■ Dr. Jekyll and Mr. Hyde


製作:1941年、脚本:ジョン・リー・メイヒン、監督:ヴィクター・フレミング   予告編   予告編  


イングリッド・バーグマン 


■ あらすじのあらすじ

医者のジキルはベアトリクスと婚約している。ジキルは精神分離の研究を行っている。帰宅する途中で男に襲われている女性を発見し助けた。アイヴィー。

ついに例の研究で良い結果が出た。しかし動物実験。思い切って自分で飲む。するとジキルの中の悪の人格ハイドが現れた。顔まで変わっている。

ハイドに変身して劇場に出かけた。ウェイトレスとしてアイヴィーが働いていた。支配人に金を渡してアイヴィーを解雇させる。泣きながら店から出てきたアイヴィーに取り入ってアパートまで行く。

その後はアイヴィーを金で隷属させて虐待する。

アイヴィーがジキルを訪ねてくる。ハイドに虐待されて傷を負っている。その相談。アイヴィーは高名な医者のジキルが、かって助けてくれた親切な男性であることを知る。しかし自分を苦しめているハイドであるとは分からない。

ジキルはアイヴィーに対して「もうハイドは現れない」と断言する。

しかしジキルが歩いていると、薬を飲まないのにハイドに変身してしまい、再度アイヴィーを訪ねていってアイヴィーを責める。

ジキルに戻ってベアトリクスに会いに行く。「もう結婚はできない」と言い渡すとベアトリクスは泣き崩れる。

またハイドに自動変身。最後は自分の実験室の中でハイドの姿で射殺される。
 


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ヘンリー・ジキル(スペンサー・トレイシー)
 ヘンリー・ハイド(スペンサー・トレイシー)
 アイヴィー・ピーターソン(イングリッド・バーグマン)
 ベアトリクス・エメリー(ラナ・ターナー) - ジキルの婚約者
 チャールズ・エメリー(ドナルド・クリスプ) - ベアトリスの父親
 ジョン・ラニョン(イアン・ハンター) - 医師、ジキルの知人
 プール(ピーター・ゴドフリー) - ジキルの執事

人格変換というテーマは興味深いのか、何度も映画化されている。ハイドが女性のパターンも存在する。今回紹介するのは1941年のもの。設定は1887年、イギリス。

ジキルは医者なので、ジキル家には居室の他に診察室があり、また人格変換実験のための実験室がある。居室と診察室は(たぶん)同じ建物だが、実験室は渡り廊下でつながった別の建物になっている。実験室は、外からは直接に入ることはできずに、居室の建物を通っていかないと入れないようになっている。
 


■ アイヴィー・ピーターソン(イングリッド・バーグマン)のキャラクタ

本作をピックアップしたのはイングリッド・バーグマンが出演しているから。イングリッドはわりと好き。しかしイングリッド(あるいは彼女の出演作)には問題がある。

一つは役柄が狭いこと。イングリッドは立派な役柄ばかりで、例えばトンマな役とかあるいは悪人の役はほとんどない。これが非常に惜しい。

本作のアイヴィー。最初にジキルと出会う場面。この部分のキャラクタ表現は、本作のイメージとは不一致で、またイングリッドにしては珍しいキャラクタである。脚本または監督のミスだと思うが、私としては非常に面白かった。

アイヴィーを暴漢から助けたジキルに対して、仮病を使ってアパートまで送ってもらう。アパートの中に入っても、できるだけジキルを引き留めようとする。まじめなジキルが戸惑う。ここがなかなか楽しい。最後には「意外と奥手なのね」とジキルを解放する。

もう一つは感情の表現動作が大袈裟なこと。これは良いとも悪いとも言えるが、イングリッドの出演映画を見ていると非常によく感じる。他の俳優では感じないので、監督の指示ではなく、イングリッドの個性なのだろう。しかしインタビュー動画を見ると、慎ましやかな感じ。
 


■ あらすじ

◆ アイヴィー

ジキルは将来有望な医者である。ベアトリクスとは婚約中。夜にエメリー家で夕食会がある。出かける前に、前から手掛けている動物を使った実験の結果を確認する。死亡している。失敗。ジキルは使った薬品を廃棄して夕食会に出かけた。

夕食会にはベアトリクスやその父親、そして医者仲間が揃っていた。ジキルは「善と悪を分離する」という自分の理論・実験について熱心に語る。しかしベアトリクスの父親も含めて、ジキルに対して批判的である。

友人とエメリー家を出て歩いていく。やはり友人もジキルの考えを批判する。劇場のそばで女性が襲われている場面に遭遇する。二人はその女性を助ける。アイヴィー。

アイヴィーは「ケガをした」「脇腹が痛む」と訴える。いや私はアイヴィーがジキルを見て一瞬嬉しそうな顔をしてのを目撃している。紳士の二人はアイヴィーを馬車で送っていく。馬車の中でアイヴィーはわりとペラペラ喋っている。

アイヴィーの家に着くと、まだ脇腹が痛いようである。ジキルがアイヴィーを連れて家に入る。帰ろうとしたが、まだ痛いようである。いやアイヴィーは、見えないところでニコニコしている。ここのところが、かなりしつこい。ついにアイヴィーはジキルにキスをする。

◆ 実験成功

まあ、ともかくアイヴィーと別れて帰宅した。研究熱心なジキルは、さらに実験を行った。ついに良さそうな結果が得られた。

しかし動物実験。人間に対してはどうなるのか?ジキルは意を決して自分の体を使って実験することにした。ベアトリクスへの手紙を書く。「この実験が失敗した場合は....」。そして薬を一気に飲みこんだ。

苦しくなって倒れた。ベアトリクスの顔が浮かんだ。アイヴィーの顔も浮かんできた。立ち上がって鏡を見る。別人の顔。ジキルはハイドとなった。部屋の外から執事がドアを叩いた。執事に「何でもない」と答えたが「声が違う」と言われる。そして元に戻る薬を飲んでジキルに戻った。ベアトリクスへの手紙は破って捨てた。

さてベアトリクスはチャールズと一緒に旅行に出かけた。モンテカルロから手紙が届いた。チャールズの体調があまりよくないらしく、フランスに行くとのこと。執事が「気晴らしにショーに行っては?」と勧めた。

◆ 劇場

例の薬を飲んだ。アイヴィーのイメージが浮かんできた。ハイドは劇場に入った。劇場ではショーが行われており、またアイヴィーがウェイトレスとして働いていた。

ハイドはボーイに金を渡してアイヴィーを呼び寄せた。アイヴィーは喜んで席に来た。ジキルだとは気がついていない。アイヴィーに1ポンドを渡して話しかける。ハイドはジキルとして訪れた時のことをアイヴィーに話す。アイヴィーはハイドが自分のことを知っているので気味が悪くなり戻ろうとする。ハイドはしつこく引き留める。

ハイドは支配人に金を渡してアイヴィーを首にするように言う。首にされたアイヴィーに声をかける。金を渡して付け入る。アイヴィーは怖くなる。

アイヴィーは失職してしばらくたった。元の同僚のマーシャが訪ねてくる。外に出ようと誘われるが躊躇する。ハイドがいるからである。

「あの男のいいなりなの?」と言われ、出かけることにする。しかしマーシャはアイヴィーの背中に傷があるのを見てびっくりする。

ここでハイドが入ってくる。脅されたのでマーシャは出ていく。アイヴィーはハイドを恐れておどおどしている。アイヴィーは振り回されるが、ハイドを恐れていいなりである。

注、アイヴィーはハイドに虐待されているのだが、その場面自体は、あまり描かれない。

◆ 「ハイドはもう現れない」

ベアトリクスとチャールズが戻ってきた。ジキルを訪ねてきてチャールズは「私も長くない」と言って二人の結婚を許可する。

アイヴィーがジキルを訪ねてきた。高名な医者との評判だからである。ジキルを見て「有名なジキル博士ってあなただつたの?以前あなたに助けてもらった」とにっこりする。以前のアイヴィーの調子。

アイヴィーは背中の傷を見せて相談する。「塗り薬を出そう」「薬では解決しないわ、助けてほしい、ハイドと言う男よ、人間じゃない、まるで獣、怖くて逃げることもできない」。

ジキルは躊躇している。「断るというなら毒を頂戴」「警察には相談したのか?」「あの男が怖い」「あの男から私を救い出して」。

ついでながらアイヴィーは「美人だとほめられるわ、私のことは嫌い?」ともちゃっかり付け加える。

ジキルは「ハイドはもう現れない」と言う。「嘘よ」「いや現れない、信じなさい」。ちょっと間をおいて「信じるわ」。アイヴィーは出ていつた。

◆ 薬を飲まないでも変身

ジキルは出かけた。歩いていると、何か奇妙な感じがする。その感じがだんだん強くなる。薬を飲んでいないのに勝手にハイドに変身した。抵抗するが完全にハイドになってしまった。

ハイドから逃れられたアイヴィーは嬉しそうである。そして「ジキル博士が私を思ってくれますように」と言っている。

だがしかしここでハイドが入ってくる。いったんハイドに会うとアイヴィーは抵抗できない。ジキルに言った言葉をハイドが口にするのでびっくりする。

ここでアイヴィーのアパートの人たちが悲鳴に気が付いて気づいて助けに来た。ハイドは逃げ出す。ハイドは追いかけられる。

◆ ジョン

注意事項。ここの展開ははっきり描かれていないが、ジキル/ハイドは、自分の家に入れない状況になり、友人のジョンに依頼して実験室から元に戻すための薬を持ってくるように依頼する。

自宅の裏口のドアを開けようとするが開かないので、表に回って執事に頼む。「ジキルの友達」。しかし執事に断られる。

ジョンが帰宅すると手額が届いている。ジキルから。「僕の研究室の鍵を同封した、Dの戸棚からAMSとZの薬ビンを取ってきてくれ、深夜、君の家へ使いをよこす、ビンを渡してほしい」。

ジョンがジキルの家に行ってビンを用意する。(手紙の内容とは違って)そこにハイドが現れる。ハイドはジキルの使いと言ってビンを要求する。

ジョンはハイドの話を信用しない。押し問答になる。埒が明かないのでハイドはその場で強引に薬を飲む。次第に顔が変わってジキルに戻る。

ジョンは事態を理解した。「なんということだ。警告したはずだ。研究は止めろ」「止めたさ」「ベアトリクスには?」「これから話す」。

◆ ラスト

ジキルはベアトリクスに話すために出かけていく。ベアトリクスを呼び出す。「話して何があったの?」「話さなければ」「何を?」「結婚できない」「なぜ?」「これで終わりだ」「隠し事はしないで」「それだけだ」「もう愛してないのね」。

ジキルはベアトリスを振り切って、いったん屋敷の外に出るが、すぐに戻る。ハイドに変身している。ベアトリクスが抱き着くが、別人だと気がついて悲鳴を上げる。

悲鳴を聞いて他の人が助けに来る。ハイドは逃げ出す。警官も追いかける。

ハイドは窓ガラスを破って自分の屋敷に飛び込む。執事と取っ組み合いになるが、実験室に入る。ジキルに戻る。

警官が飛び込んでくるがハイドがいないので探し回る。ジョン来てがジキルに対して「ジキル白状しろ」。「僕はジキルだ」と言うが次第に顔が変わってハイドになる。暴れまわるのでジョンは拳銃を構えて引き金を引く。
 


■ 蛇足

疑問点。ベアトリクスが旅行から戻ってくるタイミングで、ジキル/ハイドが実験室の鍵を炉に入れて鍵を融解する場面がある。セリフでの説明はないが「もう実験はしない」という決意にとれる。しかし後ほどジョンに鍵を渡して実験室から薬瓶を取ってくるように依頼する。この鍵はどうしたのか?

スペンサー・トレイシー。「桑港/San Francisco(1936)」「折れた槍/Broken Lance(1954)」「大草原/The Sea of Grass(1947)」「招かれざる客/Guess Who's Coming to Dinner(1967)」。

ラナ・ターナー。「郵便配達は二度ベルを鳴らす-The Postman Always Rings Twice 」「三銃士 -The Three Musketeers (1948)」

ドナルド・クリスプ。「嵐が丘 Wuthering Heights (1939)」「女王エリザベス The Private Lives of Elizabeth and Essex (1939)」「わが谷は緑なりき How Green Was My Valley (1941)」「名犬ラッシー 家路 Lassie Come Home (1943)」「呪いの家 The Uninvited (1944)」。
 

イングリッド・バーグマン
(1941)ジキル博士とハイド氏/Dr. Jekyll and Mr. Hyde
(1943)誰が為に鐘は鳴る/For Whom the Bell Tolls
(1944)ガス燈/Gaslight
(1945)聖メリーの鐘/The Bells of St. Mary's
(1945)白い恐怖/Spellbound
(1945)サラトガ本線/Saratoga Trunk
(1946)汚名/Notorious
(1948)凱旋門/Arch of triumph
(1950)ストロンボリ/Stromboli, terra di Dio
(1956)無分別/Indiscreet
(1969)サボテンの花/Cactus Flower
(1942)カサブランカ/Casablanca
(1974)オリエント急行殺人事件/Murder on the Orient Express