September Affair

デイヴィッドは旅先でマリアンヌと出会った。妻がいるがマリアンヌに惹かれた。
二人は帰りの飛行機に乗り遅れたが飛行機が墜落し、二人の死亡が報道された。
二人は、そのまま一緒に暮らした。幸せであった。
しかし次第に退屈が忍び寄ってきた。またデイヴィッドの妻が訪ねてきた。


映画関連目次(闇雲映画館)

製作:1950年、脚本:ロバート・ソーレン、監督:ウィリアム・ディターレ


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 マリアンヌ・ステュアート(ジョーン・フォンテイン) - ピアニスト
 デイヴィッド・ローレンス(ジョゼフ・コットン) - ローレンス社の経営者、技術者
 マリア・サルヴァティーニ(フランソワーズ・ロゼー) - マリアンヌの師、親友
 キャサリン・ローレンス(ジェシカ・タンディ) - デイヴィッドの妻
 デイヴィッド・ローレンス・Jr(ロバート・アーサー) - デイヴィッドとキャサリンの息子、父親と同名

本作は「ラヴ・ロマンス」と紹介されている。もちろんその通りなのだが、「仕事」も大きなテーマとなっている。

マリアンヌには家族はいない。

邦題はありがちなタイトル。「この映画はいいよ、ぜひ見てね」という気概が感じられない。しかし内容はよろしい。
 


■ あらすじ

◆ ローマ

デイヴィッドは一人でイタリア旅行をした。仕事を離れてゆっくりしたいこともあったが、妻とあまりうまくいっていないことも原因であった。

しかしニューヨークに戻る時期である。大使館に行った。妻からの手紙が届けられており、旅行前の話と違って「離婚したくない」との内容。

マリアンヌもイタリアに旅行していた。また師のマリアに会う用事もあった。しかし一か月後にニューヨークで演奏会があるので戻らなければならない。

二人は大使館前から空港へのバスに乗り、飛行機の中で隣の席となった。ほんの少し話をした。

だがしかし飛行機の燃料ポンプが故障しナポリ空港に着陸した。修理して20分後に出発とのこと。

◆ ナポリ

二人は飛行機を下りたがデイヴィッドが「二時間かかる」と言うので、ナポリの見物をすることになった。

デイヴィッドが頼むとタクシーに料金を吹っ掛けられたが、マリアンヌが「世界一美しいナポリの町を見せてほしいの」と頼むとまけてくれた。この言葉が気に入ったのか、マリアンヌが美人だったのかは不明である。

二人はナポリの町を見学して食事をした。その間デイヴィッドは、何度も時計を見て(二時間からの)残り時間をチェックした。

もう時間がないので、タクシーで空港に向かったが、しかし頭上を飛行機が飛び去った。マリアンヌは「イタリア人を見くびったわ」と叫んだ。

◆ カプリ島

二人は困って(いや喜んで?)カプリ島に行くことにした。ボートに乗り、山に登り、ロバに乗った。その間にお互いのことを話した。

デイヴィッドは「数日間、一緒に」と提案したがマリアンヌは「コンサートの準備がある」と断った。

その日はカプリ島のホテルに泊まった。それぞれの部屋に入るときに二人は振り返った。

次の日は海辺で過ごした。二人とも水着。寝っ転がっているとデイヴィッドがマリアンヌにキスをした。前日山から下りる時に「下りる方が速いのはどうして?」「引力のせいだ」という会話をしたのだが、マリアンヌは「これは引力のせいじゃないでしょ!」と(嬉しそうに?)言った。

「もう帰らなきゃ、あなたに恋をした、でも間違いだった」「妻とは別れるつもりだった」と会話をし、さらにデイヴィッドは「旅に出る時に離婚を決めたが、妻から「離婚できません」との手紙が来た」と付け加えた。

◆ 墜落

もう一晩泊まって、朝食事をした。新聞を読んだ。

大事件!二人が乗るはずであった飛行機が墜落した!二人とも行方不明者として掲載されている。

二人は「飛行機に乗っておらずに無事」ということを電報しようとした。しかしデイヴィッドは「奇跡的なチャンスを与えられた」。

デイヴィッドは「家族や会社を欺いてよいのか?」と迷う。そして電報の用紙をマリアンヌに預けて、マリアンヌの決定に従うことにした。

結果マリアンヌは電報を打たなかった。

◆フィレンツェ

二人はフィレンツェの丘の上の展望が良い場所に屋敷を購入した。フィレンツェはマリアのいる都市である。屋敷にはピアノが運び込まれた。

マリアが訪ねてきた。当然のことであるが、二人の行動を批判する。「勝手で卑劣」「破滅への序曲」「コンサートも諦めるの?」「うまくいかない」と言葉を次々と投げつける。

客観的に見ればマリアの言葉は正しいが、マリアンヌは舞い上がっていて正常な判断ができない。マリアンヌはマリアに反論し、その後も二人はずっと小競り合いを続ける。

◆ キャサリン

「デイヴィッドが死亡」して会社はキャサリンが受け継いだ。そして大学に入ったばかりの息子のデイヴィッドもしっかりと母親をサポートしている。

弁護士が訪ねてきた。「事故の二日前に多額の金が小切手で振り出されている。あて先はマリア・サルヴァティーニ」。

さらに「あなたには支払いを止める権利がある」とキャサリンに言った。しかしキャサリンは、支払いを止めない。弁護士に夫婦仲はうまくいっていなかったと白状し「彼を自由にしてあげればよかった」と言う。

疑問点。デイヴィッドの振出し手続きは、自分が死亡したことになって決断したものと思われる。すると「事故の二日前」という時期が矛盾となる。さらにマリアはマリアンヌの知人であり、マリア宛に振り出すのはさらに奇妙である。映画の価値とは関係ないが指摘しておく。ただ、キャサリンにデイヴィットが生きていることを認識させ、デイヴィットとマリアンヌを仕事に復帰させるというストーリーにするために、矛盾はするが、あえてこのようなことにしたのだろう。マリアンヌではなくマリア宛にしたのは、デイヴィットが生きているという認識タイミングを遅延させるため。

◆ デイヴィッドの仕事

幸せの絶頂とのぼせ上っていた二人に、次第に退屈の影が忍び寄ってくる。

デイヴィッドは散歩をしていてローレンス社のタービンが設置されているところに出くわした。しかしうまくいっておらず、作業者が悪戦苦闘していた。

デイヴィッドはタービンを修理した。デイヴィッドには簡単なことであった。そして周りを見渡して「この土地の農業に役立つことができる」と判断した。

責任者と会って計画を話した。そして責任者は「このプロジェクトに加わってくれ」と持ち出した。そしてダンカンという政府の役人に会ってくれと言う。

デイヴィッドは、自分が死んだことになっているので動くことはできない。特にダンカンとは知り合いである。この話は断った。

またマリアンヌはデイヴィッドを見て「周囲に壁を築こうとしていた、二人だけの生活は無理」と言う。そして「ニューヨークの件が心残り」。

◆ キャサリンと息子が訪ねてくる

キャサリンが息子と一緒にマリアを訪ねてきた。マリアンヌは同席するがデイヴィッドには秘密。

キャサリンは「もっと若い方かと思っていました」と話すが、さらに「お会いしただけで気持ちが晴れました。満ち足りた人生です」とすぐに話を打ち切る。

この間息子は、部屋の外で待っている。お茶をいれるために外に出たマリアンヌを息子が見かける。そして事故の死亡者の写真の人物と同一であることに気がつく。

キャサリンと息子は、すぐに出ていく。帰りの車の中で息子は「お父さんは生きている」と話す。それを聞いたキャサリンは「良かった、生きていてくれたのね」と涙を流す。

その後、マリアンヌはキャサリンと息子が泊まっているホテルを訪ねていく。息子と会う。注、キャサリンとは会わない。

息子は「父が生きていることは知ってます。しかし愛する父は事故で死にました」と言う。マリアンヌは「生きていてあなたを愛している」と言うが、息子は「二度と会いません」と切り返す。注、実際は後で会う。

◆ やり直し

マリアンヌは、キャサリンたちが訪ねてきたことをデイヴィッドに話す。

キャサリンから託された手紙を渡す。「生きていると知って感謝の気持ちでいっぱいです。離婚の手続きをします」。

デイヴィッドは「生者としてまた生活できる。世間から逃げずに堂々と暮らせる」と言う。注、キャサリンの反応に比較してデイヴィッドは利己的であることは指摘しておく。

マリアンヌは「(息子が)ぜひ会いたいと言っていた」とデイヴィッドを傷つけないように嘘をつく。

デイヴィッドは「君はコンサート、僕は例の計画」。マリアンヌは「出会った時に人生をやり直したのに、またやり直しね」と言うが嬉しそうである。

◆ ワシントンとニューヨークへ

デイヴィッドはプロジェクトの件でワシントンに、マリアンヌはコンサートでニューヨークに行くことになる。ずっとマリアンヌに文句を言ってきたマリアは喜んでいる。

デイヴィッドはキャサリンと会った。「感謝している、仕事が必要だ」。キャサリンは「手紙を書いて」と答えた。ともあれ二人は和解した。デイヴィッドは息子とも会って簡単に話をした。

マリアンヌの演奏会が開かれた。カーネギーホール。息子が客席で見ている/聞いている。デイヴィッドは舞台の脇から見ている/聞いている。注、キャサリンは来ていない。

大拍手の中で演奏会は終了した。

マリアンヌは次のコンサートの準備でフィラデルフィアに行くことになっている。マリアンヌはデイヴィッドをちょっと待たせて打ち合わせをした。

二人はタクシーに乗った。しかし国際空港の方へ向かっている。疑問に思ったデイヴィッドがマリアンヌに聞くと「南米に行く」と言う。フィラデルフィアの件は断ったとのこと。

タクシーから降りて「あなたから先に別れを言ってほしかった。愛しているなら行かせて」と言う。しかしマリアンヌは暗い感じではなく、むしろさっぱりとした感じである。もちろんデイヴィッドが嫌いになったわけではなく、まだデイヴィッドを愛している。

マリアンヌは飛行機に乗り込んだ。
 


■ 蛇足

ローマからアメリカに飛び立った飛行機が緊急とはいえナポリに着陸するのは、かなり変。航空路がおかしいが無視する。

ジョーンは「情炎の海(1944)」でもピアノを弾く場面がある。

本作を「不倫をあまりにも美化している」というレヴューがある。それはその通り、正しい指摘である。

しかし考えてみれば、多くの映画には悪の要素が入っている。不倫、殺人、強盗、戦争。そして悪人が大活躍しているものも多い。

これは現実の世界とはかなり異なっている。映画の世界では、このようなものの方が人気がある。この人間心理的な解説は、私の能力が及ぶところではないが、これが現実である。

これを否定すれば、ハリウッドは荒野になり、俳優は失業し、映画館は倒産し、大不況が到来する。
 


■ 出演作


ジョゼフ・コットン
(1941)市民ケーン/Citizen Kane
(1944)ガス燈/Gaslight
(1944)恋の十日間/I'LL BE SEEING YOU
(1949)第三の男/The Third Man
(1950)旅愁/September Affair
(1953)ナイアガラ/Niagara
(1964)ふるえて眠れ/Hush... Hush, Sweet Charlotte
(1977)エアポート'77/バミューダからの脱出/Airport '77
(1953)殺人の青写真/Blue Print For Murder
<1950)追いつめられた男/Walk Softly, Stranger
(1943)恐怖への旅/Journey into Fear
(1956)殺し屋は放たれた/The Killer Is Loose
(1958)宇宙冒険旅行:地球から月へ/From the Earth to the Moon
(1958)黒い罠:凄腕の警部/Touch of Evil
(1943)疑惑の影:二人のチャーリー/Shadow of a Doubt

ジョーン・フォンテイン
(1940)レベッカ/Rebecca
(1941)断崖/Suspicion
(1944)ジェーン・エア/Jane Eyre
(1950)旅愁/September Affair
(1951)生まれながらの悪女/Born to Be Bad
(1961)地球の危機/Voyage to the Bottom of the Sea
(1953)二重結婚者/The Bigamist
(1948)忘れじの面影/Letter from an Unknown Woman
(1944)情炎の海/Frenchman's Creek
(1957)日の当たる島/Island in the Sun
(1953)デカメロン夜話(海賊パガニノ、道徳の賭け、医師の娘)/Decameron Nights
(1948)不時着結婚/u Gotta Stay Happy
<1974)アイヴィー、三股浮気女の殺人計画/Ivy
(1953)熱砂の大脱走/Flight to Tangier
(1942)純愛の誓い/ This Above All
(1957)出征するまで/Until They Sail
(1952)黒騎士:アイヴァンホー:サクソンとノルマンの対立/Ivanhoe
(1938)金持ち息子との押し付け結婚を嫌ったシーラは牛乳配達とラヴラヴに
(1945)スーザンの選択/The Affairs of Susan