アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-タイトル  明日行きたくなる美術展情報をあなたに

星星星(3ツ星)
  ・マティス展  東京都美術館(~8/20)
もうすぐ…ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―  国立工芸館(~6/11)
もうすぐ…ルーヴル美術館展 愛を描く  国立新美術館(~6/12)
  ・部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで  ポーラ美術館(~7/2)
  
星星(2ツ星)
NEW木島櫻谷―山水夢中  泉屋博古館東京(~7/23)
NEW開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー  パナソニック汐留美術館(~6/25)
  ・齋正機-只見線とそれぞれの鉄道物語-  成川美術館(~7/19)
  ・谷川俊太郎 絵本★百貨展  PLAY! MUSEUM(~7/9)
  ・ART de チャチャチャ―日本現代アートのDNAを探る―  WHAT MUSEUM(~8/27)
もうすぐ…NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」  三井記念美術館(~6/11)
  ・ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会  森美術館(~9/24)
  ・ダリとハルスマン  諸橋近代美術館(~6/25)
もうすぐ…大阪の日本画  東京ステーションギャラリー(~6/11)
  ・青空は、太陽の反対側にある  原美術館ARC(~9/3)
  ・プレイプレイアート展  ワタリウム美術館(~7/23)
もうすぐ…ブルターニュの光と風  SOMPO美術館(~6/11)
もうすぐ…憧憬の地 ブルターニュ  国立西洋美術館(~6/11)
  ・恐竜博 2023  国立科学博物館(~6/18)
  ・芸術家たちの南仏  DIC川村記念美術館(~6/18)
  ・The Original  21_21 DESIGN SIGHT(~6/25)
  ・ピカソのセラミック―モダンに触れる  ヨックモックミュージアム(~9/24)

星(1ツ星)
NEW顕神の夢 ―幻視の表現者―  川崎市岡本太郎真美術館(~6/25)
NEW美しき漆 日本と朝鮮の漆工芸  日本民藝館(~6/18)
NEW写真の中の子どもたち、記憶と想像への旅  御代田写真美術館(~6/18)
NEW生誕120年 大沢昌助展  練馬区立美術館(~6/18)
  ・染織図案とあかね會 ―その思いを今につむぐ―  丸紅ギャラリー(~7/31)
  ・東京大学・若林鉱物標本  東京大学総合研究博物館(~9/1)
  ・吹きガラス 妙なるかたち、技の妙  サントリー美術館(~6/25)
  ・麻生三郎展 三軒茶屋の頃、そしてベン・シャーン  世田谷美術館(~6/18)
  ・竹久夢二 描き文字のデザイン  竹久夢二美術館(~6/25)
  ・伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展  弥生美術館(~6/25)
  ・河本五郎―反骨の陶芸  菊池寛実記念 智美術館(~8/20)
  ・ただよう記憶の世界  東京都渋谷公園通りギャラリー(~6/25)
  ・没後40年 朝井閑右衛門展  横須賀美術館(~6/18)
  ・TOPコレクション セレンディピティ  東京都写真美術館(~7/9)
  ・セイコーミュージアム銀座
  ・それは知っている:形が精神になるとき  金沢21世紀美術館(~11/5)
  ・MOTコレクション 被膜虚実/Breathing めぐる呼吸  東京都現代美術館(~6/18)
もうすぐ…ヴォルフガング・ティルマンス「Moments of Life」展  エスパス ルイ・ヴィトン東京(~6/11)
  ・町子の動物ワールド  長谷川町子記念館(~7/23)

2014年に、25年ぶりとなる大回顧展が、

泉屋博古館東京(当時は泉屋博古館分館)で開催されたのを機に、

日本美術ファンの間でブレイクを果たした京都の画家・木島櫻谷(1877~1933)

その展覧会が契機となって、未公開や新発見の木島櫻谷作品の情報が多く寄せられたそうで。

2018年には、再び同館にて、

初公開の作品を中心に紹介する大々的な木島櫻谷展が開催されました。

そして、今年2023年。

泉屋博古館東京で三たび、木島櫻谷展が開催されます。

その名も、“木島櫻谷―山水夢中”

 

 

 

これまで、動物画の名手として紹介される機会が多かった木島櫻谷。

しかし、実は、生涯にわたって、山水画も描き続けていたそうです。

今回の展覧会では、そんな木島櫻谷の山水画に着目。

初期から晩年まで、木島櫻谷による山水画が日本中から集結しています。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

今展の主役は何と言っても、「写生帖」。

 

 

 

櫻谷の没後、櫻谷の旧居・アトリエであった、

櫻谷文庫から約600冊の写生帖が発見されました。

ただ、あまりにボロボロだったため、これまで公開される機会がなかったそうです。

しかし、昨年、公益財団法人住友財団の助成による修理が完了。

今回、晴れてまとまった形で展示されることとなりました。

写生帖と聞くと、ただのスケッチを思い浮かべるでしょうが、

写生を特に大事にしていたという櫻谷の写生は、もはや写生にあらず(←?)。

どの写生も完成度が高く、作品レベルでした。

 

 

 

ちなみに。

写生帖の中には、こんなページも。

 

 

 

その書き出しには、こう書かれています。

 

「君は生涯のよき友。千里の道をともにし、筆硯の傍を離れない。

 高遠な山岳、広大な河海、この世の万象をすべて収める君。

 いつの日か、画家として大成する道をともに目指そう―」

 

つまり、こちらは櫻谷が写生帖に語り掛けている文章なのです。

それも、友達として。

人間や生き物以外の友達がいるのは、

木島櫻谷か『キャプテン翼』の大空翼くらいなのものでしょう。

 

 

また、もう一つ見逃せないのが、南禅寺の塔頭、南陽院の襖絵です。

 

 

 

こちらは、近年、再発見されたもので、

昨年初めて現地で特別公開されて、話題となりました。

そんな襖絵が寺外で初公開。

普段は南陽院自体が非公開なので、これは貴重な機会です。

前後期で入れ替えがあるそうなので、

できれば前後期ともに観ておきたいところですね。

星星

 

 

さらに、再発見と言えば、

約80年前に公開されたきり行方不明となっていた作品で、

2019年に京都の福田美術館でお披露目され話題となった《駅路之春》も出展されています。

 

 

 

なお、その奥に見えているのは、櫻谷ファンにはお馴染みのあの《寒月》

 

 

 

櫻谷の代表作中の代表作が、

6月18日までの期間限定で出展されています。

 

 

 

一見すると、モノクロームの世界に思えますが、

実は、細部に鮮やかな青や緑が使われています。

実は意外と色彩豊かな作品なのです。

個人的には、櫻谷作品の中で断トツで好きなのですが、

日本を代表する文豪・夏目漱石は、新聞記者時代にこんな論評をしていたそう。

 

「木島櫻谷氏は去年沢山の鹿を並べて二等賞を取った人である。

 あの鹿は色といい眼付といい、今思い出しても気持ち悪くなる鹿である。

 今年の《寒月》も不愉快な点に於いては決してあの鹿に劣るまいと思う。

 屏風に月と竹と夫から狐だかなんだかの動物が一匹いる。

 其月は寒いでしょうと云っている。竹は夜でしょうと云っている。

 所が動物はいえ昼間ですと答えている。

 兎に角屏風にするよりも写真屋の背景にした方が適当な絵である。」

 

夏目漱石とはお友達になれない気がしました。

 

 

ちなみに。

櫻谷の動物画ファンの皆様、ご安心を。

山水画にフォーカスした展覧会ではありますが、

《寒月》以外にも、動物が登場する絵も数点ありました。

それらの中で一番印象に残っているのが、《月夜の兎》という一枚。

 

 

 

猫の集会ならぬ、ウサギの集会なのでしょうか。

月夜の下に、たくさんのウサギが集まっています。

ウサギは寂しいと死んじゃうそうですが、

これだけたくさんのウサギがいれば、その心配はないですね。

なお、若干のディストピア感も漂っています。

もしかしたら、ウサギだけが生き残って、

人類は皆、死んじゃったのかもしれません。

 

ディストピア感といえば、《峡中の秋》も。

 

 

 

こちらは、櫻谷が官展に出展した最後の作品とのこと。

下絵の段階では、ポツンと一軒家が描かれているものの、

完成作では、その人家は消されてしまっているのだそうです。

まさに、秘境というべき光景。

仙人やらシシガミやら人智を超えた存在が住んでいそうな光景です。

 

 

 

 

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