伊藤潤二展 誘惑 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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『富江』や『うずまき』で知られるホラー漫画の鬼才・伊藤潤二さん。

その初となる大規模個展“伊藤潤二展 誘惑”が世田谷文学館で開催されています。

 

 

 

展覧会の冒頭で待ち受けていたのは、もちろん富江。

長い黒髪と左目の泣きぼくろが特徴的な絶世の美少女です。

 

 

 

その性格は傲慢で身勝手、まるで女王様のよう。

そんな富江と出逢った男は彼女の魔性に惹かれてしまいます。

そして、もれなく富江に恋する男たちは彼女を殺してしまうのです。

しかし、富江は決して死ぬことはなく、

殺されたとしても何度でも蘇ることができます。

しかも、もしその身体を切り刻もうものなら、

それぞれのパーツから、別の富江が生まれる始末。

そう、富江は増殖するのです。

 

 

 

そんなホラー漫画界最恐のキャラクターが生まれたのは、

伊藤さんが愛読していた少女向けホラー漫画雑誌『ハロウィン』に、

敬愛する漫画家・楳図かずおさんの賞が創設されたと知ったのがきっかけ。

当時は、歯科技工士として仕事をしていたそうですが、

楳図さんにアピールできればと、漫画を投稿したところ、

なんと、第1回楳図かずお賞で佳作入選(第一席)してしまったそう。

その漫画が何を隠そう、『富江』だったのです。

 

さて、そんな『富江』の貴重な原画を筆頭に、

イラストや下絵、資料など、実に600点以上が展示されています。

妖艶かつグロテスクな伊藤潤二ワールドが、

これでもかというくらいに味わえる展示空間となっていました。

 

 

 

伊藤潤二さんに耐性のある方であれば、まったく問題ないでしょうが。

耐性がないと、そのグロテスクぶりはかなりハードなレベルです。

 

 

 

自分は、ホラーは苦手なので、

正直なところ、薄目で鑑賞しました。

それでも食後すぐに訪れてしまったことを軽く後悔しました(笑)。

 

ちなみに。

平日に訪れたのですが、僕以外の人は、

ひと目で伊藤潤二ファンとわかるタイプの方ばかりで。

これはおそらく、僕の見間違いではないと思うのですが、

皆さま、原画やイラストにかぶりつくように鑑賞していました。

それも、ニタニタしながら!

その光景が何よりもホラー。

伊藤潤二の漫画よりも、伊藤潤二の世界でした(←?)。

星

 

 

なお、この展覧会を通じての一番の収穫は、

伊藤潤二さんご自身は、怖い人でないというのを知れたこと。

 

 

 

むしろ、お笑いのポテンシャルは高く、

エッセイ漫画において、そのユーモアセンスを遺憾なく発揮していました。

 

 

 

また、展示作品によっては、

それに対する本人自身のキャプションも。

 

 

 

 

その文面を読むに、自虐ネタがキラリと光っていました。

 

 

 

そうそう、会場に設置されていたといえば、

辻占いをテーマにした漫画『死びとの恋わずらい』にちなんで、

伊藤さん発案による恋みくじを引けるコーナーもありましたっけ。

 

 

 

嫌な予感しかしませんが、

せっかくなので、引いてみました。

 

 

 

大凶って・・・。

人生で引いた全おみくじの中で、

もっとも絶望的な気持ちになりました。

 

 

最後に、どうしても気になってしまった作品をご紹介。

今年2月に発売されたばかりの怪談絵本、

『こっちをみてる。』の表紙に使われた原画です。

 

 

 

センターにいるひと際デカい顔が、

俳優の陣内孝則さんに見えて仕方ありません。

 

 

 

 

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