2020年より5年間5回にわたって、
三鷹市美術ギャラリーでは、収蔵作品展が開催されてきました。
その最大の特徴は、収蔵作品を、
時代や国籍、ジャンルに分けて紹介するのではなく、
作家名の五十音順に紹介するというものです。
そんな収蔵作品展が、ついに今年の、
“三鷹市美術ギャラリー収蔵作品展Ⅴ”でファイナルを迎えます。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
靉嘔(あいおう)さんをトップバッターに、
あ行の作家から紹介が続いてきましたが、
気づけば、いつのまにやら、は行に到達。
前期と後期で一気に、わ行の和田賢一の作品まで紹介するようです。
本展の前期の目玉と言えるのは、やはり横尾忠則さんの作品でしょう。
今ちょうど東京都美術館にて、
大規模なデ・キリコ展が開催されていますが、
敬愛するデ・キリコをモチーフにした作品が3点展示されていました。
デ・キリコよりも、デ・キリコらしいといいましょうか。
もし、この3点がデ・キリコ展に紛れていても、違和感は覚えない気がします。
さらに、本展では、「具体」のメンバーの一人である元永定正や、
ルポルタージュ絵画という独自の社会派的表現を確立した山下菊二、
新版画を代表する吉田博を父に持つ吉田穂高の作品も紹介されています。
また、平面作品に混じって、1点だけ、
日本を代表する抽象彫刻家・最上壽之の立体作品も紹介されていました。
最上壽之といえば、横浜美術館のほど近くに設置された、
パブリックアートの《モクモク・ワクワク・ヨコハマ・ヨーヨー》を筆頭に、
《ル、ル、ル、ル》や《バッ ドラネコミャオー》、《トッピンシャン》など、
作品名に独特なネーミングセンスを発揮する作家としてもお馴染みです。
なお、三鷹市美術ギャラリーが所蔵する、
この作品のタイトルは、《ミテキタヨウナ ウソヲツク》でした。
さすがのネーミングセンスです。
さてさて、本展を通じて1つ発見したことがありました。
それは、五十音の名前が近い作家は、なんとなく作風が似ているということ。
例えば、こちらは依田洋一朗さんの《ハーフムーン・ホテル》という作品。
なんとなく。
あくまで、なんとなくですが、
同じ「よ」で始まる横尾忠則さんの作風と通ずるところがある気がします。
他にも、福島修子さんと堀浩哉さんをはじめ、
は行からわ行にかけては、
抽象絵画を描く画家の割合が多いようでした。
これは、同館の所蔵作品に限ってのことなのか、
はたまた、美術界全体的に当てはまることなのか。
これを機に検証してみたいと思います。
ちなみに。
所蔵作品の中で、や行の山本正の作品の数が多かったため、
三鷹市美術ギャラリーの展示室にはどうしても入りきらなかったらしく。
同館から5分ほどの距離にある桜井浜江記念市民ギャラリーにて、
“山本正展 具象 ・ 抽象 ・「具象」”という展覧会形式で紹介されています。
その中で特に印象に残っているのが、《S氏の肖像》という一枚。
どことなく、セザンヌの《アンブロワーズ・ヴォラールの肖像》を彷彿とさせます。
全体的に、ただものではないオーラが漂っている感じでしたが。
顔だけアップにして観てみると・・・・・
懐かしの“のまネコ”(出典:『恋のマイアヒ』)のよう。
ゆるキャラに見えてきました。