記念すべき20回目となるM-1グランプリが行われた今年2024年。
東京都現代美術館で定期的に行われているグループ展、
“MOTアニュアル”も今年、同じく20回目を迎える運びとなりました。
今回のタイトルは、“MOTアニュアル2024 こうふくのしま”です。
本展のラストには、東京都庭園美術館のコレクションのうちの一つで、
20世紀前半にアメリカで活躍した国吉康雄の《幸福の島》が展示されてはいましたが。
本展の参加作家の出展作品とは、特に関係は無さそうでした。
おそらく参加作家はおのおのが考える「こうふくのしま」をテーマにしているのでしょう。
さて、そんな今回の参加作家は全部で4名です。
まず紹介されていたのは、写真と小説の二刀流、清水裕貴さん。
清水さんは、土地の歴史や伝承といったものをリサーチし、
写真とテキストを組み合わせ、架空の世界を作り上げるアーティスト。
本展の出展作《星の回廊》のために、中国の大連や千葉の稲毛を取材したそうで。
会場ではそれらの写真とともに、架空の貝の一族の物語が朗読されています。
架空の話だとは頭ではわかっているのですが、
実景を映した写真が飾られていることで、妙なリアリティがあり。
どこまでがフィクションなのか?
架空と現実が入り混じってしまいました。
ついでに、下のフロアで開催中の展覧会、
“坂本龍一 | 音を視る 時を聴く”のサウンドも入り混じっていました。
続いて紹介されていたのは、主にフレスコ画で制作を続ける川田知志さん。
本展では、新作となるフレスコ画を発表しています。
この空間の壁一面が新作。
もちろんこの場での描き下ろし。
床にはその痕跡が残っていました。
なお、もう十分完成しているように思えましたが、
1月下旬まで壁画の制作は続けていく予定とのこと。
運が良ければ、制作中の川田さんを見られるかもしれません。
ちなみに。
巨大な壁画ということで、なんとなく勝手に、
メキシコの風景をモチーフにしているのかと思ったのですが。
日本の郊外の風景を描いているのだとか。
なるほど。そう言われてみれば、青い線のようなものは送電塔でしょうか。
3人目は一旦、飛ばしまして。
本展のラストを飾るのは、庄司朝美さん。
現代絵画の公募展「FACE展」2019年のグランプリに輝いた注目の画家です。
本展では初公開となる大型作品を中心に、新作・近作が展示されています。
ちょっと・・・いや、だいぶ不気味で、
でも、なんか不思議な温かみも感じられる。
そんな独特の味わいのある絵画です。
なお、会場内の椅子に、なぜか双眼鏡が置かれていました。
ということは、きっと双眼鏡でないと観れない作品があるということ。
どこにあるかはネタバレしませんが、
これから訪れる方は、どうぞお見逃し無きように。
さて、本展の出展作家のうち個人的にイチオシなのが、臼井良平さん。
展示空間には、日常的に目にするどこにでもあるものが建ち並んでいます。
それらに近づいてよくよく見てみると、そのほとんどに、
これまたどこにでもあるようなペットボトルが置かれていました。
ラベルこそありませんでしたが、
蓋の色からして、市販の水のペットボトルのようです。
・・・・・・と思いきや!!!
なんとこれらすべて、ガラスで作られているのだそうです。
その衝撃の事実を突きつけられて、思わず二度見三度見、いやガン見。
ただ、よっぽどマジマジと観ない限り、
これがガラスだとは到底思えませんでした。
見れば見るほど、感覚がバグりました。
なお、臼井さんの手にかかれば、
ビニール袋に入った水もこの通り完璧に再現。
どうやったら、ガラスでペットボトルとビニール袋の違いを表現できるのか??
考えたとて、僕に答えが出せるわけはありませんが、
実際にガラスで作ってみようというわけではないですが、
臼井さんの作品を前にして、うんうんと考え込んでしまいました。
多少、知恵熱が出たような。
反射的にこれで頭を冷やそうかと思いました。