■ For Whom the Bell Tolls(映画,1943)/スペイン内戦/アーネスト・ヘミングウェイ


製作:1943年、脚本:ダドリー・ニコルズ、監督:サム・ウッド   予告編   予告編   フル動画-part1   フル動画-part2  


■ あらすじのあらすじ

スペイン内戦。ロバート(ゲイリー・クーパー)はフランコ派の要衝の鉄橋を爆破するために、共和派山岳ゲリラに協力を依頼する。

リーダーのパブロは協力を拒否するが、妻のピラーが主導権を取り協力することになる。パブロは、その後も問題を起こすが、最終的には作戦に協力する。

作戦はゴルツ将軍配下の爆撃機部隊と連携することになっており、鉄橋爆破を実行しない場合は、ゴルツ将軍に連絡し、爆撃機部隊も出撃しない。

偵察を出すが、フランコ派の動向から、攻撃情報が漏れたと判断されたので、ゴルツに攻撃中止の伝令を出す。しかし爆撃機部隊が出撃すれば、爆破実行なので準備を進める。

作戦直前のフランコ派配置は、鉄橋の両側に歩哨所。左岸に騎兵隊。さらに鉄橋に向かって戦車部隊が突き進んでいる状況。

ゴルツには中止の伝令が間に合わず、爆撃機が出撃した。その出撃を確認して爆破攻撃を開始。

ピラーが右岸の歩哨所の攻撃を指揮し、パブロが左岸の歩哨所の攻撃と戦車部隊との戦闘を指揮する。注、騎兵隊との戦闘は描かれない。

ロバートとアンセルモは鉄橋に爆弾を仕掛ける。右岸に退避して爆破。パブロも右岸に戻ってくる。

爆破後は右岸の上流側にロバートの部隊、左岸にフランコ派の部隊と言う配置。

撤退するには、右岸の下流側に渡る必要があり、その時に対岸のフランコ派から銃撃を受ける可能性がある。

一人一人が馬に乗って道路を横切る。しかしロバートが撃たれて負傷した。ロバートは「これが自分の最後」と判断し、機関銃を貰い受けて待ち構える。

フランコ派の騎兵隊が上流側を渡って追撃してくる。それに向かってロバートは引き金を引く。
 


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ロバート・ジョーダン(ゲイリー・クーパー)
 マリア(イングリッド・バーグマン)
 パブロ(エイキム・タミロフ)
 ピラー(カティーナ・パクシヌー)
 ゴルス将軍(レオ・ブルガーコフ)
 アンセルモ(ウラディーミル・ソコロフ)
 エル・ソルド(ジョゼフ・カレイア)

スペイン内戦。選挙で勝利した共和派政府に対してフランコ軍が反乱を起こしてひっくり返した。それに対して共和派が戦いを挑んだ。

本作はスペイン内戦を舞台にした同名のヘミングウェイの原作を映画化したもの。原作は読んでいないので本作を見ただけの感想。本作の設定は1937年。原作は「誰がために鐘は鳴る」だが映画は「誰が為に鐘は鳴る」らしい。

元は大学でスペイン語を教えていたロバート・ジョーダン(ゲイリー・クーパー)は、スペイン内戦に義勇軍の一員として参加した。ゴルス将軍(レオ・ブルガーコフ)の指示でフランコ軍が確保している鉄橋を爆破する任務を帯びてやってくる。

この土地の出身の老人アンセルモ(ウラディーミル・ソコロフ)が同行している。パブロ(エイキム・タミロフ)が率いる山岳地帯を根城とする共和派ゲリラと協力する。
 


■ ポイント

  • 鉄橋はフランコ軍の補給の要衝であり、厳重に警護されている。歩哨所があり、さらに騎兵隊も配置されている。
  • 爆破後の撤退路はパブロがよく知っている。他の者はあまり知らない。
  • 撤退時に使う馬の数が足りない。
  • 五月だが山岳地帯のなので雪が降るかもしれない。すると敵軍に足跡を追跡される可能性がある。逆に降り続けば追跡されない。
  • 爆破作戦とゴルス配下の爆撃機部隊の攻撃が連携する。爆破を実行しない場合は、ゴルスに連絡し爆撃は実行されない。
  • パブロには問題があり、いろいろと面倒を引き起こす。
  • 近くでエル・ソルド(ジョゼフ・カレイア)が率いる共和派部隊も活動している。

■ 第一段階

パブロの部隊は岩山がそそり立つ山岳地帯で、この中の複数の洞窟が根拠地となっている。

ロバートはパブロに協力を依頼するが「ここは根拠地であって作戦地域ではない」という理由で協力を拒否する。しかしパブロの妻のピラー(カティーナ・パクシヌー)は協力に同意し二人は対立する。ピラーはメンバー一人一人にどうするかを聞いていく。結果はピラーの完勝。パブロはかつては勇猛な戦士であったが、最近は臆病風に吹かれているようである。

ピラーは「指揮をするのは私だよ」と言い事実上の指揮者となる。メンバーからは「パブロを殺すべき」との意見さえ出る。パブロは以降いろいろと問題を引き起こす。問題が発生するごとに「パブロをなぜ殺さなかった」「しかしパブロがいなければ、誰が撤退を指揮する?」との意見が出てくる。
 


■ 第二段階

上空に敵の戦闘機が現れた。初めてのことらしい。ロバートが鉄橋付近と敵の動向の偵察を指示し、アンセルモなどが偵察にでかける。

町に住んでいる共和派の人物が洞窟を訪ねてくる。トラック、装甲車、戦車はいつも通り、しかし共和派の「大規模な攻撃」の噂が広がっているらしい。橋を爆破するという噂も出ている。攻撃の情報が漏れたらしい。

ピラーの案内でロバートはエル・ソルドのところへ行く。マリアも同行する。ロバートは「馬が後五頭必要」と話す。エル・ソルドは「敵から盗めばよい」。しかし雪が降れば足跡をつけられる可能性がある。注、後ほど一人で行動していた騎兵隊を倒し、馬を手に入れる。

アンセルモたちが偵察から帰ってきた。そして雪が降り始めた。パブロが戻ってきて「これで爆撃も爆破もなくなった」と言う。メンバーといろいろ口論になる。

この後パブロはまた出ていく。しかししばらくして「雪が止んだ、橋を爆破できる」と戻ってきた。「協力する」と言う。

ロバートの部隊は岩山に隠れて、敵の通り道を見下ろす位置で機関銃を構える。偵察を出す。騎兵隊が見えてくる。しかし別方向に行ったのでやり過ごす。また別の騎兵隊が現れる。今度はかなり多数。引き金を引こうとしていると、別方向から騎兵隊への攻撃がある。エル・ソルドの部隊。

エル・ソルドは攻撃しながら別の方向へ移動していく。騎兵隊は追いかける。「エル・ソルドの部隊を援護すべき」という主張が出るがピラーが制止。ピラーによると鉄橋の爆破を成功させるために騎兵隊を別方向に誘導しているとのこと。注、しかし直後に爆破作戦を実行するわけではないので「作戦に備えて部隊を温存すべき」という理由の方が納得できる。

エル・ソルド部隊は、雪が積もった岩山に登っていく。しかし最後には爆撃機による攻撃で殲滅される。
 


■ 第三段階

さて、ここでパブロは、元の岩山の洞窟に戻ってくる。そしてなんと大事なダイナマイトの起爆装置を壊す。メンバーが戻ってくる。パブロはエル・ソルドが死亡した現場の近くにいたらしい。

ここで(再度偵察に出ていた)アンセルモも戻ってくる。そして鉄橋に向かってトラックや戦車が移動していると報告する。攻撃情報が漏れたのは確実である。

ロバートは爆破中止を決断する。ゴルツに伝令を送る。しかし爆撃機の攻撃が始まれば爆破を決行する。ここでまたパブロがこっそりと逃げ出す。

一応デフォルトは爆破中止と決まったが、場合によっては決行するので準備する。明日の朝に爆破。しかし起爆装置が破壊されていることが判明。危険が伴うが手榴弾で代用することにする。ロバートとアンセルモが手榴弾を加工する。

ここでパブロが三人を連れて戻ってくる。「これで馬が足りる」と言うが「三人増えたのだから同じだろう」と言われると「奴らには馬は必要ない」と答える。

ロバートたちは、爆破攻撃の配置に着く。朝まで待機。

伝令は基地に到着するが、ゴルツの居場所が分からず、たらいまわしされ時間を浪費する。ゴルツに情報が届くがゴルツは「手遅れだ、作戦は失敗だ」と叫ぶ。頭上を爆撃機が飛んでいく。
 


■ 第四段階

連絡しているのでゴルツ配下の爆撃機部隊の攻撃は基本は中止となるはず。しかしロバートは太陽が地平線から登るのを確認し頷いて爆破を決断する。注、本当は爆撃機の出撃を確認するはず。爆撃機の音や機影はない。一応これを確認したと言う想定なのだろう。

橋の両側にある歩哨所を襲撃する。右岸はピラーが指揮する。左岸はパブロの部隊。ロバートとアンセルモは鉄橋にダイナマイトを仕掛ける。唯一の機関銃はパブロが使う。注、この前に騎兵隊が流れの中と鉄橋を使って右岸から左岸に移動している。流れとは言っても水量は非常に少ない。

敵の騎兵隊が応援に駆けつけ、戦車部隊も鉄橋の左岸に近づいてくる。先頭の戦車が鉄橋に差し掛かる。パブロたちは岩陰から応戦する。ロバートとアンセルモは、右岸に退避してダイナマイトを爆発させる。鉄橋は崩れ落ち先頭の戦車は谷に転落する。続く戦車は立ち往生する。アンセルモが鉄橋の壊れた柱の下敷きになって死亡する。さらにもう一人が死亡。

パブロの部隊が川(←鉄橋の下流側)を渡ってもどってくる。なんとここでパブロは一緒にいた三人を射殺する。「これで馬が足りる」。他のメンバーはパブロの行動を非難する。注、死亡者が発生したので、馬は足りる状況だった。蛇足だが左岸にはパブロと連れてきた三人ともう一人が渡り、もう一人は死亡した。
 


■ 第五段階

鉄橋は破壊され、右岸にロバートの部隊、左岸に敵の騎兵隊と戦車部隊が対峙する。ロバートの部隊は右岸の上流側の大きな岩の陰に隠れている。ここから道路を渡って下流側の岩の陰に走る。しかしその間に敵から狙撃される恐れがある。

一人ずつ馬に乗って飛び出していく。しかしロバートが撃たれて落馬。他のメンバーがロバートを岩陰に引っ張り込む。

しかしロバートは「これが自分の最後」と判断する。メンバーの説得を振り切って自分の任務を定める。パブロが持っていた機関銃を譲り受けて機関銃を構える。他のメンバーは馬で撤退していく。(上流側を回って)騎兵隊が追撃してくる。ロバートは騎兵隊に向かって機関銃の引き金を引く。
 


■ マリア

パブロの部隊の中にいる女性。イングリッド・バーグマンが演じていてキャスト紹介ではゲイリー・クーパーの次にでてくるが、作戦上は重要な役割をしない。念のためだがイングリッド・バーグマンは好き。

マリアは共和派の町長の娘で、両親はフランコ派に虐殺された。マリアは頭を丸坊主にされた。列車で運ばれているところで、パブロの部隊が襲撃して助け出された。

ロバートとマリアは、すぐに惹かれ合うようになる。マリアの髪はまだ伸びておらず短いことを気にしている。恥ずかしそうな風情だがマリアはロバートがいる場所に寄ってきたりして、いろいろ話す。

ピラーはそれとなく二人に気を使う。またピラーはロバートが来た時に自分から「手相を見てやる」と言ってロバートの手を見るが、その結果は言わない。ロバートが聞いても「何も見えなかった」と答えない。しかし作戦の実行前にピラーはマリアに「残された時間を二人で生きろ」と言ってマリアをロバートの近くにやらせる。ピラーにはロバートの運命が分かっていたようである。

爆破作戦実行中は馬の手綱を持って待機している。

最後にロバートが部隊を離脱する決心をした時に、マリアは泣き叫ぶがロバートに説得される。

蛇足。イングリッドは、本作に出演したくて、マリアのように髪を短くして、原作者のヘミングウェイを訪問したらしい。
 


■ 蛇足

以下におかしな部分を挙げるが、これらは本作の価値を下げるものではない。まじめに見ればおそらくもっとあるだろう。普通の映画にも、このくらいのおかしなところはある。

◆ 鉄橋の画像

攻撃対象の鉄橋が何回か表示されるが、それがいくつもある。注意して見ていなくても「これは前の場所とは違うのでは?」と気がつく。

全体として四か所程度の鉄橋が映される。橋脚や周囲の状況が明らかに異なっている。

わざわざ別の場所の鉄橋を映す理由は、私には不明である。

◆ 最後の場面は左右が逆

川の右岸から鉄橋に接近して鉄橋を攻撃する。パブロのティームは左岸に移動して攻撃し、終了後右岸に撤退する。

すると最後の場面は鉄橋を挟んで、左岸側から攻撃されるはずだが、右岸側から攻撃されている。

右岸から鉄橋に接近し右岸に撤退する証拠はいくつもある。攻撃前に鉄橋を見る時、ピラーのティームが歩哨所を攻撃する位置、ロバートとアンセルモが爆弾を仕掛けた後の撤退方向、パブロのティームが攻撃前後に川をわたる光景、パブロのティームが歩哨所を攻撃後、接近する戦車部隊を攻撃する位置、など。

◆ その他

攻撃終了後、なぜ右岸の上流側に撤退したのか?もちろんこれがなければ、最後にロバートが撃たれるストーリーが成立しないが。パブロの部隊は、鉄橋の下流を右岸から左岸にわたり、歩哨所を攻撃した後、道路を横断して上流側に移動して戦車隊を攻撃し、その後道路を渡り、さらに鉄橋の下流を右岸に移動し、さらに道路を横断して上流側に移動すると、非常に無駄な行動をしている。

「爆撃機」としていくつも飛行機がでてくるが、すべて単発。まあ単発の爆撃機もあるだろう。
 


■ スペイン内戦

詳細は以下を参照。
スペイン内戦

選挙で成立した共和派政府に対してフランコ派が反乱を起こした。最終的にはフランコ派が勝利した。

フランコ派には、ドイツ、イタリア、ポルトガルなどが加担した。

共和派には、スペイン内部のバスク、カタロニアの他にソ連、トロッキスト、アナキストなどが加担した。また欧米からは個人的な義勇軍が送られた。ロバートは義勇軍の一員。トロッキーはレーニンの後継者とみなされていたがスターリンとの権力闘争に敗北し暗殺された。日本では中核派や革マル派に連なる。共和派では、熾烈な内部抗争が発生した。スペイン内戦やロシア革命時にはアナキストが軍隊を作っていた。

本作原作者のアーネスト・ヘミングウェイやジョージ・オーウェルは、共和派の義勇軍に参加した。
 


■ 出演作

ゲイリー・クーパー
モロッコ/Morocco(1930)
(1943)誰が為に鐘は鳴る/For Whom the Bell Tolls
真昼の決闘/High Noon(1952)
(1941)群衆/Meet John Doe
(1932)武器よさらば/戦場よさらば/A Farewell to Arms
西部の男/The Westerner(1940)
(1959)コルドラへの道/They Came to Cordura
(1954)悪の花園/Garden of Evil

イングリッド・バーグマン
(1941)ジキル博士とハイド氏/Dr. Jekyll and Mr. Hyde
(1943)誰が為に鐘は鳴る/For Whom the Bell Tolls
(1944)ガス燈/Gaslight
(1945)聖メリーの鐘/The Bells of St. Mary's
(1945)白い恐怖/Spellbound
(1945)サラトガ本線/Saratoga Trunk
(1946)汚名/Notorious
(1948)凱旋門/Arch of triumph
(1950)ストロンボリ/Stromboli, terra di Dio
(1956)無分別/Indiscreet
(1969)サボテンの花/Cactus Flower
(1942)カサブランカ/Casablanca
(1974)オリエント急行殺人事件/Murder on the Orient Express

◆ ウラディーミル・ソコロフ
「征服/Conquest(1937)」

◆ ジョゼフ・カレイア
「ギルダ/Gilda(1946)」
「ガラスの鍵/THE GLASS KEY(1942)」