絵本の夏、板橋の夏。
今年も板橋区立美術館では、毎年恒例の、
“イタリア・ボローニャ国際絵本原画展”が開催されています。
イタリア・ボローニャ国際絵本原画展とは、
毎年春にボローニャで開催される児童書のイラストを対象にした国際コンクール。
子どもの本のために描かれたものであれば、
ベテランも新人も関係なく、誰でも応募可能となっています。
58回目となる今年は、81の国と地域から3520名の応募があり、
厳選なる審査の結果、日本人4名を含む32の国と地域の78名が入選しました。
本展では、その入選作すべてが展示されています。
なお、入選作すべてではないですが、例年同様に、
絵本になっているものは、その絵本も併せて紹介されており、
それらは、実際に手に取って楽しめるようになっています。
原画と、印刷されたものとを、見比べてみることができるのも、
イタリア・ボローニャ国際絵本原画展の醍醐味の一つといえるでしょう。
なお、嬉しいことに、昨年までと違い、
会場内での写真撮影が可能となっていました。
気に入った作品があれば、ルールを守って撮影を楽しみましょう。
さて、ここからは、本年の入賞作品の中で、
個人的に印象に残っているものをいくつかご紹介。
まずは、韓国のパク・ミランによる『みんな音楽』から。
一瞬、“どこに音楽要素が?”と、疑問符が浮かびましたが、
よく観てみると、黄色く塗られた箇所が楽器や音楽に関する記号になっています。
このままポストカードにして欲しいくらいに、
どのイラストも、洒脱なセンスに溢れていました。
洒脱なセンスといえば、負けていないのが、
フランスのジュリー・エスコリザの『のび のびのび』です。
発想力は、シュルレアリスムの巨匠・マグリットを彷彿とさせるものがあり、
画風は、ポスターデザインの巨匠・サヴィニャックを彷彿とさせるものがありました。
まさに、2人の巨匠のいいとこどり。
言語がわからずとも、ビジュアルだけで、
ちゃんとユーモアが伝わるのが、素晴らしいです。
逆に、まったく伝わってこなかったのが、
イタリアのジョヴァンニ・コラネーリによる『ブロブ』。
一体、黄色いコイツは何者なのか。
気になって気になって、仕方ありませんでした。
なかまに なりたそうに こちらをみるな!
なお、おそらく偶然なのでしょうが。
イタリアのマルゴー・ロマーノの『プール』に、
メキシコのマリアナ・ビリャヌエバの『ライフセーバー』に、
そして、日本の矢部雅子さんの『テイクユアマークス』に、
と、入選作品78点のうち実に3点が、プールに関するものでした。
年々、地球温暖化が進んでいるため、
人々はなんとなく、プールを欲しているのでしょうか。
そんな深層心理の表れなのかもしれません(←?)。
ちなみに。
ボローニャ国際絵本原画の入選者の中から、
35歳以下を対象に毎年1名が選ばれる「ボローニャSM出版賞」、
その昨年の受賞者であるアンドレア・アンティノーリによる新作絵本、
『ある夜に』の原画も本展では、特別に展示されています。
さらに、本展では、ボローニャ繋がりで、
こちらも著名な絵本賞である「ボローニャ・ラガッツィ賞」において、
2024年に特別部門で受賞した下田昌克さんの『死んだかいぞく』の原画も特別展示。
こちらは、1ページ目で主人公の海賊が殺される、
という絵本史上もっとも衝撃的な展開で始まる一冊。
最初にいきなり主人公が死んでしまうだなんて、
『幽☆遊☆白書』で浦飯幽助が車に轢かれて死んだ以来の衝撃です。
イラストのタッチも、どことなく“福本伸行み”があります。
この絵本を読んで育つ子どもの将来が、ある意味楽しみです。
ちなみに。
板橋区立美術館の毎年夏の恒例といえば、
イタリア・ボローニャ国際絵本原画展ともう一つ。
毎年このシーズンになると、のぼり旗が新調されます。
最新版ののぼり旗に掲げられていたのは、こんな言葉でした。
「ハコ推し」という言葉を使いこなすなんて。
館内にきっと、熱烈なアイドルファン、
もしくは、アニメファンが一人はいるはずです。