岡本秋暉  百花百鳥に挑んだ江戸の絵師 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、千葉市美術館で開催されているのは、

“岡本秋暉  百花百鳥に挑んだ江戸の絵師”という展覧会。

江戸時代後期から末期に活躍した絵師、

岡本秋暉(しゅうき)の実に18年ぶりとなる回顧展です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

出展作は、前後期合わせて約90点!

ちなみに、その大半を占めているのは、

世界一の秋暉コレクションを擁する摘水軒記念文化振興財団の所蔵品です。

 

タイトルに、“百花百鳥に挑んだ”とありますが、

岡本秋暉は、その生涯で多くの花鳥図を残しています。

 

 

 

秋暉は、「鳥安」という小鳥店に通い詰めては、

珍しい鳥の生態を観察し、写生を繰り返していたそう。

 

 

 

それだけに、どの鳥にもリアリティがあり、

今にも動き出しそうな、生命感に溢れています。

そんな秋暉がもっとも得意とした鳥が、孔雀。

孔雀の名手として知られ、「秋暉の孔雀」という通り名もあったほど。

 

もちろん本展の冒頭で紹介されていたのも、「秋暉の孔雀」。

25歳の時に描かれた孔雀の絵で、

現存知られる秋暉の有年紀作品の中では最も早期のものとのこと。

 

 

 

これでも充分上手い気もしますが、

円熟期の「秋暉の孔雀」と比べてしまうと、

確かに、まだ若さが感じられます。

なお、その円熟期の「秋暉の孔雀」が、こちら↓

 

 

 

精緻な描写力もさることながら、

金泥や緑青、群青といった最高峰の画材が、

ふんだんに使われており、圧巻の一言。

 

 

 

「秋暉の孔雀」の最高傑作、

ひいては、日本美術界における孔雀の絵の最高傑作といえましょう。

ネームバリューこそ差がありますが、

作品のレベルだけでいえば、「若冲の鶏」とほぼ互角。

この孔雀の絵を観るだけでも、展覧会を訪れた甲斐はありました!

星星

 

 

ただ一つだけ、個人的にどうしても気になってしまったことがあります。

それは、25歳の時に描かれた孔雀も、脂の乗った時期に描かれた孔雀も、

さらに、小田原城の正面玄関を飾ったとされる杉戸絵の孔雀も。

 

 

 

そして、その他もろもろの孔雀も。

 

 

 

羽根広げないのかよ!!

 

一回くらい開けよ。

孔雀の見せ場(?)なんだから!

確かに、掛軸は縦長の画面なので、

開きたくても開けなかったのかもしれません。

でも、杉戸絵や屏風絵、襖絵だってあるんだから。

もし、岡本秋暉と飲む機会があったら、

「秋暉の孔雀のちょっと羽広げるとこ見てみたい」と、

コールをかけてやろうと思います(←?)。

 

 

ちなみに。

展覧会では、鳥以外のモチーフを描いた作品も紹介されています。

 

 

それらの中でも特に見逃せないのが、こちらの1枚。

秋暉の手がけた数少ない肖像画のうちの一つです。

 

 

 

描かれているのは、“二宮金次郎”こと二宮尊徳。

江戸時代末期に600もの農村復興に尽力した人物です。

なんでも二宮尊徳は、肖像画を描かれるのが嫌いだったようで、

現存するものがほぼ無く、そういった意味でも貴重な作品といえます。

 

 

 

しかしまぁ、肖像画を描かれるのが嫌いだったというのに。

幼少期の姿が彫像にされ、その上、全国の小学校に設置されているだなんて。

皮肉にもほどがある話ですよね。

 

と、それはさておき。

それでは、この絵は、一体どうやって描かれたのでしょう。

実は、江戸の小田原藩藩邸で対話中の様子を、こっそり描いたものなのだとか。

本展では、この肖像画の完成までのプロセスがわかる画稿も紹介されていました。

 

 

 

二宮尊徳の顔が、ぷよぷよみたいになっていました。

4つ揃ったら消えるのでしょうか。

 

 

 

さすがに、こんなに大量に顔が描かれたら、

しかも、ほとんど同じような表情で描かれたら、

描かれるのに抵抗がない人でも、肖像画が嫌いになっちゃいそうです。

 

 

 

 

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