走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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京都国立近代美術館を皮切りに、岐阜、岡山と巡回してきた展覧会、

“走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代”が、菊池寛実記念 智美術館で開幕しました。

 

 

 

智美術館は、他会場と比べると、そこまで広くないため、

第1章と第2章を前期として、第3章を後期として開催するとのこと。

さらに、前期と後期それぞれで、一部展示替えもあるそうです。

それゆえ、通常券一般1100円に加えて、

前期と後期、もしくは、前期の中で2回など、

2回訪れられるお得な2回券一般1700円も発売されています。

 

さて、本展の主役は、走泥社。

1948年に京都で結成された伝説の前衛陶芸家集団です。

ちなみに、「走泥社」という名は、

中国宋代の陶芸様式の一つ、「蚯蚓走泥紋」に由来するのだとか。

その発足時のメンバーである八木一夫や鈴木治は、

個展やグループ展などで、紹介される機会が多いですが、

本展の主役は、あくまで走泥社という集団。

結成25周年となる1973年までに同人だった42名のうち、

現在、作品が残る32名の作家の作品が紹介されています。

 

 

 

走泥社と言えば、八木一夫。

八木一夫と言えば、オブジェ焼。
立体造形を目指して作られた彼の作品は、

皿や壺といったやきもののような用途が無いことから、

「オブジェ焼」と呼ばれるようになりました。

そのエポックメーキングともいえる作品が、

1954年に発表された《ザムザ氏の散歩》です。

もちろん、本展にも出展されています。

 

 

 

ただ、それよりも前に制作されていた、

八木一夫以外の走泥社メンバーの作品も、

負けず劣らず、オブジェ感がありました。

 

 

 

決して、八木一夫だけが特別だったわけでなく、

走泥社に所属していたメンバー全員が、前衛的だった。

その事実を強く実感できる展覧会です。

星星

 

 

なお、そんな走泥社のメンバーの中には、意外な人物も。

 

 

 

いかにも造形的なこちらの作品を作ったのは、

智美術館とも深い関りを持つ陶芸家、藤本能道です。

藤本能道といえば、色絵磁器の人間国宝。

前衛的とはむしろ真逆の作風ですが、

実は、1957年から5年間ほど、走泥社に参加していたのだとか。

彼も若い頃には、ロックだったのですね。

何だか感慨深いものがありました。

 

 

ちなみに。

前衛的な陶芸を目指す中で、走泥社の面々は、

ピカソやイサム・ノグチといった海外の作家にインスパイアされていたそう。

確かに、ピカソっぽい作品、イサム・ノグチっぽい作品がままありました。

それだけでなく、ミロっぽい作品や、

 

 

 

ポロックぽい作品、

 

 

 

ジャスパー・ジョーンズっぽい作品に、

 

 

 

アンフォルメルっぽい作品もありました。

 

 

 

さらには、ブランクーシっぽい作品も。

 

 

 

日本の一陶芸家集団を紹介しているものの、

いろんな西洋美術の要素も楽しめる展覧会でした。

そう言う意味では、やきもの鑑賞に対して、

苦手意識を持っている方にもオススメの展覧会。

一人ではなく、2人以上で訪れて、

「ぽいぽいトーク」に花を咲かせてみてくださいませ。

 

 

 

 

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