■ Black Magic
Joseph of Roma mastered hypnotism and became Count Cagliostro.
Various people try to take advantage of a woman named Lorenza, who closely resembles Marie Antoinette.
Madame du Barry tries to become the wife of Marie's husband. The Vicomte de Montagne wanted Marie to be his wife.
Cagliostro also tries to gain power by using Madame du Barry, the Vicomte de Montagne, and Lorenza.

ロマのジョゼフは催眠術を習得してカリオストロ伯爵となった。
マリー・アントワネットに酷似したロレンツァという女性をいろいろな人物が利用しようとする。
デュ・バリー夫人はマリーの夫の妻になろうとする。ド・モンターニュ子爵はマリーを自分の妻にしようとする。
カリオストロもデュ・バリー夫人、ド・モンターニュ子爵、ロレンツァを利用して権力を得ようとする。


製作年:1949、監督:Gregory Ratoff、Orson Welles、脚本:Charles Bennett、Richard Schayer、原作:Alexandre Dumas


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)
 ジョゼフ・バルサモ/カリオストロ伯爵(Annielo Mele → オーソン・ウェルズ)
 ベニアミノ・バルサモ(レオナルド・スカヴィーノ) ジョゼフの父親
 マリア・バルサモ(タマラ・シェイン) ジョゼフの母親
 ギターノ(エイキム・タミロフ) ジョゼフの仲間
 ゾライダ(ヴァレンティナ・コルテーゼ) ジョゼフの仲間

 フランツ・アントン・メスメル博士(チャールズ・ゴールドナー)

 マリー・アントワネット(ナンシー・ギルド:二役)
 ルイ16世(リー・クレーゼル)
 ルイ15世(ロバート・アトキンス)
 デュ・バリー夫人(マーゴット・グラハム)
 ド・モンターニュ子爵(Stephen Bekassy)
 ジルベールGilbert de Rezel(フランク・ラティモア) 衛兵隊長、ロレンツァの恋人
 ロレンツァ(ナンシー・ギルド:二役)

ナンシー・ギルドが二役。マリーは左顎にホクロがある。オーソン・ウェルズは、本作のような胡散臭い役にはピッタリ(笑)。

◆ 補足/マジック

マジック/magicは今日の英語では「悪」の意味が込められている。しかしwhite magicという言葉もあるので、特に悪を強調する場合にはblack magicという。

本来magicは「magi(単数magus)が使う術」の意味である。マギ/magiは新訳聖書にあるようにイエスの誕生を祝福しに来たゾロアスター教の僧侶である。新約聖書が書かれた時代では、キリスト教とゾロアスター教は友好関係にあった。

その理由は紀元前539年、キュロス二世の軍隊がバビロンに進撃し、捕らえられていた多数のユダヤ人を解放した。それでゾロアスター教の教義がユダヤ教に影響を与えた。キリスト教はユダヤ教から生まれた。その結果である。
 


■ あらすじ

◆ 両親は殺された

1848年、パリ。ジョゼフは両親とともにロマの人々と一緒に暮らしていた。

母親のマリーには予知能力があり少年の死を予知した。だがそれで裁判にかけられて両親は処刑された。処刑の責任者はド・モンターニュ子爵であった。

またジョゼフも鞭打ち刑になった。ジョゼフは両親の死体を目に焼き付けた。

◆ 催眠能力に気が付く

ジョゼフはロマの仲間とともに放浪した。見世物小屋でトリックや怪しいものの販売、詐欺などなど。

すぐに別のところに移動するので、後でインチキがばれても捕まえられることはなかった。

ある時ジョゼフは自分に催眠能力があることに気が付いた。暗示をかけると相手は、その通りになる。ジョゼフのメニューの一つになった。

ジョゼフの評判を聞いてフランツ・アントン・メスメル博士が訪問してきた。

メスメルはジョゼフに「催眠の科学的研究に協力してほしい」と頼んだ。

ジョゼフはしばらく考えたが、それよりも自分の能力を利用して金儲けをする方を選んだ。

◆ カリオストロ伯爵となる

ある男爵。常に体が震えて止まらないそうである。痛みもある。

ジョゼフは男爵の目を見つめて「俺の目を見ろ。震えのことは忘れろ、新しい人生だ」とストレートに言った。

男爵は震えも痛みもなくなり、感謝して立ち去った。もちろん謝礼はたっぷり。

ジョゼフはさらに研鑽を重ねるとともに、いかにも怪しい雰囲気から、言動、動作、服装を上品なものに変えて行った。

そしてカリオストロ伯爵と名乗った。

ヨーロッパ中を回った。金も入ってきた。フランスに戻って来た。

◆ ロレンツァと会った

ド・モンターニュ子爵が女性の患者を連れてきた。気を失っている。カリオストロは、他の人を払って治療する。

女性をいったん目を覚まさせて、今度は催眠状態に導いた。そして経緯を聞き出した。

女性の名前はロレンツァ。ある町でオーストリアから戻って来たマリー・アントワネットと夫のルイを見かけた。マリーが自分と瓜二つであることに驚いた。

ある男性に宮殿の庭に連れていかれて、他の高位の男性が自分にキスをしてきた。

ロレンツァは別のところに連れていかれて眠らされた。

補足。ロレンツァは知らないが「他の高位の男性」はド・モンターニュである。そのド・モンターニュがカリオストロのところに来るのはおかしいようにも思える。しかし、何らかの理由でロレンツァが昏睡状態に陥り、(後で判明するように)ド・モンターニュがロレンツァを利用しようとしていると納得できる。

さてさてド・モンターニュはジョゼフの両親を殺した男である。忘れるはずもない名前である。

カリオストロは、ロレンツァを治療できなかったことにして、また眠らせた。ド・モンターニュには「治療はできなかった。さらに治療する」と話した。

◆ ジルベールはロレンツァの恋人

一行はパリへ行った。その間、ロレンツァは、カリオストロの催眠にかかったままで、依然として気を失っている。

しかしカリオストロは時々ロレンツァの目を覚まさせて「お前は私が好き」との暗示をかけている。ロレンツァはカリオストロに愛の言葉を語る。

近衛隊長のジルベールが訪ねてきた。ロレンツァを探しているとのこと。実はジルベールはロレンツァの恋人である。

◆ デュ・バリー夫人と会う

デュ・バリー夫人が入ってきた。どこから情報を得たのか知らないが、ぶしつけに「オーストリアの売春婦に似た女性は?」と聞く。

「オーストリアの売春婦」とはマリーのことである。ここでロレンツァが入ってきた。デュ・バリー夫人は実際にロレンツァをみてマリーと酷似していることに驚いた。

ロレンツァはカリオストロが指示したので部屋から出て行った。

デュ・バリー夫人は「ルイ(16世)は私を愛している。でもオーストリアの小娘(マリー)が邪魔をするせいで結婚できないのよ」と不満を言う。まあ「ルイ16世が私を愛している」というのは客観的に見てかなり怪しいが。

◆ パーティで障碍者を治療する

パーティ。カリオストロもいる。ルイ(16世)とマリー妃が入場してくる。マリー「あの男たちは?」「デュ・バリー夫人の招待です」「あの女(デュ・バリー夫人)が呪術師を連れて来た」。

さらにルイ15世とデュ・バリー夫人が手をつないで登場した。「あいつは誰だ?」「カリオストロ伯爵です」。補足、デュ・バリー夫人は妻や妾ではないのに、なぜかルイ15世と一緒にいる。

それでさっそくカリオストロの腕前を試すことになる。車イスのに乗った人、精神病の人、などなど多数が入場してくる。

カリオストロは「全員を一度に直す」と言って彼らに叫んだ。彼らはたちまち治ってダンスを始めた。

実はこれはカリオストロを陥れるための陰謀であって、呼ばれた人々は病気ではない人である。演技で病気を演じたもの。

これをカリオストロは見破っていて「治せるなら、元に戻すことも可能」。マヒの偽装をしていた人に「元に戻れ」という。すると彼はマヒになる。今度は偽装ではなく本物である。さらに一声で正常に戻った。

◆ デュ・バリー夫人の陰謀

夜、ロレンツァが寝て言ところにジルベールが侵入する。ジルベールはロレンツァの恋人である。「来てくれると信じていた。恐ろしい夢だったわ」。二人は出て行った。

デュ・バリー夫人は宝石商を呼んだ。100万フランの宝石を依頼する。

デュ・バリー夫人の陰謀は、ロレンツァが宝石を買う(振りをする)。それはマリーが買ったと誤解させる。マリーが貴重な国民の税金を浪費したことに対して国民は怒り、国王(ルイ15世)はマリーを追放する。すると自分はルイ16世と結婚できて皇太子妃となる。

しかしデュ・バリー夫人の陰謀はロレンツァが消えているので、とりあえず失敗する。

カリオストロはロレンツァのことをゾライダに聞いた。ゾライダはジルベールと二人で出て行ったことを知っていたのだが、カリオストロを諫めるために黙認していたもの。

カリオストロは修道院からロレンツァを連れ出した。そしてカリオストロはロレンツァと結婚した。この結婚はロレンツァの本心とは無関係であって、催眠下で行われたものである。

◆ ド・モンターニュ子爵は「マリー」と会った

話を要約すると、デュ・バリー夫人がマリーとルイによってパリから追放され、さらにルイ15世が脳卒中で死亡する。

カリオストロはロレンツァを仮死状態にして、死亡したことにして埋葬する。そしてこっそり掘り出す。手の込んだことをするが、次の陰謀をうまくやるためである。補足、掘り出すところをジルベールが目撃している。

ド・モンターニュ子爵にマリーの使者が来て「ブローニュの森で会いたい」と伝えた。我々はカリオストロの仕業であることを知っている。

ド・モンターニュ子爵は「マリー」と会った。「私でも愛は命じられない」「私のことを」「そうでなければこない」とわざとらしい展開である。

「マリー」は二点を要求する。「明日の夜零時に私のところに来てちょうだい」&「パーマ(←宝石業者)のダイアのネックレスを用意してちょうだい」。

「100万フランです」「大臣ならできるでしょ」「公費を横領すれば、私の首が飛ぶ」「死ぬことはないわ」。

そしてカリオストロは「ド・モンターニュ子爵がマリーのために高価なダイアを贈るネックレスを贈ると広めた。

国民は怒った。宮廷に押しかけた。

◆ ド・モンターニュは「首を括った」

ロレンツァのところにジルベールが現れた。ロレンツァは「王妃の振りをさせられた」と訴えた。

王宮のマリーの前に、ド・モンターニュが現れた。さらにジルベールが現れた。二人は剣で戦う。マリーは二人の戦いを制止した。

そこにカリオストロが現れた。カリオストロ、ジルベール、ド・モンターニュが言い合う。結局カリオストロがド・モンターニュを騙し、ド・モンターニュも卑怯なことをしたことが判明。

マリーはカリオストロとド・モンターニュの逮捕を命じた。

二人は牢に入れられた。鉄格子を間にして隣同士。ところでド・モンターニュはジョゼフの両親を処刑した張本人、憎い親の仇である。

カリオストロはド・モンターニュを催眠術にかけた。ド・モンターニュはシーツをロープにして首を括った。

◆ マリーとロレンツァが会った

マリー夫婦がいる。法務大臣と検事が来て報告した。「ド・モンターニュが牢で首を括りました。彼の死は事件の陛下の関与を隠すためだとの噂がでています」。

そこに女性が二人入ってきた。一人はヴェイルを被っている。もう一人はゾライタ。

「ド・モンターニュ子爵を騙すためにカリオストロが利用しました、彼女には罪身はありません」。

ヴェイルの女性が顔を見せた。ロレンツァ。マリーは驚いた。そして事情を知った。

ロレンツァ「彼は私を見て私の意志を消すのです。法廷でカリオストロのことを証言します」。

◆ 裁判

カリオストロが捕まったことに民衆は反発した、騒ぎが発生した、大きな流れになって裁判所の前に集まった。

カリオストロは無罪を主張した。自分が自身の弁護人となった。

検察はロレンツァを証人として呼び出した。ヴェイルを取ったロレンツァに廷内は騒然。

この場でもカリオストロはロレンツァを催眠にかけた。検事「王妃の振りをさせようとしましたか?」「知りません」とカリオストロに有利な展開。

ジルベールも証人となったが、カリオストロはジルベールにも催眠をかけた。カリオストロ有利の証言が積み重ねられた。

さてここで突然、メスメル博士が現れた。メスメル博士はカリオストロ=ジョゼフの素性と悪行を明らかにした。

カリオストロの力ではメスメル博士に催眠をかけることは不可能である。

◆ カリオストロは転落した

休廷となった。ここで裁判所の外で騒いでいた群衆がなだれ込んできた。

これを利用してカリオストロは逃げ出した。ジルベールが追いかけた。

カリオストロは屋上に逃げた。ジルベールはカリオストロと剣で戦った。カリオストロは催眠術をかけようとするが、ジルベールは用心しているのでかからない。

激しい戦いであったが、ジルベールが屋根の端に追い詰めた。最後の力でカリオストロが切りかかったが、ジルベールは、それをかいくぐってカリオストロを突いた。

カリオストロは屋根から転落して絶命した。

下りて来たジルベールはロレンツァと抱き合った。