品です。
ミニ四駆は本来、スイッチを入れると、
猛スピードでダッシュするわけなのですが。
やんツーさんによって改造されたこの作品、
その名も、《遅いミニ四駆》は文字通り、遅くノロノロとしか走りません。
いかに速く走るか。
そのためだけに生まれてきたミニ四駆がゆっくりと動く姿は、
熾烈な競争社会からあえて距離を置いているかのように思えました。
今風に言えば、スローライフというやつですね。
続いて印象的だったのが、顧剣亨(こ けんりょう)さんによるこちらの作品。
一見、巨大な写真作品のように思えますが、
実は、複数の写真を糸状のピクセルの連なりに分解して、
それらを織物のように、手作業で編み込んで制作した作品です。
顧さんは、この独自の技法を、
「デジタルウィービング」と名付けています。
デジタルでもあり、アナログでもある作品です。
それからもう一つ印象的だったのが、丹羽良徳さんによるこちらの作品。
一見、何かの契約書のようですが・・・・・いや、
“契約書のよう”ではなく、契約書そのものでした。
2022年の秋にモスクワ市近代美術館で、
丹羽さんの個展が計画されていたのだそう。このウクライナ侵攻に反対の意思表示として、彼は展覧会しかし、この年に、ロシアはウクライナに侵攻しました。
それに対する反対の意思表示として、彼はボイコット。
プーチン政権が崩壊するまで、ロシアの公的美術館で展示をしないことを決意したそうです。
それに当たって、ウクライナ侵攻以前に丹羽さんが行なった、
展覧会のリサーチ費用を返還してもらうべく、美術館に請求書を送りました。
それが、この請求書なのです。
なお、もちろんただの請求書ではありません。
返還してもらうお金の支払先は、丹羽さんの口座ではなく、
ウクライナ国立銀行に開設されたウクライナ軍を支援する特別口座となっています。
アーティストならでの発想に、思わず唸らされました。
ちなみに、WHAT MUSEUMでは現在、
“奥中章人「Synesthesia ―アートで交わる五感―」展”が同時開催中です。
「空気と水と光」を題材に作品を制作する美術家、
奥中章人さんが本展のために特別に制作したという、
直径12mにも及ぶバルーン状のインスタレーション作品が展示されています。
このレインボーに輝くバルーンは触って、その感触を楽しむこともOK!
さらに、内部に入ることもOKとなっています。
なお、内部には、約3トンの水が詰まった、
特製の水枕(もはやウォーターベッド?)も完備。
その上に寝そべって、プカプカすることもできます。
T2 Collection展でたくさんのコンセプチュアルアートを観て、
脳内がヒートアップしてしまった際には、こちらでクールダウンしましょう。
そして、身体と頭がしっかり休まったら、またT2 Collection展へ。
これを何セットか繰り返せば、“ととのう”こと請け合いです。