■ Decameron Nights
デカメロン夜話から三作を映画化したもの。
1.[海賊パガニノ]妻が海賊にさらわれるが、結局妻は海賊を好きになる。
2.[道徳の賭け]夫に殺されそうになった妻が、命拾いして男装し、最後に夫を反省させる。
3.[医師の娘]女性医師が結婚するが夫は姿をくらました。医師は罠を仕掛けて夫に再会する。
製作年:1953、監督:Hugo Fregonese、脚本:George Oppenheimer、Geza Herczeg、原作:Summary of Decameron tales(ジョヴァンニ・ボッカチオ)
■ はじめに
「デカメロン夜話」はフィレンツェ郊外の屋敷で男性3人、女性7人が10話ずつを語るという形式の物語。原作はジョヴァンニ・ボッカチオ。
本作では三話が語られる。外枠の物語を含めれば四話となっている。それぞれの物語にルイ・ジュールダンとジョーン・フォンテインが主演として登場する豪華構成である。他にビニー・バーンズが四話すべてに登場している。
14世紀の話なので話題が古いのはしようがないが、みんな洒落た感じのコメディでなかなか楽しい。それぞれのストーリーはジョーンが主人公となっている。
■ 外枠ストーリー/開始
◆ 登場人物(キャスト)
フィアメッタ(ジョーン・フォンテイン)
ジョヴァンニ・ボッカチオ(ルイ・ジュールダン)
フィレンツェの伯爵夫人(ビニー・バーンズ)
◆ あらすじ
1348年、イタリア、フィレンツェ。戦乱により世は混乱していた。戦乱を避けて女性たち10人ほどが郊外の屋敷で暮らしている。その中には夫を亡くしたばかりのフィアメッタもいた。
作家のボッカチオは、フィアメッタを訪ねて当地にやってきた。フィレンツェの伯爵夫人やフィアメッタに「ここは女性だけの屋敷」と言われて断られる。
しかし他の女性たちはボッカチオを見てウキウキしている。ボッカチオは受け入れられた。
ボッカチオと女性たちは毎日、それぞれが作った架空の話を交換して楽しんだ。
■ 第一話/海賊パガニーノ
まずボッカチオが作った話。「海賊パガニーノ」。
◆ 登場人物
バートロミイ(ジョーン・フォンテイン)
リカルド(?) バートロミイの夫
パガニーノ(ルイ・ジュールダン) 海賊
伯爵夫人(ビニー・バーンズ) 夫は死亡
◆ バートロミイは海賊に捕らえられた
バートロミイの夫リカルドは金持ちだが高齢でバートロミイに興味がないらしい。バートロミイがせがんでも、「今日は惑星の並びが悪い」などと理屈をつけて断る。
夫婦は他の貴族たちと釣りに出かけた。男性陣と女性陣は別の船である。男性たちは釣りをしているが、女性たちは、いろいろな話に花を咲かせている。
さてそこに凶悪な海賊パガニーノが現れた。女性陣の船が襲われて、みんな海賊船に連れ込まれた。女性たちの家族に身代金を請求する算段である。
バートロミイには多額の身代金が掛けられた。バートロミイは「夫がくればやっつけられる」と強がるが、ともあり捕らわれの身である。伯爵夫人がリカルドに身代金を請求するために釈放された。
リカルドは「妻が誘拐されて食べ物も喉を通らない」と言いながら、どんどんお代わりしている。
◆ リカルドが呼び出された
海賊の拠点の島。島の総督はパガニーノと通じている。リカルドが呼び出されて島にやってきた。
パガニーノはリカルドに対して五万フロリンを要求した。しかしリカルドは「100フロリン」と回答した。
これを聞いたバートロミイは怒った。リカルドに対して「会ったこともない」と言い、パガニーノに寄り添って「ダーリン」と言った。
慌ててリカルドは「バートロミイの夫」と言ったが、「私の瞳は暗闇で何色に見える?」という質問に答えられなかった。
◆ パガニーノとバートロミイはハッピーエンド
なんだかんだで結局リカルドは五万フロリンを取られた。
そしてパガニーノはバートロミイに「海賊の妻はイヤか?」と聞く。バートロミイは「海賊を止めてちょうだい」と要求した。
結果、パガニーノは海賊を止めて二人はハッピーエンド。
この物語に対して女性たちから「夫を捨てた」という批判が巻き起こった。
■ 第二話[道徳の賭け]
次はフィアメッタが作った話。
◆ 登場人物(キャスト)
ジネヴラ(ジョーン・フォンテイン)
バーナボ(?) ジネヴラの夫
ネリナ(ビニー・バーンズ) ジネヴラのメイド
ジュリオ(ルイ・ジュールダン)
◆ ジュリオはバーナボと賭けをした
商人のバーナボは長い間家を留守にしている。妻のジネヴラはメイドのネリナと二人で暮らしている。
ジュリオはバーナボとジネヴラの貞操について賭けをした。5000フロリン。
さっそくジュリオはバーナボの家の周りを探る。ジネヴラは窓からジュリオを見てメイドのネリナに「今夜10時に」と指示した。
ネリナはジュリオをジネヴラの寝室に招き入れて箱の中に隠れさせた。
ジネヴラがベッドに入った後、ジュリオは箱から出て来て、ジネヴラの髪の先端を切り、肩にあるアザを確認、さらにペンダントを盗んできた。
◆ バーナボは妻に刺客を差し向けた
ジュリオはこれらをバーナボに示して賭けに勝った。注、本当はセックスまで行ってないので賭けに勝ったわけではない。
これに怒ったバーナボはジネヴラに対して二人の刺客を差し向けた。
二人の刺客は「バーナボのところに」と言ってジネヴラを連れ出した。三人はロバに乗って旅をしていくが、荒野の中でジネヴラに事情を話した。
しかし刺客はジネヴラを殺したくない。そこでジネヴラのドレスに血をつけて持っていくことにした。
◆ ジネヴラは男性となってモロッコに来た
刺客と別れたジネヴラは、ドレスを渡してしまったので下着姿で放浪した。途中で水浴をしていた若者がいたので、彼の服を拝借して男性の姿で旅をした。
その後ジネヴラは船員として雇われた。船はモロッコを目指した。
モロッコに到着しサルタンに会い、気に入られてサルタンの宮殿で暮らした。
◆ ジネヴラはジュリオやバーナボと再会した
町を歩いている時に商人となっているジュリオに出会った。しかしジュリオはジネヴラのことは憶えていない。ジネヴラはもともとは自分のものであるペンダントを買い取った。
元の持ち主の名前を聞く。ジュリオは「元の持ち主はマルガリータ」といい加減に答える。補足。ジュリオはジネヴラを男性と思ってといる。
そしてバーナボがジュリオの雇い人となって働いていた。
ジネヴラは宮殿の中でサルタンと女性たちの踊りを見ている。男性となっているのでサルタンと「あの女はいいな~」みたいな話をしている。
◆ ジネヴラは自分の正体を明かした
客人があるということでジネヴラはいったん退出する。入って来たのはジュリオとバーナボ。
今度はジネヴラは女性の姿で登場し三人に飲み物をだした。ヴェイルをしているので正体はばれない。
ジュリオとバーナボはサルタンの前から退出した。ジネヴラはヴェイルを取ってジュリオの前にでた。ジュリオは町で会った男性であると分かったが、本来のジネヴラであるとは分からない。
しかし上の階から二人を見ていたバーナボはジネヴラであると認識した。三人はサルタンの前に行った。ジュリオもやっと本来のジネヴラと認識した。
◆ ジネヴラはバーナボと幸せに暮らした
バーナボはジネヴラを殺そうとしたことを謝った。
サルタンはこの話に怒って「バーナボとジュリオをワニの餌に」と命令した。
ここでジネヴラは「私を殺そうとした夫でも愛している」と宣言。
二人は故郷に戻って幸せに暮らした。
■ 第3話[医師の娘]
◆ 登場人物(キャスト)
イサベラ・マルコ(ジョーン・フォンテイン) 医師
グイリオ・ベルトランド(ルイ・ジュールダン)
魔女(ビニー・バーンズ)
◆ 王の使いが来た
イサベラ・マルコは父親が医師であった。イサベラも医師になった。
ある日、王の使いのグイリオ・ベルトランドが訪問してきた。グイリオ高名なマルコ医師が女性であったことに驚いた。
用件は「王が病気になっている。治療してほしい」とのこと。
二人でパリに向かった。途中で危ない目にあったが、グイリオの活躍で命拾いをして、無事パリに到着した。
◆ 王は回復した
イサベラは王宮に到着した。すでに何人もの医師が王の容態を診ている。
医師たちはイサベラを見て「女性には治療できない」と先入観から反対する。
しかし司祭が反対を押し切り、イサベラが診ることになった。
結果、王は回復し、国民はそれを祝った。
◆ グイリオと結婚することになる
王はイサベラに対して「お礼は何がいいか?」と尋ねた。イサベラは「夫にしたい人がいる」とグイリオとの結婚を希望した。パリに来る途中に命を助けてもらったことで生じた愛情からである。
グイリオは、その提案にびっくりするとともに結婚を拒否した。
しかし王とイサベラの説得でグイリオは結婚を承諾した。
◆ しかしグイリオは立ち去った
二人の結婚式が行われた。
しかし直後、グイリオは「これで約束は果たした」と立ち去ろうとする。イサベラは驚いて引き留めた。
グイリオは自分の指輪を見せて「これをつけて私の子供を産んだら、本当の夫婦になろう」と言う。
「一緒に住まないのにどうして子供が生まれるの?」と食い下がったが、グイリオは強引に立ち去った。
指輪もグイリオがつけたままである。
◆ グイリオの行方
イサベラは故郷に帰って元のように医者をしている。
国王に会った時の司祭が訪問してきた。「彼(グイリオ)のことを忘れるように言いに来た。他にいい人がある」と言う。
しかしイサベラは「グイリオはどこにいるの?」と聞くとフィレンツェとのこと。
「宿を営んでいる女性の娘と付き合っている、母親の名前はブカ夫人」。
さっそくイサベラはフィレンツェに向かった。
◆ ブカ夫人に会った
イサベラはフィレンツェに到着しブカ夫人の宿屋まできた。
ブカ夫人に宿泊を頼んだ。部屋が空いていないので「娘のマリアの部屋を空ける」と言う。
二人でマリアの部屋に入った。窓から見下ろすとちょうどグイリオがマリアと話している。ブカ夫人は大声でグイリオに罵声を浴びせた。さらに花瓶を投げつけた。
イサベラには「奴はスペイン生まれの悪魔」と言う。グイリオが結婚していると聞いて「妻は見当違いのバカ」と侮蔑の言葉を次々と連発する。
イサベラはブカ夫人に「1000フロリンを稼がせてあげる」と提案。「マリアに彼に今夜12時に自分の部屋にくるように言ってちょうだい」。
ブカ夫人はその意図を訝るが「アリアは別の場所に行っていればよい」と言うと1000フランの誘惑に負けた。
◆ グイリオはマリアの部屋へ
グイリオはマリアの部屋に入った。
次の朝、マリアの手にはグイリオのものであった指輪があった。
グイリオは部屋から出たが、マリアと寝たと思っている他の泊り客から批判され階段から落とされた。
◆ グイリオが訪ねて来た
イサベラは故郷に戻り10か月が経過した。イサベラは出産した。イサベラはグイリオに約束を果たしたことを手紙で知らせた。
例の司祭が来ている。イサベラは「夫の指輪も息子も手に入れたのよ。すぐに夫も手に入る」と言う。司祭は不思議な顔。
グイリオが来た。赤ん坊を見た。「よくも私を裏切ったな」と怒るが、イサベラは余裕の態度。
指輪を見せた。「あなたがくれたのよ」「マリアから奪ったな」「マリアはあの部屋にいなかった」。
グイリオはすべてを理解した。二人は幸せに暮らした。
■ 外枠ストーリー/終了
話し終わったボッカチオは、当地を立ち去ろうとした。しかし今度はフィアメッタはボッカチオを引き留めた。
二人は手を取ってボッカチオの部屋に入っていった。
■ 出演作
◆ ジョーン・フォンテイン
(1940)レベッカ/Rebecca
(1941)断崖/Suspicion
(1950)旅愁/September Affair
(1951)生まれながらの悪女/Born to Be Bad
(1961)地球の危機/Voyage to the Bottom of the Sea
(1953)二重結婚者/The Bigamist
(1948)忘れじの面影/Letter from an Unknown Woman
(1944)情炎の海/Frenchman's Creek
(1957)日の当たる島/Island in the Sun
(1953)デカメロン夜話(海賊パガニノ、道徳の賭け、医師の娘)/Decameron Nights
◆ ルイ・ジュールダン
(1947)パラダイン夫人の恋/The Paradine Case
(1948)忘れじの面影/Letter from an Unknown Woman
(1954)愛の泉/Three Coins in The Fountain
(1951)女海賊アン/Anne of the Indies
(1952)幸福の時間/ビビとペギー/The Happy Time
(1953)デカメロン夜話(海賊パガニノ、道徳の賭け、医師の娘)/Decameron Nights