約2年にわたる長期改修工事を終えて、
今年4月にリニューアルオープンした大阪市立東洋陶磁美術館。
そのリニューアルオープン記念として開催中なのが、
“シン・東洋陶磁―MOCOコレクション”という展覧会です。
ほぼ間違いなく、あの映画監督による、
最近の一連のシリーズを意識したネーミングでしょう(笑)。
ただ、展覧会のタイトルこそ、若干ちょけていますが、
展覧会自体は王道も王道で、大阪市立東洋陶磁美術館のコレクション、
通称、MOCOコレクションの中から選りすぐりの名品約380点を紹介するものです。
数あるMOCOコレクションの中で、
何と言っても見逃せないのが、国宝の《油滴天目茶碗》。
本展のメインビジュアルにも使われている同館のマスターピースです。
今回のリニューアルオープンにあたって、
その魅力を最大限に引き出すための専用独立展示ケースが導入されました。
《油滴天目茶碗》そのものが美しいのは当然として、
下に敷かれた鏡面に映った姿も、ため息ものの美しさ。
逆さ富士ならぬ、逆さ《油滴天目茶碗》。
文字通り、国宝級の美しさでした。
展覧会には《油滴天目茶碗》の他にも、
世界でも数が少なく、日本では唯一となる汝窯の《青磁水仙盆》や、
前田家伝来の重要文化財《木葉天目茶碗》、
俗に「法花」と呼ばれるやきものの中で、
世界最高峰とされている《法花花鳥文壺》など、
世界的に見ても貴重な東洋陶磁の数々が、
休む間もなく(?)、次から次へと登場します。
さすがはリニューアルオープン記念展。
お笑い番組に例えるならば、
『新春!爆笑ヒットパレード』のような豪華さ、
華やかさを感じられる展覧会でした。
しかも、ただ名品を並べるのではなく。
「天下無敵-ザ・ベストMOCOコレクション」と題された展示室では、
コレクションと、写真家・六田知弘さんによる「壁の記憶」シリーズ(※)を併せて展示。
(※世界各地の民家の壁を撮影した作品シリーズ)
現代写真とのコラボという斬新なスタイルで、東洋陶磁の名品を紹介しています。
この発想は無かった!
まったく違うジャンルのものなのに、
不思議なくらい、しっくりと調和しています。
この展示スタイルは、まさに“シン”!
陶磁器、それも東洋陶磁は、一般的に地味と思われがちですが、
シン大阪市立東洋陶磁美術館が、そのイメージを払拭してくれそうな気がします。
そんな期待も込めて、3ツ星。
ところで。
MOCOコレクションの作品には、名品だけでなく、
迷品と呼びたくなるものも少なくありませんでした。
まずは、高麗時代12世紀の《青磁 羅漢像》。
モチーフは羅漢とのことですが、
顔がやや溶けているため、ゾンビマスクのように見えます。
アメリカの犯罪者がかぶるタイプの。
続いて紹介したいのは、18世紀朝鮮の《辰砂 蓮花文 壺》。
「どこが鶴やねん!」と声を大にして言いたくなります。
そもそも似せる気があるのだろうか。
しばらく観ていたら、足のあげ方すら腹立たしくなってきました。
似てないにもほどがある鳥と言えば、
朝鮮時代15世紀前半の《粉青象嵌 鳥魚文 瓶》も。
キャプションによると、
「飄々とした鷺、ユニークな鴨」とのこと。
・・・・・・どこがどう??
ムーミン谷の新たなキャラクターかと思いました。
ちなみに。
MOCOコレクションに潜む数々のゆるキャラの中で、
個人的にイチオシしたいのが、《白磁 馬形明器》です。
全体からほのかに漂う悲壮感。
こんなにも負け顔な馬を初めて目にした気がします。
この子の性格は、おそらくネガティブなのでしょう。
『ちいかわ』の仲間に加えてあげてほしいものです。
最後に、個人的に勉強になったことを。
本展の出展作品の一つに、《青磁陰刻 花文 渣斗》なるものがありました。
見慣れない形のこちらの器は、「渣斗(さと)」と呼ばれているそうで。
なんでも飲み残しのお酒を捨てる用の器なのだとか。
なるほど、だから、口が異常の広いのですね。
マクドナルドやスターバックスなどの飲み残し入れと同じシステム!