新婚の麻薬捜査官ヴァーガスは妻とともにメキシコからアメリカに入った。そこで車の爆発事件が発生した。
ヴァーガスはさっそく捜査に入る。アメリカ側では「犯人を必ず捕らえる」という評判のクインラン警部が担当した。
クインランはすぐに容疑者を掴まえるが、ヴァーガスは彼の捜査方法に疑問を持つ。
製作年:1958、監督:Orson Welles、脚本:Orson Welles、原作:Badge of Evil(Whit Masterson)
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
ラモン・ミゲル・ヴァーガス(チャールトン・ヘストン) 麻薬捜査官
スーザン・ヴァーガス(ジャネット・リー) 妻
ハンク・クインラン警部(オーソン・ウェルズ)
ピート・メンジズ巡査部長(ジョセフ・カレイア)
アル・シュワルツ地方検事補(モート・ミルス)
検視官(ジョゼフ・コットン)
ターニャ(マレーネ・ディートリッヒ)
リネカー氏(?) ロス・ロブレスの有力者
マルシア・リネカー(ジョアンナ・ムーア) リネカーの娘
マノロ・サンチェス(ヴィクター・ミラン) マルシアの恋人
ジョー・グランディ(エイキム・タミロフ)
◆ 補足
本作のヴァージョンには「試写会版」「劇場公開版」「修復版」がある。撮影後、監督のオーソン・ウェルズに無断で「試写会版」が製作され試写会では不評であったので、さらに「劇場公開版」が製作された。ウェルズの死後、彼のメモにしたがって「修復版」が製作された。私が見たのは「劇場公開版」。
豪華キャスト。主演三人の他に出番は少ないが、マレーネ・ディートリッヒ、ジョゼフ・コットンも出演している。ただしコットンは「劇場公開版」には出演しない。コットンはオーソン・ウェルズの映画の常連の出演者。
私の不満を言えば、スーザンをもっと活躍させてほしかった。ジャネット・リーなので。後はわりと早々にクインランが怪しいことが我々に分かること。
夜の場面が多いからだが画面が暗い。嘘でもいいから明るい画面にしてほしかった。
地方検事には選挙で選ばれる「州地方検事」と連邦政府から任命される「連邦地方検事」がある。前者は州内の事件を捜査し、後者は州を跨る事件を捜査する。地方検事は管理者であって、その下に個々の事件を担当する「地方検事補」がいる。
■ あらすじ
◆ 爆発事件
メキシコの麻薬捜査官ラモン・ミゲル・ヴァーガスは、新婚の妻スーザンとともにアメリカとの国境を越えてロス・ロブレスの町に入った。
すると地元の有力者リネカーの車が爆発した。爆発地点はアメリカであるが、車はメキシコ側から入ってきた。
ヴァーガスはスーザンをホテルに帰して、さっそく調査を始めた。アメリカ側からはハンク・クインランという太った足が悪い警部が来た。
クインランは事件の犯人を必ず捕らえると評判の警部である。捜査に入ろうとするヴァーガスに嫌な顔をした。
怪しいと思われたジョー・グランディの手下たちの幾人かが拘留された。
◆ グランディ一味の嫌がらせ
スーザンはメキシコ側のホテルに戻ろうとした。だが若者から声を掛けられて別のホテルに案内された。
待っていたのはグランディである。彼は捕らえられている手下を釈放するように迫った。そもそもスーザンは彼らを釈放する権限などはなく、当然断った。
スーザンはホテルに帰り、ヴァーガスも戻ってきた。だがグランディ一味は二人に嫌がらせを続けた。
嫌になった二人は引き払ってアメリカ側のホテルに移ることにした。
◆ クインランの不正な捜査
また国境を越えたところで、二人はクインランの部下のピート・メンジズに会った。
メンジズはヴァーガスに「すぐにクインランに会ってくれ」と要請した。
ヴァーガスはクインランに会いに行き捜査に加わり関係者を尋問した。メンジズはスーザンを送っていった。
クインランは被害者の娘のマルシアと彼女の恋人マノロ・サンチェスを疑っており、アパートの洗面所で発見されたダイナマイトを証拠であるとした。
だがしかし偶然ではあるが、ヴァーガスは直前にその洗面所を見ており、ダイナマイトなどはないことを確認していた。
その件についてヴァーガスとクインランは激しい口論を展開した。
それを見たグランディはクインランに近づいた。またヴァーガスはアル・シュワルツ地方検事補にクインランの不正捜査を訴えた。
◆ クインランの陰謀
この事態にいたってクインランはヴァーガスを陥れることを計画する。
すなわちヴァーガスの妻スーザンに麻薬常用者の濡れ衣を着せる。それをグランディに指示した。
グランディ一味はスーザンをホテルから誘拐した。
一方ヴァーガスは警察でクインランが担当した過去の事件の記録を調べた。彼が証拠をでっち上げて、犯人を逮捕していたことを確信した。
ヴァーガスはホテルに戻ったが、スーザンは誘拐されていた。そのホテルがグランディの所有であると聞いて、一味に溜まり場の酒場に向かった。
◆ スーザンが逮捕
スーザンは薬物で昏睡状態。クインランが現れた。
クインランは突然意外な行動に出る。陰謀を知っているグランディの首を絞めた。スーザンを殺害犯に見せかけるつもりである。
スーザンはグランディ殺害の疑いで、逮捕され留置場に入れられた。
事態を察知したヴァーガスは留置場に向かう。だが途中でメンジズに会った。メンジズはグランディ殺害現場で発見されたクインランの杖を持っていた。
◆ メンジズは撃たれ、クインランは死亡
二人はクインランを盗聴することにした。メンジズはクインランを呼び出して問い詰めた。
だが盗聴に気が付いたクインランはメンジズを撃った。クインランはさすがに長年の相棒を撃ったことで涙を流した。
だがヴァーガスが現れると、今度はヴァーガスに拳銃を向けた。ヴァーガスをメンジズ殺害犯にするつもりである。
ヴァーガスは両手をあげた。だがまだ生きていたメンジズはクインランを撃ち倒した。
◆ 事件解決
釈放されたスーザンがシュワルツに連れられて現れた。クインランの女のターニャも来た。
シュワルツはリネカーの殺害事件はサンチェスが犯行を自供したと伝えた。マルシアとの結婚に反対されたためである。
■ 出演作
◆ オーソン・ウェルズ
(1943)恐怖への旅/Journey into Fear
(1947)上海から来た女/THE LADY FROM SHANGHAI
(1944)ジェーン・エア/Jane Eyre
(1953)黒魔術/Black Magic
(1946)離愁:永遠の明日/Tomorrow Is Forever
(1949)チェーザレ・ボルジアの陰謀/Prince of Foxes
(1950)黒いバラ/The Black Rose
◆ チャールトン・ヘストン
(1958)大いなる西部/Big Country
Mother Lode(大金塊)
(1950)執拗なサイコ、虐殺の町/Dark City
(1954)黒い絨毯/The Naked Jungle
◆ ジャネット・リー
(1949)若草物語/Little Women
(1949)フォーサイト家の女/That Forsyte Woman
(1950)暴力行為/Act Of Violence
(1949)ママの青春/Holiday Affair
◆ マレーネ・ディートリッヒ
(1930)モロッコ/Morocco
(1932)上海特急/Shanghai Express
(1939)砂塵/Destry Rides Again
(1950)舞台恐怖症/Stage Fright
(1956)八十日間世界一周/Around the World in Eighty Days
(1952)無頼の谷/Rancho Notorious
(1936)真珠の首飾り/Desire
◆ ジョゼフ・コットン
(1941)市民ケーン/Citizen Kane
(1944)ガス燈/Gaslight
(1944)恋の十日間/I'LL BE SEEING YOU
(1949)第三の男/The Third Man
(1950)旅愁/September Affair
(1953)ナイアガラ/Niagara
(1964)ふるえて眠れ/Hush... Hush, Sweet Charlotte
(1977)エアポート'77/バミューダからの脱出/Airport '77
(1953)殺人の青写真/Blue Print For Murder
<1950)追いつめられた男/Walk Softly, Stranger
(1943)恐怖への旅/Journey into Fear
(1956)殺し屋は放たれた/The Killer Is Loose
(1958)宇宙冒険旅行:地球から月へ/From the Earth to the Moon