ポーラ・アルキスト(イングリッド・バーグマン)の母親は精神を病んで死亡した。その後は叔母の歌手アリス・アルキストに育てられた。しかしアリスは何者かによって殺害された。
その後ポーラはアリスの知人の音楽家グアルディに預けられた。グアルディの元にグレゴリー・アントン(シャルル・ボワイエ)という作曲家が訪ねてきて、ポーラはグレゴリーと恋に落ちて結婚した。
二人は、かってアリスとポーラが住んでいた屋敷に引っ越した。しかしポーラは次第に精神を冒されてくる。物忘れ、紛失、妄想。グレゴリーに指摘され、自分でもおかしいと思い始める。メイドにもバカにされているようである。
グレゴリーは仕事のために外に部屋を借りて、夜間に外出するようになった。ポーラはグレゴリーが外出した後、家の中のガス燈が暗くなり、しばらくして明るくなると、グレゴリーが帰宅することに気が付いた。
いやしかし、この現象についてもポーラは確信が持てない。メイドも否定する。昔、アリスのファンであった刑事ブライアン・キャメロンは、この屋敷が何かおかしいことに気が付いた。そしてグレゴリーの行動を調べていく。
製作:1944年、脚本:ジョン・ヴァン・ドルーテン他、監督:ジョージ・キューカー
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
アリス・アルキスト(-) - 歌手、本作時には死亡
ポーラ・アルキスト・アントン(イングリッド・バーグマン) - 主人公、アリスの姉の娘
グレゴリー・アントン(シャルル・ボワイエ) - ポーラの夫、作曲家
ブライアン・キャメロン(ジョゼフ・コットン) - 刑事
ナンシー・オリヴァー(アンジェラ・ランズベリー) - アントン家の使用人
エリザベス・トンプキンス(バーバラ・エヴェレスト) - アントン家の使用人
ダルロイン夫人(ヘザー・サッチャー) - アリスの知人
◆ 補足
設定はロンドン。ポーラの母親は精神を病んで死亡しており父親もいなかった。ポーラはアリスに育てられていた。1875年10月、アルキスト家でアリスが殺害され宝石が盗まれた。しかしまだ犯人は捕まっていない。ポーラはアリスの死後、イタリアのアリスの知人の音楽家グアルディに預けられた。
タイトルのガス燈。どのくらいの規模かは(私は)知らないが、当時ロンドンではガス管が整備されてガスが供給されていた。それを利用して街頭や各家庭で明かりとしてガス燈を使用していた。本作はアルキスト家で「ガス燈の明るさが変化する」という現象がポイントとなっている。ガスの供給量は制限されており、家の中で数多くのガス燈を灯したりすると明かりが暗くなる。
アルキスト家の屋敷は三階建て。三階は屋根裏部屋になっている。
本作は映画としては良い。よくできている。しかし個人的には不満がある。それは「ポーラが自力で事件を解決するようなストーリーにしてほしかった」ということ。
■ あらすじ
◆ 結婚
アリスの死後10年。グアルディのところにグレゴリーと言う作曲家が訪ねてきた。ポーラはグレゴリーと恋に落ちて結婚した。グレゴリーの提案で事件後は使われていなかったアルキスト家の屋敷に住むことになった。
屋敷に到着してポーラは屋敷の状況を説明した。アリスの数多くの遺品は三階の屋根裏部屋にある。アリスは手に入れた貴重な手袋の片方を熱心なファンに進呈した。残っていた片方の手袋は一階のガラスケースに保管されており、それをグレゴリーに見せた。
一階にテオドラの楽譜があったので開くと、セルジアス・バウアーという人物からアリスに当てた手紙が発見された。事件の二日前の日付であった。
屋根裏部屋はアリスの遺品があり、ポーラにとっては辛い思い出なので、板を釘で打ち付けて入れないようにした。
エリザベスとナンシーと言うメイドを雇った。グレゴリーは二人にポーラの精神的な問題を理由に、極力ポーラを煩わせないように指示した。しかし二人は「どこが調子悪いの?」と話している。
◆ブローチ事件、その他もろもろ
グレゴリーはポーラにブローチをプレゼントした。元は祖母から母親に譲ったものである。ポーラは喜んでそれをつけようとしたが、「ピンが古くなっているので修理する」と言って、グレゴリーはポーラのバッグにしまった。
二人でロンドン塔に見学に行く。ポーラはグレゴリーのことを「ロンドンは初めてなのに詳しい」と感心する。ここでポーラはバッグに入っているはずのブローチがなくなっているのに気がつく。焦るがとりあえず黙っておく。
ポーラは昔見かけたことがあるような男性とすれ違う。男性の方も見たことがある女性だと認識するが、二人は話さないで通り過ぎる。注、ブライアン。
その後グレゴリーは「修理に出すのでブローチを」と言う。ここでブローチがなくなっていることを白状する。するとグレゴリーはポーラに「記憶がおかしい」とかいろいろ言いだす。注、バッグに入れたのはポーラではなくグレゴリー。
この他にもいくつかのことがあり、ポーラは「自分がおかしいのか?」と思い始める。メイドに「夫が帰るまでに部屋を暖めておいて」と言うと「先ほど伺いました」との返事が戻ったりする。
グレゴリーは「ポーラが妄想に憑りつかれているのか?」と心配する。グレゴリーは「壁にかかっていた絵がなくなっている」と言ってポーラを問い詰める。身に憶えがないので否定するが、ポーラが階段の隅に置いてある絵を発見する。グレゴリーはまた「記憶がおかしい」と指摘する。
もうメイドからも軽蔑されているようである。少なくともポーラはそのように感じている。
グレゴリーは作曲の仕事のために、外に部屋を借りて、毎晩出かけるようになる。
◆ガス燈の明るさ、物音
ポーラが夜一人でいると、ガス燈が急に暗くなる。そして物音がする。上の方から聞こえてくるようである。しかし屋根裏部屋には誰もいないはずである。
心配になってメイドに聞くが否定される。ポーラは「やっぱり自分がおかしい」と思う。
◆ブライアン刑事
ブライアンは10年前に発生したアリス殺人事件に疑問を持っている。まだ犯人は捕まっていない。上司からは差し止められるが、個人的に調査している。
ブライアンはアリスの歌を聞きに行ったことがある。ファンであった。
ブライアンは、引っ越してきてから来客も外出もないアルキスト家を見ている。「あの家には何か怪しいことが起こっている」。
上司に再度話を聞くと「地位のある人がアリスに宝石を送ったが、行方不明になっている」とのこと。
ブライアンは、ある警官と話して、警官の担当区域を当地域に変更してもらって、協力を依頼する。
◆夜会事件
ダルロイ夫人が夜会を計画した。アリスをよく知っていた夫人はポーラにも招待状を送付した。しかし「ポーラの調子がよくない」との理由でグレゴリーから欠席の返事が来た。この夜会にはブライアンも出席するつもりである。
ポーラは、この夜会に出席すると言い出す。グレゴリーは止めるが、最近のポーラには珍しく、きっぱりとした態度である。「子供の頃に世話になった」。ポーラが準備を始めると、グレゴリーも出席すると言って一緒に出かけた。
会場ではピアノが演奏されている。ポーラとグレゴリーは並んで座った。
しばらく演奏を聞いていたが、グレゴリーはポーラに「時計がなくなっている」と囁いた。そしてグレゴリーはポーラのバッグを調べた。時計が出てきた。
ポーラは自分に非があると感じて泣き出す。ピアノ演奏の最中である。みんなの眼がポーラに注がれる。ブライアンは、その状況を見ている。
グレゴリーは「具合が悪いので」と断ってポーラを会場から連れ出した。
帰宅してグレゴリーは今までなくポーラを責めた。「今まで世間に隠してきたのに」。
ポーラは「ブローチがなくなってから私はおかしくなった」と言った後に「いや、(バウアーの)手紙を見つけてから」と言いおなした。
しかしここでグレゴリーはバウアーの手紙の件を否定する。そして医者から聞いたというポーラの母親の異常をいろいろと述べ立てた。「専門家に任せる以外にない」と宣言した。
◆ブライアンが訪ねてくる
夜、外に出たグレゴリーをブライアンと警官が見張っている。警官の話によれば、屋敷を出てからすぐに消えたそうである。どこかの家に入ったらしい。
屋敷の中では、また暗くなったガス燈を見て、ポーラは自分の頭がおかしくなったかと狂った。エリザベスに聞いても、他のガス燈の明るさは変えていない。
音が聞こえてくるが、エリザベスは「何も聞こえない、音がするはずがない」と答える。
別の日、グレゴリーの外出を確認してブライアンが屋敷を訪ねてくる。エリザベスはブライアンを拒否するが、強引に入ってきてポーラと会おうとする。注、この時はナンシーは外出中。
ポーラは自分がおかしいと思っているので会いたがらない。ブライアンは「アリスから貰ったもの」と言ってポーラに手袋を見せる。
この時にガス燈が暗くなった。ブライアンも、ガス燈が暗くなったのを認識したので、ポーラは自分だけの異常ではないことが分かった。「毎晩グレゴリーが出かけると暗くなる、物音が聞こえている」「ガス燈がまた明るくなると、グレゴリーが帰ってくる」。ブライアンは屋根裏部屋にグレゴリーがいると指摘。
この間、屋根裏部屋でグレゴリーがいろいろなものを調べている。
ブライアンがグレゴリーの机を開けようとする。ポーラは止めるが強引に開ける。机の中からバウアーからの手紙を見つける。ここでもポーラは手紙の件が妄想ではなかったことを認識した。
ブライアンはグレゴリーがダルロイ夫人に出した欠席届を出して筆跡を比べた。「グレゴリーはバウアー」。
ブライアンは推理を披露する。アリスを殺した後、バウアーは宝石を探していたが少女が下りてきたので、中断して逃げ出した。その少女はポーラ。そしてこの度宝石を手に入れようとグレゴリーとして計画的にポーラに近づいた。
ここでガス燈が明るくなる。ブライアンは出ていく。「グレゴリーは、この屋敷には戻らない」。
◆グレゴリーが屋根裏から
一方、グレゴリーは、目的の宝石を屋屋根裏部屋で、やっと見つけた。目的を達成したので、打ち付けてある板を外して直接屋根裏部屋から二階に降りてきた。満足した顔である。
しかし自分の机が開けられているのを発見してポーラを問い詰める。「私じゃない」。さらに追及するので「男の人が開けた」。
グレゴリーはエリザベスに聞く。エリザベスは「誰も来てない」と言うので、ポーラは「やはり自分がおかしいのか?」と思い始める。
◆再度ブライアン登場
ここで再度ブライアンが登場する。「何者だ?」「奥さんの妄想の一部だ」。グレゴリーは屋根裏部屋に逃げて拳銃を出して抵抗するが逮捕される。警官も到着する。
ポーラが屋根裏部屋に行くと、グレゴリーが椅子に縛られている。グレゴリーは「二人で話したい」と言う。ブライアンは「危険だ」言うが二人で話すことになる。ブライアンは部屋の外で待機する。
グレゴリーはポーラを今までと同じように言葉で動かそうとする。「ナイフがある、ロープを切ってくれ」。「いいわ」と言ってボーラは引き出しからナイフを取り出す。ナイフをグレゴリーに見せて「ないわよ、これがナイフなの?、あなたは正気?」「それとも正気じゃないのは私?」。「ナイフはどこにあるの?」と言って、また引き出しを探す。ここの言葉が割としつこい。今までの恨みか?注、ここで例のブローチを見つける。
その後グレゴリーは連行されていく。
■ 出演作
◆ アンジェラ・ランズベリー
(1944)ガス燈/Gaslight
(1944)緑園の天使/National Velvet
(1949)サムソンとデリラ/Samson and Delilah
(1948)十番街の天使/Tenth Avenue Angel
(1962)影なき狙撃者/The Manchurian Candidate
(1965)偉大な生涯の物語/The Greatest Story Ever Told
(1956)A Life at Stake
(1956)俺を殺せ/Please Murder Me
(1945)ドリアン・グレイの肖像/The Picture of Dorian Gray
(1952)カリブの反乱/Mutiny
◆ イングリッド・バーグマン
(1941)ジキル博士とハイド氏/Dr. Jekyll and Mr. Hyde
(1943)誰が為に鐘は鳴る/For Whom the Bell Tolls
(1944)ガス燈/Gaslight
(1945)聖メリーの鐘/The Bells of St. Mary's
(1945)白い恐怖/Spellbound
(1945)サラトガ本線/Saratoga Trunk
(1946)汚名/Notorious
(1948)凱旋門/Arch of triumph
(1950)ストロンボリ/Stromboli, terra di Dio
(1956)無分別/Indiscreet
(1969)サボテンの花/Cactus Flower
(1942)カサブランカ/Casablanca
(1974)オリエント急行殺人事件/Murder on the Orient Express
(1954)イタリア旅行/Journey to Italy/Viaggio in Italia
◆ ジョゼフ・コットン
(1941)市民ケーン/Citizen Kane
(1944)ガス燈/Gaslight
(1944)恋の十日間/I'LL BE SEEING YOU
(1949)第三の男/The Third Man
(1950)旅愁/September Affair
(1953)ナイアガラ/Niagara
(1964)ふるえて眠れ/Hush... Hush, Sweet Charlotte
(1977)エアポート'77/バミューダからの脱出/Airport '77
(1953)殺人の青写真/Blue Print For Murder
<1950)追いつめられた男/Walk Softly, Stranger
(1943)恐怖への旅/Journey into Fear
(1956)殺し屋は放たれた/The Killer Is Loose
(1958)宇宙冒険旅行:地球から月へ/From the Earth to the Moon
(1958)黒い罠:凄腕の警部/Touch of Evil
(1943)疑惑の影:二人のチャーリー/Shadow of a Doubt