現在、ポーラ美術館にて、ロニ・ホーン展以来、
3年ぶり2度目となる現代アーティスト展が開催されています。
その名も、“フィリップ・パレーノ:この場所、あの空”。
フランスを代表する現代アーティスト、
フィリップ・パレーノによる大型展覧会です。
ちなみに、パレーノの日本の美術館での個展は、
2019年にワタリウム美術館で初めて開催されています。
本展は、彼の日本の美術館での2度目の展覧会にして、過去最大規模のものです。
まず、展覧会の冒頭を飾るのは、
新作の《私の部屋は金魚鉢》というインスタレーション作品。
外光を取り込んだ展示室全体に、魚がプカプカと浮かんでいます。
そんなわけはないことは、頭では理解しているのですが、
幾度となく、マジで巨大な金魚鉢や水槽の中にいる錯覚に陥りました。
ドン・キホーテの入り口にあるような。
もちろん、ぷかぷか浮いている魚は本物ではありません。
パレーノがオリジナルで制作した魚バルーンの中をヘリウムガスで満たしたものです。
なお、これらのバルーンには、お手触れOK。
ちょんと触るだけで、気持ちよさそうにぷかぷか泳ぎ出す魚たち。
その姿に大いに癒されました。
そうそう、バルーンといえば、
こんなインスタレーション作品も。
こちらは、パレーノの代表的な「ふきだし」シリーズの最新作。
《ふきだし(ブロンズ)》と名付けられた本作の天井には、
タイトル通り、ブロンズ色のふきだし型バルーンが大量に浮かんでいます。
魚のバルーンとは違って、
ふきだしのバルーンたちはぎっしりと密集し、窮屈そう。
人々のうっぷんが溜まりに溜まっているような印象を受けました。
もしかしたら、ふきだしバルーンの一つくらいには、
「増税メガネ」というようなフレーズが書かれていたかもしれません。
また、本展のハイライトともいうべきは、《マリリン》。
ポーラ美術館の新収蔵品となった映像作品です。
こちらは、マリリン・モンローが主演する映画『七年目の浮気』のために、
一時住んでいたというニューヨークのホテル部屋を舞台に撮影されたもの。
映像の中には、一切、マリリンの姿形は登場しませんが、
彼女の声や筆跡を最新テクノロジーによって再現することで、
その姿を暗に浮かび上がらせようとする作品となっています。
ちなみに。
この映像作品が終わると、
展示室の窓を覆っていたシェードが上がり始め・・・・・
その外に設置された謎の機械が姿を現しました。
《ヘリオトロープ》と名付けられたこの大型作品は、
最新鋭のコンピュータプログラムで制御されているそうで。
オレンジ色のミラーで太陽光を捉えては、
その反射した光を、展示室に取り込みます。
基本的には、展示室には直射日光はご法度。
《ヘリオトロープ》は、そのタブーをあえて犯しています。
また、こちらの展示室内には、もう一つタブーなものが取り入れられていました。
巨大な雪の塊です。
思わず本物と見間違えるほどでしたが、よくできたニセモノの雪だまりとのこと。
箱根の残雪をイメージして制作されたものとのことです。
この他にも、パレーノの代名詞というべき《マイキー》の最新版をはじめ、
見どころの多い展覧会、
パレーノワールド全開の展覧会となっていました。
世界観があまりにも唯一無二過ぎて、
展覧会の内容を伝える自信がないのですが、
しいて言えば、作品と作品がそれぞれ共鳴し合って、
全体で一つの世界を作り上げているような感じがありました。
どこかすべてが演劇の装置っぽくもあり、
観客もパレーノの世界の一部、キャストになったかのような感覚に。
『世にも奇妙な物語』の本編のほうではなく、
タモリさんのパートの世界観に入り込んだような印象を受けました。
何はともあれ、これまでにない鑑賞体験でした!
スゴかったです(←語彙力を失いました)!
なお、現在、ポーラ美術館では、フィリップ・パレーノ展だけではなく、
モネやルノワール、ピカソら巨匠の名品が観られるコレクション展も同時開催中。
特に、アンリ・ルソーとモディリアーニ、
そして、ガラス工芸が厚めに紹介されていました。
そのうちの1点にルイス・C. ティファニーによるテーブルランプがあったのですが。
パルコを連想せずにはいられないテーブルランプでした。