Boomerang!

ランバート神父が路上で撃たれて殺害された。
捜査の結果、ウォルドロンが逮捕された。目撃者七人も「ウォルドロンが犯人」と証言。ウォルドロンは起訴された。
しかし有罪を目指すはずの検事のハーヴェイは、ウォルドロンの無罪を主張した。


映画関連目次(闇雲映画館)

製作:1947年、原作:フルトン・アースラー、脚本:リチャード・マーフィ、監督:エリア・カザン


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ジョージ・A・ランバート(-) 神父、事件の被害者
 ヘンリー・L・ハーヴェイ(ダナ・アンドリュース) 州地方検事
 マッジ・ハーヴェイ(ジェーン・ワイアット) ヘンリーの妻
 ジョン・ウォルドロン(アーサー・ケネディ) 殺人事件の容疑者
 ハロルド・F・ロビンソン(リー・J・コッブ) 警察署長
 アイリーン・ネルソン(カーラ・ウィリアムズ) 事件10分前に被告を目撃
 マニオン(?) 映画館で切符を販売
 ストーン(ウィリアム・チャーリー) ハーヴェイの助手
 トーマス・ベンソン・ジェームズ(?) 警察本部長
 


■ あらすじ

◆ ランバート神父が射殺された

ジョージ・A・ランバート神父が街を歩いている時に後ろから頭部を撃たれた。死亡した。

犯人は道路を横断し逃げて路地に入って逃げた。誰かが追いかけたが見失った。

ランバート神父は当地の人々に信頼されており、誰かの恨みを買うような人物ではない。人々は怒り、また教会には多くの人が花を持って集まった。

目撃者は七人。ただし犯人の顔を見た目撃者はいない。黒いコートを着て帽子を被った中肉中背の男という、ありがちな風貌である。

簡単に解決するかに見えた事件は、なかなか手掛かりが掴めない。メディアは市当局や警察を攻撃し始めた。

◆ ジョン・ウォルドロンが逮捕された

行き詰った警察は「黒いコートを着て帽子を被った中肉中背の男」を片っ端から逮捕し始めた。「片っ端」の表現は言い過ぎであるかもしれないが、我々にはそのように思われた。

逮捕された人物は前に立たされて目撃者の七人がチェックした。

そして一人の男を選び出した。ジョン・ウォルドロン。

警察はウォルドロンを厳しく尋問した。彼には犯罪歴があり、また拳銃も所持していた。拳銃はランバート神父を神父を撃ったものと同型である。

ウォルドロンは、休憩を与えられず、長い間尋問された。警察から見れば仕事熱心ということであるが、少々行き過ぎたとも思えるものであった。

ウォルドロンは調書に署名した。検察に回された。

◆ ハーヴェイはウォルドロンと面会する

州地方検事のヘンリー・L・ハーヴェイはウォルドロンと面会した。

ウォルドロンは調書に署名したものの「俺は殺してない」と言う。

弁護士は「心神喪失を主張する」と言っている。

ハーヴェイは検事なので、言ってみればウォルドロンを有罪にするのが仕事である。しかしウォルドロンと会って、ちょっと違うような気がしてきた。

妻のマッジも、今までのハーヴェイと違うので心配なようである。

◆ 裁判-1

ハーヴェイは冒頭で驚くべきことを言う。

証拠もそろっている、表面的にはほぼ完全な事例で起訴するには問題がない。しかし本件は例外的な特色を有している。州地方検事の役割は有罪の証明にとどまらない。無実の者を守ることも重要な使命である。

そして被告人を不起訴にしたいと主張する。法廷は大騒ぎとなり休廷となった。判事はハーヴェイを部屋に入れて話した。

「犯罪者を起訴するのが君の仕事、不起訴を求めた動機が分からない、政治的な理由ならば資格を剥奪される」「でも彼は無実だと思います」。

ウォルドロンは周囲に睨みつけられながら警察の車に乗った。ハーヴェイはいろいろな人から非難された。「町全体が君の敵だ」。

ハーヴェイは最初は不起訴にしようと思うが、後で「起訴して真相究明する」という方針に転換する。

◆ 裁判-2

後日の裁判でハーヴェイは、ゆっくりゆっくりと論理を勧める。

◇ まず状況のまとめ

知人のアイリーン・ネルソンに現場近くのネルソンが勤務するカフェの窓から目撃された。事件発生の10分前。実はネルソンとウォルドロンは元恋人同士だが、事件当時は別れていた。

犯人の服装は、黒のコート、明るい色の帽子。

目撃者の七人は警察署で被告を見て「犯人と同一人物」と証言した。

被告は罪を認める発言をした。調書に署名した。

被告は32口径の回転式拳銃を所持、遺体にあった銃弾は同型の拳銃から発射されている。

被告は「事件当夜、映画館に行った」と言ったが、映画館で切符を売っているマニオンは「被告は来ていない」と証言した。

◇ 目撃者のロジャースに

「発砲の瞬間を目撃し犯人が拳銃を上げた時に光るものを見た」。本当ですか? → イエス。

ハーヴェイは拳銃を見せた。「拳銃は光が反射されないように作ってある」。注、理由は拳銃が光れば敵に所在が分かるから。

◇ 目撃者一人一人に

「犯人は本当にあの男でしたか?」と聞いていく。全員が頷く。「しかし黒いコートと帽子の男性はいくらでもいます」と言う。それでも目撃者は目撃を肯定した。

ハーヴェイは事件現場に事件同時刻で七人を集めて再現テストをしたと報告。「誰もターゲットの顔を識別できなかった」。目撃者の中には自信がなくなったものもでてくる。

◇ ネルソンに

「9/29,19:20にカフェの窓から見た人物がウォルドロンとの証言だが間違いないか?」。ネルソン:間違いない。

これもハーヴェイはテストした。テストの結果。窓際に立ってみると、外が曇っていて、人間を特定できなかった。

◇ マニオンに

プラザシアターで切符を販売している。「9/29夜被告が映画館に来てない」と証言。

ハーヴェイ:「被告が来ていないと断言できるか?」マニオン:「来ていない」。

検事のストーンを登場させて「先週の火曜日にストーンが映画館に来たか?」マニオン:「来ていない」。

ストーンは当日に買った切符を見せた。

◇ 拳銃の実演

その後、ハーヴェイは精神科医のレインズフォード博士やロビンソン署長に質問した。

被告人が所有していた拳銃を出した。弾も出して裁判長に「弾を装填してください」。

裁判長から戻してもらった拳銃を他の人に渡した。そして「被害者が撃たれたと同じ方向から私に向けて引き金を引いてくれ」と驚くべき要求をした。ターゲットを少し見下ろす方向。

依頼された人物は、当然引き金を引くことを躊躇するが、ハーヴェイは再度要求した。

引き金が引かれた。しかし弾は発射されなかった。ハーヴェイは「被告人の拳銃には欠陥があり、この方向からでは弾は発射されない。16回テストした。これが17回目」。

ここで傍聴席からは大拍手。

◆ ラスト

結果、ウォルドロンは無罪となった。この事件は未解決事件となっている。
 


■ 補足

本作では上記に紹介したほかに、選挙や娯楽施設建設の話がてでくる。これらが事件に関係しているように描かれている。だがしかし、なぜ/どのように関係してくるのかがまったく描かれていない。本作には原作があるが、関係の部分を省略して映画化したのだろう。

ハーヴェイを「州地方検事」と書いた。私が持っているDVDの字幕では「州検事」と表現されている。各州には「州地方検事」と「連邦地方検事」がある。

後者は連邦政府から任命されて複数州をまたがる事件を担当する。州内で閉じている事件は「州地方検事」が担当する。これは選挙で選ばれる。私が見た多くの映画では「地方検事」と表現されている。ハーヴェイはこちら。

アメリカの新聞配達は新聞を投げ入れるようだが、本作でも新聞が投げ入れられる場面がある。
 


■ 出演作

◆ リー・J・コッブ
(1949)深夜復讐便/THIEVES' HIGHWAY
(1947)征服への道/Captain from Casile
(1948)出獄/CALL NORTHSIDE 777
(1957)イヴの三つの顔/The Three Faces of Eve
(1948)幸福の森、アイルランドの妖精/The Luck of the Irish
(1950)刑事=犯人が自分の事件を捜査/The Man Who Cheated Himself
(1958)暗黒街の女:マフィアと弁護士とダンサー/Party Girl

 

◆ ジェーン・ワイアット
(1937)失はれた地平線/Lost Horizon
(1943)硝煙のカンサス/The Kansan
(1950)ハウス・バイ・ザ・リバー/HOUSE BY THE RIVER
(1948)落とし穴/PITFALL
(1950)刑事=犯人が自分の事件を捜査/The Man Who Cheated Himself
(1949)カナダ平原:ロッキー山脈越え鉄道建設に妨害活動/Canadian Pacific

◆ アーサー・ケネディ
(1941)ハイ・シェラ/High Sierra
(1941)壮烈第七騎兵隊/They Died with Their Boots On
(1966)ミクロの決死圏/Fantastic Voyage
(1949)窓/The Window
(1949)ウォーキング・ヒルズの黄金伝説/The Walking Hills
(1946)まごころ/Devotion
(1952)無頼の谷/Rancho Notorious
(1949)遅すぎた涙/Too Late for Tears

ダナ・アンドリュース
(1940)スワンプ・ウォーター/Swamp Water
(1944)ローラ殺人事件/Laura
(1945)堕ちた天使/Fallen Angel
(1946)我等の生涯の最良の年/The Best Years of Our Lives
(1948)海の呼ぶ声/Deep Water
(1950)恐怖の一夜/Edge of Doom
(1956)口紅殺人事件/While the City Sleeps
(1949)禁じられた街/Forbidden Street/Britannia Mews
(1945)ステート・フェア/State Fair
(1952)パリの記者とハンガリーのスパイ/Assignment - Paris
(1965)勇者の街/Town Tamer
(1950)歩道の終わる所/Where the Sidewalk Ends
(1941)女傑ベル・スター/BELLE STARR