■ Suspicion
リーナはジョニーと結婚した。しかしジョニーが無一文であることが判明。
ジョニーは従兄の会社に勤めたが、そこで横領をした。また止めたはずの競馬も続けていた。
ジョニーは友達のビーキーと土地開発を計画したが頓挫。さらにジョニーのビーキー殺害疑惑が浮上した。リーナをも殺そうとしているようである。


製作:1941年、原作:フランシス・アイルズ、脚本:サムソン・ラファエルソン、アルマ・レヴィル、ジョーン・ハリソン、監督:アルフレッド・ヒッチコック


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 Mr.マクレイドロウ(セドリック・ハードウィック) リーナの父親
 マーサ・マクレイドロウ(メイ・ウィッティ) リーナの母親
 リーナ・マクレイドロウ(ジョーン・フォンテイン)
 ジョニー・アイガース(ケーリー・グラント) リーナの恋人→夫
 エセル(ヘザー・エンジェル) メイド
 ビーキー・スエイト(ナイジェル・ブルース) ジョニーの友人
 イソベル・セドイック(オリオール・リイ) 小説家
 ジョージ・メルベック(レオ・G・キャロル) ジョニーの従兄、不動産関係
 


■ あらすじ

◆ リナはジョニーと知り合った

1938年、イギリス。リーナ・マクレイドロウは列車に乗っていた。眼鏡をかけて本を一生懸命に読んでいる。

前に男性が座った。ジョニー・アイガース。リーナは本から目を離さない。

ジョニーはリーナに話しかける。リーナはおざなりな答えをして、また本に目を戻す。

目的地に着いたのでリーナは列車を降りた。ジョニーも同じ駅で降りた。ジョニーは有名人のようで、いろいろな人が迎えた。特に女性が多い。ジョニーは自信過剰男のようである。

リーナは自宅に到着した。相変わらず本を読んでいる。知人の女性が数人訪ねてきた。そしてなんとジョニーを連れてきた。

この後、教会に誘われたので、リーナは教会に行く習慣はなかったのだが、みんなで出かけた。しかし途中でジョニーはリーナを別のところに誘った。

両親は「リーナは結婚向きではない。結婚だけが人生ではない」「いつまでも独り身でいいの?」「リーナは頭がよくて、しっかりしている」などと話している。

客観的に見ると二人の波長が合うとは思えないが、ともかく二人は付き合い始めた。

父親はリーナにジョニーが賭けでイカサマをしていたことなどを話した。「女性問題でも訴えられている」と止めを刺すようなことをいうが、リーナは受け流した。

リーナの読書時間が少なくなり、その時間はデートに充てられるようになった。服装もおしゃれなものに変化していった。

ダンスパーティでリーナがきれいなドレスを着て嬉しそうにジョニーと踊ったので、みんなは驚いた。

◆ 二人は結婚したが、ジョニーは一文無しだった

リーナは、いかにも「買い物に出かけてきます」という風にして外出し、二人で結婚の手続きをした。リヴィエラ、モンテ・カルロ、ヴェニス、パリ、ローマと新婚旅行をした。

戻ってきて新居に入った。かなりの豪邸、メイドもいる。

ジョニーに電報が届いた。聞くと「旧友から1000ポンドよこせ」とのこと。「どうしたの?」「僕が借りていたらしい」と若干不気味な展開。

「何に使ったの?」「新婚旅行の費用だよ」と展開。「自分のお金じゃなかったの?」と追及すると「自分の金じゃない」とあっさりと認めた。

「君は何も心配する必要はない」とは言うものの、リーナはとても心配になった。「一文無しなの?」「ずっと一文無しだ。そのうち君には遺産が入る」と恐るべき展開。

当然ここでリーナは決心すべきなのだが、そのようには展開しない。これがこの映画のすごいところである。

◆ ジョニーは親戚の金を横領した

ジョニーはいやいやながら従兄のジョージ・メルベックの不動産管理の仕事をすることになった。

リーナが戻ってきた。誰かがきていた。ビーキー・スウェイト。学生時代の友達とのこと。

ここでビーキーはジョニーが競馬場にいたことをばらす。「賭け事は止めたはずよ」と言うと慌てて否定した。

ここでリーナは両親から送られた大事なイスがなくなっているのに気が付いた。ピーキーは「イスは売ったんだろう」と言った。聞くとジョニーは競馬でも借金をしているとのこと。

ジョニーがまじめに働いていると思っていたリーナの額に皺がよった。

ここでジョニーが帰宅。ジョニーは、今聞いた話を追求しても平気な顔をしている。そしてここでもリーナは「終わったことは仕方がないわ」と我々をびっくりさせる。

さらにジョニーはリーナやメイドのエセルに高価なプレゼントを買って来た。なんとも思っていない。しかし今回は競馬で2000ボンド儲けたそうである。

しかしリーナはジョニーが賭け事をしていたことで浮かぬ顔をした。

その後リーナはジョニーが仕事に行っているものと思っていたが、知人の女性から競馬場にいたと教えてもらった。またリーナの顔がゆがんだ。

それでジョニーが仕事をしているはずのメルベック不動産に出かけた。

ジョージ・メルベックに確認すると「ジョニーは六週間前に解雇した」とのこと。「2000ポンドを持ち逃げされた。返済するというので、訴えない」。つまり先日の「競馬で2000ポンド儲けた」の話はでっち上げ。

さすがに今度はリーナは荷物をまとめてジョニーへの別れの手紙を書いた。

しかしそれを破り捨てた。我々はジョニーにも驚くが、リーナにも驚く。

◆ リーナの父親が死亡した

リーナの父親が死亡したとの連絡が入った。

遺言に従い遺産が配分された。妻のマーサにかなりの遺産が配分された。そして他の親族にもそれなりに配分された。

リーナには毎年500ポンドと父親の財産から考えれば、意外に少ない額である。その他に父親の肖像画。ジョニーは明らかに不満そうな顔をした。

リーナにあまり分配されなかった理由は不明だが、ジョニーは「僕と結婚したせいだ」と言った。二人は「結婚して後悔してないか?」と話す。ここで二人は「後悔していない」と確認する。

リーナは「一度だけ別れようと思った。それはあなたがメルベック氏から解雇されたとき」と話すと、ジョニーは「どうして知った?」と追及した。

「理由を聞いたか?」と聞くので「聞いてない」と嘘を答えるとジョニーは「ヤツとは考えが合わなかった」ととんでもない答えをした。

その話をしたのは海岸を車で走っている時だった。ジョニーは「ここを開発すれば、大きな金が」と口走った。リーナは呆れた。

◆ ジョニーはビーキーを事業に誘い込んだ

ジョニーは海岸の開発の計画を自分なりに作ってビーキーに見せた。

話が勝手に膨らんでいく。ビーキーもジョニーと同じような性格で、大きな風呂敷を広げる。どんどんそれが広がっていく。

リーナが「融資してくれる人はいるの?」と聞くと、ビーキーは「私が出す」と自信ありげ。ジョニーは「アイデアは僕、金はビーキー」と応じる。

ビーキーがフランスに持っている不動産を担保にするらしい。リーナが心配そうな顔をしているとジョニーは「干渉しないでくれ」と突っぱねた。

二人ともまだ計画段階なのに、もう金を儲けたような気分になっている。

◆ 計画は中止となった

しかししばらくしてジョニーはリーナに「計画は中止した」と言ってきた。理由を聞くと「土地がよくなかった。ビーキーの金でやるのもよくない」という。まだビーキーには話してないらしい。

今までのジョニーにしては賢い反応のように思えるが、ジョニーがこのような見識を持っていたとは不思議である。

ジョニー、リーナ、ビーキーは文字合わせのゲームをやっている。

そこでジョニーは計画の中止のことを伝えないで「土地を見に行こう」と提案する。ビーキーは「お前のことは信用している」というがジョニーは「見に行こう」と主張する。

さて文字合わせのゲーム。リーナは何度も「MURDER/殺人」の単語が出てくるのを目撃する。リーナは海岸の絶壁でジョニーがビーキーを突き落としている幻覚を見る。気を失った。

朝、リーナが起きると二人とも出かけた後。リーナは車で追いかけた。現場に来て崖の下を見たが、誰もいない、何事もない。

家に戻った。二人がいた。

二人はやはり現地に行っていた。ビーキーが「崖は石灰質で危うく崩れて崖から落ちそうだった」と言うとジョニーは「もうその話はやめろ」と強く言った。

土質の問題がでたので、計画は中止になった。ビーキーは「担保を解除しにパリに行く」。

ジョニーは「ロンドンまで送る」と言うと、ビーキーは「パリまで来い」と言う。ともかく二人は出かけた。

◆ ジョニーはビーキーを殺したのか?

警察が訪ねてきた。ホドソン警部とベンソン警部。「夫はロンドンに出かけてます」とリーナが応対した。

「ビーキー・スウェイトが死亡した」。以下のような状況。

ビーキーはイギリス人と酒場に現れて、ビーキーはブランデーを一気飲みした。一気飲みできるか賭けをしているようだった。ビーキーが倒れた時、イギリス人はいなくなっていた。そのイギリス人の身元と行方は不明。

警察はジョニーを疑っているようである。また二人の事業計画についても知っていた。リーナは自分が知っていることを話した。

リーナは「ジョニーはパリにはいっていない」と何度も自分に言い聞かせた。

ジョニーが帰ってきた。「ビーキーが大好きだった」「本当?」「君の次に好きだった」。

ジョニーは警察に電話して「パリにはいってない」と伝えた。

◆ ビーキーの殺しの手口をジョニーは知っていた?

リーナは知人の小説家のイソベル・セドイックを訪ねて行った。犯罪小説を書いており、特に殺害方法にこだわりがある。

リーナは「殺害の手口について聞きたい」と言ったので、イソベルはにっこりした。

イソベルは「最新刊の手口はパリのビーキーの事件と同じ」と指摘した。「犯人が罪に問われない利口なやり方」。

それは実際の事件にあったということで、イソベルは資料の本を探す。しかし見つからない。イソベルは、その本をジョニーに貸し出したことを思い出した。

リーナは戻って、その本を探した。ジョニーの机の引き出しにあった。あるページにメルベック宛の手紙が挟んであった。「返済は別の方法で行います」。

◆ ジョニーはリーナを殺そうとしている?

ここで保険会社から電話。ジョニーが何かを問い合わせていた。「質問の返事は明日届く」。

手紙が届いた。ジョニーはその手紙を見て自分のガウンのポケットに隠した。リーナは見てないふりをしたが、それを鏡で確認した。

ジョニーが風呂に入ったので手紙を読んだ。「保険金は妻の死亡時に支払い」。リーナは「ジョニーが保険金目当てに自分を殺そうとしているのでは?」と疑う。

◆ ジョニーは小説の殺しの手口にこだわる

イソベルの家で食事会。二人を含めて数人がいた。話題の中心は、ストレートに言えば「殺しの手口」。

ジョニーはイサベルにやたらと突っ込んで聞いていく。「重要なのは疑われないこと」。みんなも面白がって話に乗ってくる。

イサベル「ヒ素も銃弾も跡をたどることができる」ジョニー「跡をたどれないケースもある」イサベル「ないわよ」。ジョニーは「完全犯罪が可能」という説にこだわる。

収拾がつかなくなったので、ジョニーは「僕には人は殺せない」と話を終了させた。

帰宅した。二人いる使用人は今日はいない。つまりジョニーとリーナの二人きり。

ライトを消す。二人は二階に上がっていく。ジョニーは優しい声をかける。リーナ「今日は一人にさせて」ジョニー「ダメだ」。ジョニーはあきらめて部屋を出て行った。リーナは倒れた。

リーナが目を覚ますとイソベルが来ていた。リーナを気遣うが「ジョニーは書いている小説の殺人の手口をしつこく聞いてくるの」と言った。

イソベルはある毒の話をする。その毒はどこにでもあり、飲んだら数分であの世行き、しかも証拠が残らない。注、先日のイソベルの説とは異なっている。

リーナ「それは苦痛を伴うの?」イソベル「安楽死よ」。イソベルは帰った。

リーナは寝室に一人。ジョニーが飲み物を作って持ってきた。キスをして出て行った。

朝になっても、その飲み物は残っていた。

◆ 実家に帰る

リーナは「実家に帰る」と言う。ジョニーは強引に「送っていく」。

ジョニーはやたらとスピードを出している。時速60マイルを越えている。海岸の崖の上の道を突っ走る。道が曲がりくねっている。

リーナの側のドアが開いた。崖が目の前に迫る。リーナは大声で叫んだ。

車はストップした。リーナは車から降りて走って逃げた。リーナの態度にジョニーは怒った。

二人は怒鳴りあうが、リーナは「イサベルに毒のことを聞いたのは、自分が自殺するためだったのね」とジョニーの意図を理解した。「返済は別の方法で行います」の意味がここで判明した。

ジョニーは事情を明かした。

ビーキーと稼いだ金で借金を戻そうとしたができなかった。パリにはいっていない。リヴァプールに行ってリーナの保険を担保に金を借りようとしたが断られた。それで自殺を考えた。

リーナはジョニーの話に納得し、二人は自宅に引き返した。ジョニーの金銭問題は解決しておらず、我々には若干不思議だか、二人は和解した。
 


■ 出演作

◆ セドリック・ハードウィック
「ノートルダムの傴僂男/The Hunchback of Notre Dame(1939)」
「十戒/The Ten Commandments(1956)」

◆ メイ・ウィッティ
「キュリー夫人/Madame Curie(1943)」
「ガス燈/Gaslight(1944)」

◆ ケーリー・グラント
「コンドル/Only Angels Have Wings(1939)」
「フィラデルフィア物語/The Philadelphia Story(1949)」
「モンキー・ビジネス/Monkey Business(1952)」
「汚名/Notorious(1946)」
「めぐり逢い(1957)」
「無分別/Indiscreet(1958)」

◆ ヘザー・エンジェル
「美女ありき/That Hamilton Woman, Lady Hamilton(1940)」

◆ ナイジェル・ブルース
「進め龍騎兵/The Charge of the Light Brigade(1936)」
「レベッカ/Rebecca(1940)」
「情炎の海/Frenchman's Creek(1944)」

◆ レオ・G・キャロル
「嵐が丘/Wuthering Heights(1939)」
「女王エリザベス/The Private Lives of Elizabeth and Essex(1939)」
「レベッカ/Rebecca(1940)」
「白い恐怖/Spellbound(1945)」
「Gメン対間諜/The House on 92nd Street(1945)」
「パラダイン夫人の恋/The Paradine Case(1947)」
「キリマンジャロの雪/The Snows of Kilimanjaro(1952)」
「罠にかかったパパとママ/The Parent Trap(1961)」

ジョーン・フォンテイン
(1940)レベッカ/Rebecca
(1941)断崖/Suspicion
(1950)旅愁/September Affair
(1951)生まれながらの悪女/Born to Be Bad
(1961)地球の危機/Voyage to the Bottom of the Sea
(1953)二重結婚者/The Bigamist
(1948)忘れじの面影/Letter from an Unknown Woman
(1944)情炎の海/Frenchman's Creek